しんごろう。南会津で実在していたとらしい人名であり、南会津の郷土料理の名称である。
しんごろうという名の若者が母のためにご飯を半づきにして丸め、じゅうねん(荏胡麻)味噌を塗り焼いたものを食べさせたという。新米が出た時に振舞われるそうである。
「しんごろう入り南会津おふくろ弁当」を会津田島駅構内で発見、捕獲した。
会津田島駅は浅草からの東武特急終点(または始発)。私は春日部、栃木、鹿沼、日光あたりから会津若松へ移動(またはその逆)する際、田島で乗り変える。3分ほどしか時間ない時もあるが、だいたい15分ぐらいの乗換時間がある。
田島駅で購入する「とうがらし味噌」は我が必需品。かなり辛いがニンニクも効いている。そもそもあまり自宅にいないので減らないのだが、田島で降りるとつい買ってしまう。
田島駅の駅弁コーナーも見逃せない。私の知る限り、会津地方で最も駅弁が充実している。東武線すべての駅においても、私の知る限り東武日光駅と双璧。
田島駅の「ソースカツ丼」と「南会津さとやま弁当」は実食済。煮込みカツ丼(普通のカツ丼)や稲荷寿司、巻寿司、500円代の弁当も数種類あった。
12泊13日のムチャ旅11日目。会津若松から快速で会津田島駅へ。時間は10時半過ぎ。売店を除くと、ラインナップが充実していた。もう1時間遅ければ何もなかったかもしれない。
初見の品発見。冒頭の「しんごろう入 南会津おふくろ弁当」である。調整元は「かどや」様。1200円。ずしりと重い。切らしていた煙草も1箱購入し、一服してから特急に乗り込む。
ガラ空きの特急が動き出した。車内アナウンスが流れた。この特急、全座席満席という。
観光シーズンや土日はよく満席に。この時期、私も前日に切符を買うようにしている。田島からはまだ空いているが、1時間後の鬼怒川温泉から思いっきり満席になるはず。私の隣は誰もいない。鬼怒川に着くまでに食べ終えねば。
懸け紙を外す。裏側に料理の解説がびっしり。「しんごろう」の由来も。そして、南会津の郷土料理が隙間なくびっしり埋まっている。地元素材にこだわった手作り弁当と書かれている。
「南会津産のアスパラ天麩羅」。4月から10月までらしい。サクサクとフレッシュで、先鋒として申し分なき働きである。「かまぼこ」も歯ごたえありシブい活躍。
「厚焼き玉子」は使い込んだ銅製フライパンが美味しさの秘密らしい。確かに美味しい。じっくり数時間煮込んだ「自家製いなり寿司」は甘さも爽やか。ジューシーでボリュームある。
味付けが見事だった「自家製塩糀のから揚げ」にかぶりついた後、冒頭の「しんごろう」。最初、肉の塊に見えた。かぶりつく。甘い。荏胡麻味噌が甘いのか。しかし、上品さがある。
抜群だったのが「本ぜんまいと打ち豆の煮もの」。青豆を木槌で潰した冬越えのための保存食という。これ、酒、それもウィスキーのツマミに好適。パリッと香ばしく、甘さとコクが絶妙。これだけ別売りで買って帰りたいほど。
「舘岩特産赤かぶ漬」で舌を引き締めた後、我が好物「にしんの山椒漬」。前夜、居酒屋で売り切れで食べられなかった。身欠きにしんを山椒の葉を入れたつけダレで漬け込んだ料理。会津田島祇園祭のおもてなし料理という。若松でなく田島発祥だったのか。
これ、無限に日本酒が進む。土産物売り場で見かけない。これも買って帰りたい。
最後は「地元おばあちゃんの梅干入り青しそおにぎり」。最高の〆である。満腹である。
私はこれまで800種類ほど駅弁を楽しんできた。この駅弁、ベスト3位以内かも。日本酒があれば一升は開きそうである。数時間後にミッションを控える私は、無糖フルーツティーで流し込まざるおえなかったけど。
充実の田島駅。
我が駅弁千物語でベスト3位クラスの絶品。