その前日の夕方。小山市内の事業者の守護神・商工会議所S氏が私に悲しいお知らせがあると伝えてきた。身構えると、小山駅12番ホームの「きそば」が1月末で退店するという。
目の前が真っ暗に。きそばは私が啜ってきた東日本の駅そばでは我がダントツ1位の旨さ。小山駅を利用する楽しみが間違いなく減少する。
契約期間が切れたのか、吹き曝しなので(だからなおさら旨いのだが)保健所が横やり入れてボックスタイプにしろと命じたのか分からない。経営不振なら悲しすぎる。
去る店あれば、来る店あり。S氏を交えたミーティング終了後、冒頭の<TERMINAL>オープン直前店舗内をS氏の顔で見学させて頂く。オープン直前の店舗はエネルギッシュというか、勢いのオーラが店内や従業員さんから溢れている。何度立ち会っても良いものである。
24時過ぎまで3軒ハシゴした翌朝。10時前に小山駅。<TERMINAL>が新規オープン。外からしか伺いしれなかったが、店内はバタバタかと思いきや、受入体制万全のようである。
次回以降珈琲を飲みに行くとして、今回は改札を通り12番ホームへ。<きそば>へまっしぐら。10時という中途半端な時間だが、立ち啜りスペースは大賑わい。1月末閉店ニュースはきそば者に当然のごとく浸透しているようで、別れを惜しむファンが後を絶たないのだろう。
私はいつも天ぷら&玉子が多い。煮干しラーメンも旨かった。しかし、王道で攻めたい。
王道とは、かけそば。シンプルに本質を味わえる。しかし、幾分の寂しさ。清貧といえないこともないが。トッピングで「ねぎだく」。ねぎたっぷりで勝負。340円である。
ブツを受け取る。オリジナル柚子七味をパラリ。出汁を啜る。……。ああ、これが啜れなくなるのか。ネギの苦みとフレッシュさがキリリと引き締める。
私が乗る電車が入線してきた。一気に啜り込み、出汁も飲み干し、「ごちそうさま」と叫んで電車に飛び乗る。
ドアが閉まる直前、超絶に忙しい調理熟女の「ありがとうございました〜。気をつけていってらっしゃい〜」という声が聞こえてきた。私は、振り返らなかった(チャンドラー風に)。
(付記@)
同じくS氏から「きそば」復活のニュースが伝搬してきた。それも、キッチンカーとして。小山駅構内以外でも啜ることができると捉えることもできる。ただし、捕らえることは至難の業かもしれない。復活というより異世界転生といった塩梅だが、いつかまた、小山駅周辺で店舗を構えて本格転生していただきたい。

小山駅構内の新たな「ターミナル」。

こんなに人で溢れているのは私は初めてだった。

ねぎだくでお別れ。
(付記A)
閉店までのカウントダウン10を切った1月上旬、小山入りする機会が。ホームに降り立った昼もホームから旅立つ朝も、惜しむファンで大行列。啜るわずか数分を確保できなかった。

惜しむファンで長蛇の列。