中国大返し。本能寺の変の際、信長公討ち死にの報を受けた中国地方へ征伐中の秀吉公が中国から超絶無比のスピードで近畿へ舞い戻り、ライバルを倒して天下を手中にするキッカケとなった戦法というか、伝説というか、必殺技である。
情報を得るスピードの速さと引き返しの峻烈な豪快さゆえに、虚実分からぬが、本能寺の変の首謀者が秀吉公、または光秀公の決起を事前に知っていたのではないかという陰謀説も。
大河ドラマ『麒麟がくる』では中国大返しなどが描かれずに残念だったが『どうする家康』でどう描かれるか楽しみ。スルーしてほしくない(2023年4月現在)。このあたりの陰謀説は傑作コミック『信長を殺した男』に詳しい。
2011年から1年間だけ空白期間あれど年間数回ペースでお世話になってきた若松商店街での我がラストダンスが2023年4月中旬に始まった。与えられた期間は正味7カ月。
今年度ミッションにおける脚本を練り直した後、9人で<煙>へ。生の後はハイボールド鯨飲。分厚い牛タン、カイノミ…。絶品肉のコーラスライン状態。ミートK山の最高級肉を思う存分堪能させて頂く。七厘で焼くと旨さが倍加する気もする。
北九州商工会議所若松SCと戸畑SCのセンター長が入れ替わり人事。若松から戸畑へ異動されたT末氏の送別会と戸畑から若松へ赴任されたM園氏の歓迎会も兼ねる。ひたすら喰い、呑み、しゃべる。気づけ23時半。終バスなど遥か100万光年前に滅失。
2か月以上ぶりの若松呑みである。十数年来の盟友であり、弟子筋でもあるU島氏と<ショコラ>へ。ママは不在だったが、チーママのH子嬢らと談笑。
深夜0時を大きく回った頃、U島氏の携帯が鳴った。1時間ほど前までで一緒に飲み食いしていた最年少のM嬢である。忘れ物でもしたのか、U島氏に緊急の連絡事なのか。
U島氏が「エェッ!?」と絶句して電話を切った。どうしたのかと尋ねると、今からここ(ショコラ)に向かいますという連絡とのこと。今度は私が目を剥き「エェッ!?」と絶句した。
1軒目の9人のうち、商店街の重鎮お二人は帰路に。私とU島氏はショコラへ。他の5名はタクシーで小倉方面に帰られたはず。どこかで2次会していたのだろうか。
軽い驚きを抱えたまま、ラフロイグのピッチを上げる。U島氏は弟子筋だが、私より遥かに行動力もあり、頭も良く、誠実で誰からも愛される。会うたびに新規事業を始めたり、商店街内に新規出店したり、法人組織を立ち上げたりしている。
そんな彼と話し込んでいると、ドアが開いた。M嬢だった。時間は確か深夜1時を回っていたのはなかったか。
私とU島氏の間に座った彼女にどこで呑んできたのか尋ねた。どこにも立ち寄らずにタクシーに分乗して小倉の自宅近くまで帰ったと言う。
最初、何を言っているのか理解できなかった。内容が頭に入ってこなかった。若松からタクシーで小倉に帰り、再び間髪入れずタクシーに乗って若松へ戻ってきたことは何度か会話を重ねて理解することができた。ただ、その意味が分からない。
エッ?なんで?疑問を放つ私に一言。「なんか、足らなくて」。
呑み足りないのか、話足りないのか、喰いものが足りていないのか。よく分からないが、中国大返しより豪快かつ謎の満ちたMちゃんの小倉大返しである。