兵庫県民の私は現在隣接する大阪府内への入国は禁止されてしまったが、どうしても買物その他の用事があった。禁を犯して決死の覚悟でミナミ(難波)へ密入国を試みた。
阪神なんば線で尼崎を超える時、たまたまだろうが車掌さんが目の前を通って行った。何故か妙に緊張した。レジスタンスというか、「翔んで埼玉」ならぬ「翔んで兵庫」な気分である。
用務を終え、敵地の飲み屋2軒潜入。1軒目は難波に行くと3回に2回は立ち寄る、立ち飲みの<赤垣屋>。いつもより心持ち客が少ないような気がしないでもない。
淡麗の生をヤリながら難波ねぎのぬた和え、どて焼き。七味をたっぷりと。淡麗が無くなったのでラッキーメガハイボールに切り替え、なんばビーフカツも召還。とんかつソースをたっぷりと。1500円の至福である。品数や接客に戒厳令の影響はないようである。
次回はいつ入国できるか分からない。せっかくなのでもう一軒。
難波を歩いて感じたが、60分呑み放題500円という店が異様に多い。安くて誠に結構だが、そのPOPが極めて近似。店名は変われど、オーナーは同一なのだろう。新型コロナの影響の以前から展開していたかもしれないが、乗り切ろうという気合が好もしい。
そのような店の中の一軒へ。ハッピーアワーなのでハイボールが1杯150円である。カウンターがなくテーブル席に着座。店内はサラリーマンでほぼ満席だ。
店員姐さんが2品オーダー制かつ2時間テーブル制とおっしゃる。お通しの枝豆はかなり多い。メニューを見る。黒豚コロッケを注文したら売り切れ。いきなり出鼻をくじかれる。
戦略を立て直す。スパムを使用した玉子焼きと、焼鳥盛合せを召還。
煙草を吸いつつ15年ぶりに再読し始めた『蝦夷地別件(上・中・下)』(船戸与一 新潮文庫)を読みながらハイボールをクイクイ。すかさずお代わり。
最初に焼鳥が運ばれてきた。……。焼けているのか?焦げ目が見えない。しかも皿にはぬるぬるした脂なのか水なのかが溜まっている。とても気持ち悪くて手が伸びない。
ポーク玉子は安定の味だったが、私が兵庫からの密入国者であることがバレたのか。それゆえの厳しい仕打ちか。
焼鳥と枝豆は一口も口につけず、ポーク玉子をハイボール2杯で流し込んで退散。急いで阪神なんば線に乗り込む。乗換の尼崎駅に到着した際、壮絶な安堵感が襲ってきた。
阪神特急で板宿下車。15年近く通っているなじみの店<ちょこっと>で生、いいちこ水割をヤリながら肉するめと生きて動いている手長蛸。ママと話し込んでいると、お客が続々。
帰還の喜びをかみしめつつ店のほぼ対面の<もっこす>でチャーシューメン。喰い過ぎて苦しい。我が家まで地下鉄1駅なのだが、駕籠(タクシー)も苦境と聞いている。贅沢にも駕籠を駆って帰宅する。
未曽有の経済国難こそ、普段は役に立たない私のような呑んだくれダメ人間がこんな時こそわずかでも世間様のお役に立つべし。マクロ(魔黒)経済ならぬ、マグロ(鮪)経済である。

赤垣屋にて@

赤垣屋にてA

2軒目。

板宿の<ちょこっと>にて。

<もっこす>にて。
(付記)
約半年前の出来事。当時、今思えば世界はまだ平和でありんした。