燕三条。たしか新潟と長岡の間に位置する新潟県内と都市である。私は未踏だが、燕三条といえば私のようなラーメン者にとって「背脂系」を真っ先に連想する。
台風3号が温帯低気圧になったが湿気ムンムンで蒸し暑く小雨降りしきる正午過ぎ。朝6時に北九州黒崎を出て新幹線や在来線、東武線を乗り継ぎ、春日部市内の武里駅着。
朝から何も腹に入れておらず空腹。無事辿り着いた安堵感も飢餓感を呷る。この日は14時から東洋最大級の団地群を誇る竹里地区内の公民館でミッション開始。設営や準備等を勘案し、何か腹に入れる時間はギリギリ残されている。
駅西口正面にラーメン屋さんが。迷わず突撃…。臨時休業の張り紙が。出鼻を挫かれた。気を取り直してそのまま駅前通りを歩く。すぐ近くに「中華そば」と白暖簾に黒文字の清々しい暖簾が。屋号は目立たなく<ぎと家>とある。小さくガッツポーズして、店内に飛び込んだ。
券売機と対峙。予備知識ゼロゆえ戸惑うが、上段の4つのボタンが大きくて写真入り。淡麗中華そば、背脂煮干しそば、汁なしあぶらそば、つけそばが4本柱らしい。「特製」にランクアップするとチャーシューが4枚に、味玉と極上岩海苔が追加。プラス250円である。
私は汁(スープ)偏愛者ゆえ、淡麗か背脂煮干しに絞られた。この2択で2秒ほど長考していると、がらりとドアが開いてお客がご入店。迷う暇なし。初ダイブ店では最もオーソドックスを選ぶが、この日は気合を入れたかった。「特製背脂煮干しそば」を押す。
水を飲みつつ店内のポップを眺める。横浜家系のように色々とカスタマイズできるようだ。ふと気づいた。屋号は<ぎと家>。横浜家系なのか。しかし、家系で「背脂」「煮干し」はあまりプッシュしない。
どんどんお客が入ってきた。女性の2人組が多い。男性の一人客も。気づけば店内ほぼ満席に。期待が高まる。
ブツ降臨。背脂がたっぷりと泳いでいる。私はそれほど背脂に執着はない。二郎系の店では「背脂抜き」にすることも。刻み玉葱も特徴的である。たっぷりのチャーシュー、煮玉子、そして岩海苔。岩海苔トッピングは初めてだ。
それ以上に私の視界を捉えたのが、丼の淵に青字で染め抜かれた「燕三条背脂蕎麦」の7文字。冒頭に戻る。燕三条系だったのか。燕三条といえば、背脂。背脂を選択して正解である。
胡椒を軽くパラリし、まずはスープ。ガツンな濃厚だが、煮干しが効いてさっぱり感も。
驚いたのが、背脂。濃厚なのに、サラリ。脂っこさでなく、コクと深みをあたえている。
麺をリフトアップ。縮れた太めの平打ち。これが絶妙にスープに絡む。何よりも、旨い。
チャーシュー齧り、麺を啜り、スープを浴びる。岩海苔も風味豊かで好アシスト。刻み玉葱が爽やかである。後は一気呵成で無我夢中。
途中、ふと気づいた。スープの奥に、酢の酸味がある。私は酸味のあるラーメンを好まぬが、これは別世界。酢が奥深く隠し味になることで、芸術の域にまで昇華させている。気づけばスープ1滴残っていなかった。
大満足で店を出る。雨が上がった。駅でタクシーを捕まえようとしたが、来る気配がない。会場まで恐らく10分程度。歩くことにした。途中、もう一軒ラーメン店を発見した。そこには「新潟らぁめん」とある。武里エリア、何故か新潟ワールド全開である。
暖簾が旨さを保証。
燕三条系。
リフトアップ。
すぐ近くにも新潟が。