品川駅から高架下を歩いてすぐに「品達」というラーメンや丼・カレーの人気店を12軒集めたゾーンがあった。私も品川で下車する際は、つい立ち寄っていた。
最近は梅田でも楽しめるようになった<伝説のすた丼>や金沢<ゴーゴーカレー>などがお気に入り。ラーメンエリアで初めてダイブしたのが、前述の蒙古タンメンである。
昼ど真ん中の時間を外しても、ほぼ店内満席。私はスーツケースのまま入ることが多い上に関西弁を下敷きに北九州弁や宮古弁が混じった謎の言語を駆使していた。明らかに出張族かオノボリさん丸出し。入口の券売機で最もオーソドックスな「蒙古タンメン」を注文。
有名店だからこその接客の素晴らしさに感動しつつカウンターに腰掛けていると、遠方からの客限定サービスがあるという。何か証明できるものを魅せると、「麺大盛」「ミニ麻婆豆腐ライス」「烏龍茶」がいずれかサービスに。私はミニ麻婆豆腐ライスを選択。
期待を膨らませて店内をキョロキョロする。店内は「蒙古」「北極」という言葉が飛び交う。頻度で言えば、北極が7で定番であるはずの蒙古が3といった雰囲気。はて、北極とは?
ブツが運ばれてきた。トロミのかかった麻婆豆腐がラーメンにかかっている。朱色が映え、かなり辛そうだ。時は真夏。ビジュアルだけで汗が吹き出しそうである。
スープを啜る。……。見た目以上に辛くはないが、旨辛である。トロミがいつまでもスープを冷まさない。極太麺が絡みあい、クセになる味。箸とレンゲが止まらない。
麻婆豆腐ライスを食べながら、麻婆豆腐ラーメン。ラーメンライスのごとき炭水化物×2以上に不思議な取合せだが、似て非なる味わい。これがサービスなのだから、遠路足を運んだ値打ちも倍加する。
それから半年後。氷雨降りしきる冬空の中、この店を再訪。店の雰囲気やルールは掴めた気がする。前述の『タチバナ』で紹介された「北極ラーメン」のボタンを押す。出張特典は「麺大盛」。店内の活気に目を細めなながら、遥か北極に想いを馳せる。
ブツが運ばれてきた。……。定番が朱色なら、北極は黒みがかった深紅。鼻に入ってくる湯気がすでに辛い。麻婆豆腐ではなくモヤシがこんもりトッピング。オアシスのようである。
ヤバすぎるビジュアルに怯みながら、スープを一啜り。……。旨さの後に辛さが押し寄せる。辛いだけでなく、甘さと深さと奥行きがスゴイ。重層的なスープに頭皮から汗をタレ流しながら夢中で啜る。麺大盛が手ごわいものの、スープもほとんど呑み干した。〔次夜後編〕

定番(たぶん)。
北極。