2017年11月22日

第1829夜:源平の夢【下関(山口)】(中編)

 ノドの渇きがピークに。湯上りに冷たい生ビール呑み放題サービスが待っている。いそいそと着替えてロビーへ。陶器のマグカップに生を注ぎ、口に運ぶ。

 ……。私は、浦島になった。ここは竜宮城か。関門海峡にほど近いところに聳える陸のラビリンス。琥珀の奇跡がノド、食道、胃に滑り、毛細血管の隅々までホップが駆け巡る。4秒掛からず呑み干し、すかさず2杯目。1杯目と旨さが変わらない。そのままロビーで4杯ほど呑んでいると、夕食の時間になった。

 館内のお食事処へ。ドリンク注文の際、普段なら1000%生ビール(または瓶)である。しかし、つい先ほど生を数杯ノドに放り込んでいる。料理はフグ。日本酒、それも地酒が良いだろう。獺祭は高いので、手ごろな山口っぽい「奇兵隊」という300ml1000円冷酒を召喚。気分はタカスギだ。

 てっぴをツマミながら奇兵隊をやる。コリコリした食感がタマラない。フグの皮はなぜこれほど旨いのか。
ふぐ刺し(てっさ)が運ばれてきた。……。思わず目を剥いた。1人前とは思えぬボリューム。30枚は並べられているのではないか。フグ煮凝りが2ヶ、フグにぎり寿司が1カン添えられている。

 まずは1切箸でつまみ、ポン酢にチョン付け。口へ運ぶ。……。参りました。私はもう、討たれてもよい。このまま沈没しても構わない。竜宮城から帰れない。明日のチェックアウトの際、30歳以上老いても本望。てっさ、食べても減らない量。

一度試してみたかった、2、3枚を豪快に箸でさらう無法に挑戦。……。口内すべてがフグ。淡白な中に上品な甘味が舌の上に溶ける。歯ごたえもセクシー。間髪入れず、奇兵隊投下。私の中の関門海峡がチャクラのごとく回り始めた。

 一人鍋が煮えたようだ。火傷しそうになりつつフタを外す。大きなフグの身および粗の塊がドカンと浮かんでいる。野菜がほとんど見えないほどに。

 手羽先しかり、スペアリブしかり。骨の周りの肉が一番旨いことは古今東西自明の理。骨の周りの肉をセセリとっていく。てっちり(鍋)の魅力は他の具材との旨みが複雑かつ精妙に絡み合う一期一会にある。フグの旨みを吸い込んだ野菜もトロトロで絶品である。

 てっぴ、てっさ、てっちりでかなり腹が張ってきた。奇兵隊も第1陣が滅失したので第2陣召喚。すると、熱々のフグシューマイが2ヶも運ばれてきた。かなり大きい。〔次夜後編〕

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「てっさ」と「てっぴ」。

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「てっちり」。

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「ふぐ焼売」。
posted by machi at 08:52| Comment(0) | 山口県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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