壁面メニューに度肝を抜かれる。「ラーメン450円」。令和3年である。パンデミックである。こんな時代に、450円。コロナなど微塵もなき昭和かここは。令和五輪ではなく昭和五輪の世界である。
ワンタンメンも、カレーも中華丼も野菜炒めもある。もちろんビールも。隣のオヤジはビールをヤリつつ冷やし中華を啜っている。
私も最も好きな街中華メニューがあった。「チャウシュウワンタンメン」。チャーではなく「チャウ」が味わい深い。
チャウシュウワンタンメンを申し伝えると、水と一緒にスポーツ新聞が運ばれてきた。この店のスタイルなのだろう。苦笑しながら斜め読みしていると、ブツが運ばれてきた。
透き通ったスープ。これぞ神戸の街中華。チャーシューは分厚いロースが数枚。その下に具たっぷりのワンタンがいくつも泳いでいる。これで650円はイニエスタ級のテクニックだ。
胡椒パラリ。まずはスープ……。あっさり鶏ガラ。常食系。前昼が三宮高架下<第一旭>だったゆえ、その濃厚さからは百万光年以上の距離がある。しかし、ワクチン接種跡の恢復時にはうってつけの浸透圧。どこまでも優しい。療養食というか、医食同源な味わいである。
麺はかなり柔らかい。常連の高齢者を気遣われているのだろう。私はもう少し硬めが好みだが。あと10年もすればこの柔らかさがベストマッチになるはずである。
チャーシューを齧り、モヤシをシャキシャキ、麺をズルズル、スープをズズズ…‥。後は、ワンタンを残すのみ。
すべての具を食べつくした後の、スープを吸い込んだワンタン。麺はスープを吸うと伸びて旨くないが、ワンタンは吸うほどの旨さが増す。チュルチュル啜り込む。
外に出た。いきなりスタジアムが眼前に。そういえば、ここはノエビアスタジアムの正面だった。ワクチン接種のことなどすっかり忘れて夢中で啜りこんでいたようである。
翌日の朝。新幹線で五輪競技が始まったお江戸へ。五輪開始というのに車中は3割も客がいない。時間は正午前。2回目接種から24時間経過。2回目の方が副反応がキツいという。
1回目はわずかに注射跡が突っ張る程度で拍子抜け。2回目は……。ほぼ同じ。1回目より多少腕がさらに痛いというより激しく動かせば突っ張る程度。熱も無く、関節も痛くなく頭痛も無い。倦怠感に関しては私は毎日二日酔いみたいなもんだからよく分からない。
一週間後に免疫ができるらしく、それからは無双状態。しかし罹らないのではなく重症化リスクが激減というだけらしく、罹ってしまったら他人様にうつしてしまう可能性もある。ゆえに全日本人の接種が完了するまではマスク順守の所存である。

シブい壁面メニュー。

昭和の香り。

店を出たらスタジアム。

お世話になりました。