『蘇る金狼』。M田優作主演のハードなアクションである。以前、再放送で見たことがある。内容はあんまり覚えていないが、松D氏の狂気溢れる演技が危険な香りに満ち溢れていた。昭和のアナーキーさ全開。コンプラなど1gも感じられなかった。
春日部駅から西口の我が定宿に向かう途中、<金狼>という危険な香りがする屋号の人気ラーメン店がある。何度も店の前を通ったが、営業時間や私の腹都合などで啜るタイミングがなかった。
ある秋の正午前。春日部ミッション開始まで100分の待ち時間。ふと『金狼』を思い出す。
店前は3人の常連風が並んでいる。さすがである。私は普段並ぶなど限りなく避けたいが、時間はたっぷり。むしろ少しなら歓迎である。前の行列客が1人づつ順調に入っていく。そして、私の番で流れが止まった。
不思議なことに気づいた。客は1人づつ、時間を空けて入って行ったのに、誰も出てこない。ドアは開いて、長い暖簾が掛かっている。店内の様子が全く分からない。私語も聞こえない。店内から流れるBGMだけ。もしかすると、客は金狼に食べられたのか。単に入口と出口が別々なのか。
15分待っただろうか。メニュー表などが店頭にあればじっくり戦略を立てられるのだが、貼ってあるのは営業時間や注意書きだけ。店の前での並び方も実に細かく表記されている。
店内は「イヤホン禁止」。私は長時間歩くとき、飛行機やバス、新幹線では電車内、喫茶チェーンではイヤホンをする。しかし、ラーメン屋や居酒屋だけでなく「食事」「飲酒」の店内では絶対にしない。何となくだが、店主の気持ちが分かる。激しく首肯した。
しかし、不安になる注意書きがあった。「大きな荷物禁止」(スーツケース等)。
私はこの日、スーツケースでなくビジネスリュック。ただし30g容量であり、小さめのスーツケースより容量があり、大きい。15分待って入店を断られたら…。
バイトらしきお姉さんに入店を許された。カウンターで7席程度。券売機スタイルである。
この店は屋号の前に「つけ麺・らーめん・煮干そば」の順でショルダーネームが記されていた。いつもならラーメンなのだが、つけ麺が最左。この店の「推し」とみた。
つけ麺の中から「肉増しつけ麺」のボタンを押す。そして「麺特盛」も。
水を飲みながらカウンターの注意書きを読む。携帯電話での通話禁止とある。しかし「商品撮影はご遠慮なくどうぞ!」。力強い。商品に対する圧倒的な自信を感じさせる。
年齢不詳のマスター、かなりたっぷりな注意書きルールでかなり気難しい方かと思いきや、素晴らしく丁寧で愛想も良い。少しも金狼じゃない。安堵する。
肉増しつけ麺特盛、降臨。圧倒的サイズ感である。ガンガン商品撮影する。しかし、店内の客は誰も撮影してない。無言で丼とダンスしている。私も追いつかねば。
ドブンと麺を浸す…。かなり濃厚な魚介豚骨。小麦の香り豊かな太麺と絶妙に抱き合っている。紙エプロンは無いようだが私はこの日、紺の上下作業着。ハネなど1gも気にならぬ。
焼豚も分厚くて私好みの部位。つけ汁の分量と麺特盛のバランスに留意。つけ汁ならともかく、麺だけ残ったら目も当てられない。私はタレにどっぷり派なので、バランスに苦慮する。
きっちり同時に無くなった。キマった。しかし、隣の若き常連が「スープ割り」を頼んだ。
エッ、そんなことができる張り紙は見かけなかったが…。私も頼もうとしたが、つけ汁がすでに無くなっていた。
いつも行列な雰囲気。
素晴らしい注意書き。激しく首肯。
超人気も納得。