スープを一啜り。キムチと納豆のツートップの勢いにチーズの濃厚な酸味は隠れがちであるものの、チーズ自体が奥ゆかしい隠し味に。独特のコンチェルトを奏でている。
たっぷりのモヤシをワシワシ食べ、麺をグイグイ啜る。汗がほんのりにじみ出る。半年に1度は啜りたくなる魔性だ。
スープも麺も残り3分の1に。いよいよクライマックスである。傷つけず慎重に泳がせていた半熟卵を潰し、麺と絡めて啜る。スープにも卵のトロミとコクが加わり、確変必至である。
私は生卵系がトッピングされる料理の場合、最初からかき混ぜない。半分もしくは残り3分の1を切ったところで一気に黄身を潰して絡め取る。味の変化を試したいからだ。
箸で真っ二つに。黄身がとろーり出てくると待ち構えていたが、いっこうに出てこない。さらに分割する。黄身が見当たらない。うん?白身だけなのか。
クエスチョンマークが目の前で飛び出した頃、ガツンとチーズの香りが飛び込んできた。うぉ!これは半熟卵ではなく、チーズだったのか。プルプルのトロトロ。こんなチーズは始めて。レアチーズとはこのことか。
レアチーズに麺を絡めながら麺を啜る。……。あれ。なんか変だ。意識が真っ白になり、思考能力が停止状態に。レンゲでレアチーズ部分とスープを一緒に啜る。……。思わず叫びそうになった。甘いのだ。
私は甘いものが基本的に苦手なので(2015年当時。今は好き)、普段甘いものを口にすることがないので分からなかった。レアチーズとは、ケーキのことだったのか。
私の箸が止まった。視線が宙をさまよった。キムチは定番かもしれぬが、納豆はラーメンの相手として異質。この店のキムチ納豆ラーメンはそんなタブーに挑み、見事成功している。しかし、キムチ納豆味のラーメンスープにチーズケーキがトッピングされているとは……。
昔(2010年頃)長崎で爆弾ちゃんぽんなる逸品を啜った。この爆弾はラードのようなもので、崩すと一気にコクが増す。ところがこれは完全にレアチーズ爆弾である。カウンターに腰掛けたまま私は爆死。我が保守的かつ狭い了見をメガトン級の破壊力で粉砕した。
ショックのまま少し呆けていると、バスの時刻が近づいてきた。お会計の前に、もう一度メニューを見た。レアチーズキムチ納豆の一行説明に目を剥いた。
「テ●ビ朝日系‘ナニコレ珍百景’登録商品」
まさにその通り。私は、朦朧としつつも激しく首肯した。

<柳家>再起を祈念し、4夜連続アップ中(2夜目)。