ある雨の11時30分。このお店の開店時間である。下調べ済である。一番乗りしてやるぞと向かう。歴史と重厚がにじみ出て名店の香りが店外まで漂ってくる。
開店時間を暖簾は出てこない。代わりに中からオヤジさんが出てきて、テイクアウトが集中して12時回らないと開けられないとおっしゃる。
店からすぐ見えるところに二宮金次郎神社が屹立している。お参りして時間つぶそうと思ったが特に頭が良くなる要素が皆無ゆえ、逆方向に移動して道の駅<ニコニコ本陣>へ。
時間は12時に。再度<一彦>へ突撃したら、ちょうど店が開いた。オヤジさん2人で切盛り。
最初コワモテかと思いきや、素晴らしく気配りのきく温かい接客に嬉しくなる。私を秒殺でイチゲンと見抜かれ、2種類のソースを駆使したごますりソースの作り方を伝授して下さる。
豊富なメニュー。大きく大別するとカツ類、丼、カレーになる。私はかつ丼とカツカレーが大好物だが、初めてなので定番の「ロースかつ(並)」。トッピングでエビフライを2本。ライスは並(味噌汁・お新香付)。お代わり自由だそうだ。
店内はテイクアウトのお客でひっきりなし。よく見れば、カウンターだけの店だが、詰めて4席程度しかない。目視で店の広さは3坪。無駄のない機能美を兼ね備えている。
ぼんやりTVを見る。アフガン難民受入のニュース。オヤジさん2人の政治、スポーツ全般における掛け合い評論が微妙にかみ合ってなくて実に面白い。
まずはエビフライ。目を剥いた。トッピングのつもりで軽く頼んだが、巨大が2匹。たっぷりの生野菜を従えている。すかさずロースかつも降臨。並サイズとは思えぬジャンボ感。4段階の大きさのうち、これで下から2番目。恐れ入る。
ひと切れめは、塩で。ジューシーで熱々。2切れは醤油で。分厚いのに柔らかく火が通る職人技。ライスが進む。後はごまソースなどを駆使し、夢中で頬張る。海老フライもプリプリでサクサク。凄まじい量である。
味噌汁がしみじみと旨い。お新香が口の中をさっぱりさせる。ライスお替りを尋ねられたが、とても入らない。無我夢中で喰らいついた。とんでもない満足感が襲ってきた。
至福心地で店を出る。外は小雨。肌寒いが気にならぬ。これだけ油モノを大量に腹に入れたのに、胃は重くない。何故かむしろスッキリ。プロの技である。
次回訪れる機会があれば、かつ丼か、かつカレーか、食べ終えて30分もしないうちからシアワセな悩みに空気頭が制圧された。

老舗の風格。

シブい店内。

どうせスルなら、このごまを。

エビフライ。

カツ。

近くには二宮尊徳公を祀る神社が。