私は10年ほど前まで「映画館」で年間100本以上鑑賞していたが、2010年に神戸新長田を離れてから本数が一気に減った。2017年に独立してからは減少に拍車がかかった。2本立てを土日含めてノンビリ鑑賞するヒマがなくなったのだ。
私は季節労働者である。毎年3月下旬から5月上旬までは時間に余裕が生まれる。その貴重なオフシーズンに映画を数多く鑑賞し、ミステリを乱読する。
ある3月下旬。久々に<シネマKOBE>に足を運んだ。ところが時間を間違えて開始まで90分もあった。シネコンと異なり出入り自由なのだが、最初から鑑賞したい。90分、時間をどこで潰そうか……。新開地には朝から呑める店がたっぷりあったことを改めて思い出した。
神戸新長田時代、楽しみの一つが休日の新開地1日満喫だった。新開地および湊川公園には2本立て映画館が2館もあり、呑み屋もたっぷり。しかも激安。映画を2本を鑑賞し、安居酒屋をハシゴする。1日呑んで食べて映画を観て5000円もあればお釣りが来るパラダイスだ。
これまでなら映画を観終わった後に呑みハシゴしていた。余韻に浸るためと、上映中に酔いで眠ってしまわないためだ。飲みすぎると上映中に爆睡してしまうこと確実である。
まずは<赤ひげ>へ。濃厚オヤジ率100%。瓶ビールと串カツ盛合せ。お会計は700円ちょっとだった。赤ウィンナーも小鉢も激安で旨いのだが、呑みすぎ喰いすぎ禁物。ハシゴせねばならない。
続いて<源八すし>へ。熱燗をヤリながらマグロ、ゲソ、鉄火巻、穴子など。ネタも大きく握りたて。もちろん、回っていない。この店もいつも満席だ。値段を気にせず握りを思う存分味わえるシアワセも一緒に噛みしめる。
上映までまだ30分ある。満腹だが、シルモノで〆よう。新開地には立ち食い蕎麦屋がかなりある。なかでも一番流行っていて、私が最も新開地地区で旨いと長年感じているのがアーケード街の<松屋>。ここのスタミナそば(たまにうどん)が天ぷら&生卵で300円。出汁も絶品。麺も冷凍ではない。無我夢中で熊啜する。
そろそろ映画が始まりそうだ。途中コンビニに立ち寄る。満腹なのでビールはもういいか。ちなみに上映中にビールを飲みすぎるとトイレが近くなる。私はウィスキーを手に取り、レジへ向かった。準備万端である。
映画が始まった。2本鑑賞できるシアワセ。しかし、ウィスキーをラッパしているとあまりの心地よさで90分以上爆睡してしまった。

上映前の一軒目。

上映前の二軒目。

上映前の三軒目。