心臓。焼鳥や焼肉では「ハツ」という超人気部位であり、私も大好物。数え切れぬほど味わってきたが、宇都宮に「うなぎの心臓(ハツ)」を味わえる店があるという。隣の「武蔵国(埼玉県)」は鰻で有名だが、「下野国(栃木県)」に鰻のイメージがあまりない。
その情報をもたらしたのは鹿沼の<串カツJu-So>M子店長とバイトもMキ嬢。極寒の1月下旬、宇都宮駅からタクシーでそのお店に3人で向かう。こんなところに飲食店があったのかという暗がりに<寿し龍>が。外観も激シブだ。
店内も屋号通りに寿司屋の風情である。カウンターと小上がりで構成されている。小上がりでは外国の方が鰻を召し上がっている。
大将と女将さんが二人で切盛り。同行女子2人とも談笑している。2人とも常連らしい。どこでこの店の存在を知ったのだろうか。
女子2人に挟まれ、瓶ビールで乾杯。どれほど寒くてもその日の1杯目のビールは旨い。特にシゴトが充実していた日の夜は旨さが倍加する。
一品目は鯵のきずし(〆鯵)。酢加減も絶妙。脂のノリもよく、いきなりフルスロットルだ。
大将は「ありがとう」と書かれたハチマキをキリリと締め、トークも絶好調。動きも超軽快お年を聞いて驚愕。なんと85歳という。あと20年は頑張るそうだ。鰻パワーなのだろう。
愛知県一色産の超巨大な鰻が捌かれていく。生で初めて見た。我らは3人だが4匹ご準備。1匹は白焼、3匹はうな重に。何という贅沢。品数でなく「匹」で数えると圧倒される。
鰻は冬が旬らしい。1月下旬から2月上旬が最も大きくて脂が乗って旬という。知らなかった。まさにこの夜、1月下旬。最高の旬である。大きさも違うそうだ。
大将は心臓を取り出し、御猪口に入れてくれた。私は男性という理由で2ヶ。初めて見たが、動いている。壮絶な生命力。鰻を喰えばスタミナが付く理由を目視できる。
そこに日本酒を注ぎ、噛まずに一気に飲み込む。両横の女子2人は何の迷いも抵抗もなくクイッと飲み込んでいる。呆気にとられながらも私もクィッ。噛んでいないので味が分からないが、妙味であろう。噛むと苦いらしい。徐々に体が温まるらしい。
寿司屋らしく玉子焼をツマミにビールを4本ほど呑んだ後、冷酒に切りかえる。大将や女将のトークも軽快。杯が進む。
焼台に豪快に鰻が並ぶ。大きすぎて身が柔らかくて串を刺したまま運ぶのが大変という笑顔の対象が最高である。いったん焼いて、蒸す。この工程をまじかで見たのも初めてだ。
白焼降臨。塩で味付けしているので醤油を付けず山葵だけで…。舌が破裂した。動悸が早まった。血流が加速した。〔次夜後編〕
宇都宮駅からタクシーで数分。激シブな外観。
1品目から気合十分。
御年85歳という大将の見事な包丁さばき。
ピクピク動きまくる心臓。凄まじき生命力。
お酒を注いでイッキに。
焼台を我ら3人で独占。
寿司屋らしい箸休め。
関東ならではの「蒸し」。
白焼。最高のご馳走。