多治見といえば、鰻。昼メシに鰻を堪能後、この作品の第1話を珈琲飲みつつ読了。全5話の連作短編集であるらしい。ペンネームかどうかわからぬが、女性作家だそうな。
どこかの鰻屋のオヤジさんが帯に推薦している。「うな重片手に、この一冊」。あるようでありえない、簡単なようで実行が極めて難しいシュールな一言である。
自宅テイクアウトでも難しそうだが、鰻屋で、文庫本片手にうな重を喰っているシーンが想像できない。しかし、これが本格的な鰻屋でなく、カジュアルな「うなぎ居酒屋」であったなら。
ある夏の日曜の午後。月曜朝イチから栃木市内でミッションゆえ、この日は移動日。途中、大宮で途中下車。愛してやまないうなぎ居酒屋<うな鐵>へスーツケースを引きながら直行。
まずは瓶ビールとうなぎの骨の唐揚。この先発コンビは不動。うなぎ居酒屋は生より瓶が風情あり。コップに注ぎ、一気に飲み干す。夏の涼がノドを滑る。
骨の唐揚、たっぷりである。とても瓶ビール1本では消化できぬ。ホッピーを2杯目に。
奈良漬も追加注文。奈良漬、はっきりと好き嫌いが分かれる漬物だろう。嘘か真が分からぬが、アルコールがダメな人は奈良漬で酔うという。
白ご飯にもあまり合わないし、酒の肴には強すぎる奈良漬。しかし、タレ濃厚な鰻に添えられると俄然実力を発揮する。
このお店は分厚いのが7切。1ヶで3齧りできる味の濃さ。漬物界の蒲焼と言えよう。
鰻串コース、降臨。本来は7本セットだが、一種類が売り切れらしく6串に。かぶと・短尺・串巻・レバ焼・ひれ焼・きも焼。この店の魅力は以前このバカブログで熱筆しているので、これらの詳細は割愛する。
山椒パラリを頬張り、冷えた樽酒で追いかける。極楽浄土が口内に広がる。
冒頭の『うなぎ女子』を取り出す。うな重を片手に読めないが、うな串や骨唐揚なら可能。「うなぎ屋」で「うなぎオヤジ(私)」として『うなぎ女子』を読み進める。あくまでも割烹系でなく居酒屋だから許される無法である。
売れないオヤジ役者をめぐる5人の女性が織りなす連作短編集。小題は「肝焼き」「う巻き」「うざく」「うなぎの刺身」「うな重」。それぞれのメニューがモチーフに。
第1話では役者オヤジはヒモのクズとして描かれるも、だんだん印象が変わる。最終話は少し震えた。
「うなぎは胃袋を満たすのではなく、心を満たすために食べる、大人の心の隙間をいっぱいにしてくれるご馳走」(本文よりアヅマ略)。至言である。
オトナの私も心は満たされた。後は、腹を満たすだけ。うな丼やうな重で締めずに店を出た。ラーメン激戦地である大宮の〆の一杯を熊啜するために。

大宮で一番好きな店。

まずはビールと骨せんべい。

最高。

最強。

ガンガン。

シメへのプレリュード。

ネギチャー。

大量に買い込んだ本を肴にホテル晩酌。