クリームソーダ。甘美な童心を擽る昭和純喫茶を代表するスィーツドリンクである(はず)。
酷暑極まりない8月初日。12泊13日の3日目の遅い午後。ホテル引き籠り定宿PC猿打に疲れ、ファストフードcaféに場所を移そうと一念発起。
この日は夕方に枝光へ。電車の時間まで2時間弱。遅い昼飯をどこかで腹に入れる前に魚町銀天街の10分散髪屋へ向かう。
私は毎回バリカン10ミリのゴルゴ刈。しかし2週間もすれば寝癖が付く。異様に伸びるのが早い。少しでも丸めてサッパリしたい。ところが考えることはみな同じなのか、理容師が一人しかいないのに5人ほどが並んでいる。さすがに1時間も待てない。
計画狂うが、もうあまり歩きたくない。どこかで昼飯を喰いその後にcaféという作戦だったが、この日は朝飯を喰っていたので空腹感もあまりない。バーガーショップも味気ない。
とりあえず小倉駅構内へ。複数ある選択肢の中で<Kメダ珈琲店>が気になった。
私はコメDを利用するのは年に1度あるかないか。特に理由はない。何となく足が向かないだけである。ファストフードチェーンの珈琲よりも少し割高だからかもしれない。しかし、コワーキングスペースよりも設備は充実。客席も充分に広く余裕がある。
サンドイッチか何か頼み、珈琲吞んでPCしようか…。カウンターでメニューを広げた。
サンドイッチの中で、私はカツサンドを最も好む。豊富なサンド種類の中にカツサンド発見。名古屋系らしく、みそカツパンなる真夏には手が伸びにくいご当地系も。ここは北九州。みそカツを食べたい気持ちは1gも起こらない。
カツカリーパンがあった。970円という値段にたじろぐ。「カレー」でなく「カリー」な点に自信とこだわりと面倒くささが薫る。ドリンクを付ければ1500円ほどに。ランチに1500円は、ラーメンにトッピングしまくるか、鰻以外に経験があまりない。気後れしてしまう。
レトルトカレーも販売しているN村屋との共同開発とある。気合が感じられる。炎天下から屋内の涼しい店内で、熱いカツカレーサンドを頬ばる。よだれが出てきそうだ。
飲み物は何にするか。普段なら迷わずホットだが、さすがにアイスコ―ヒーにするか。パラパラ迷っていたら、クリームソーダが視界に。アイスコーヒーと値段はあまり変わらない。
私はクリームソーダを飲んだ記憶がない。ガキの頃、純喫茶ではミックスジュースを頼んでいた記憶がある。今でもたまに飲みたくなり、コンビニでペットボトルを一気飲みする。150円ほどでミックスジュースが手軽に呑める時代が来るとは40年以上前は想像もしなかった。
クリームソーダは高根の花、というより何故かこれまで惹かれなかった。しかし、この日は何かが違った。メニュー写真には思いっきり人工着色のエメラルドグリーンにソフトクリームがたっぷりこんもり。ブーツ形のグラスもキュート。真夏のシンデレラ気分を味わえそうだ。
この2品を頼んだ。店員さん、カツカリーサンドの時は想定内は雰囲気だったが、私のようなオヤジがクリームソーダを頼むとは想定外だったのだろう。妙な間が空いた。
ぼんやりスマホニュースを見ていると、ブツ降臨。カツカリーサンド、デカい。なんだこれは。クリームソーダもソフトたっぷり。テンションが爆上がりに。
まずはカツサンドにかぶりつく。カツ。揚げたて熱々。カレーソースは本格派だが思ったより主張が強くなく、パンとキャベツとカツの旨味を引き出している。カツ、分厚くて柔らかい。恐れ入った。今まで食べたカツサンドの中でも最高クラスである。
3つにカットされたカツサンドを1つ食べ終え、スプーンを手にアイスを掬い、口へ。甘くて冷たい。熱々カツカレーと交互に味わう魔性。カツサンド、大きく分厚いがふわふわですっと胃に入る。重くない。あっという間に3つ食べ終えた。
アイスも食べ尽くした。エメラルドのソーダにアイスの白が溶け込んでいる。ストローで吸う。苦みと甘みが絶妙。49年目のクリームソーダ、メルヘンな非日常である。
惹かれてしまった。
頼んでしまった。