2017年の夏の日曜日。私は7年ぶりに中州屋台を訪れた。仕事がら屋台村計画等に関わることが多い。ただしこれらは人工的に整備されたもの。本来の屋台は路上に面した限りない外呑みが基本。闇市的香りが漂う呑ん兵衛のパラダイス。夏だけでなく、冬も風情がある。
その日の昼は博多駅構内「ほろよい横丁」で2軒ハシゴしてほろ酔う。駅前のホテルにチェックインし、シャワーを浴びて汗を流し2時間ほど昼寝。これもシアワセである。そして寝起きに再度シャワーを浴びて中州に繰り出した。
前日まで山笠で大賑わいだったそうだが、祭りの寂し気な余韻は1oも感じられない。日曜とはいえ3連休の中日。観光客で溢れている。年配よりも若い人の方が目立つ。
19時を超えているがまだ日が高い。1軒目は<もり>さんという大将が超絶の手際で一人で切り盛りされている屋台。冷えた瓶ビールでノドを潤す。中州屋台はどの店もコの字カウンターが基本。あっという間に客で埋まる。私も含め地元住民はほぼ皆無の雰囲気だ。
天ぷら盛合わせを注文。その場で衣をつけて手際よく揚げてゆく。焼鳥類は昼にたっぷり満喫したので天ぷら一択に。いろいろハシゴするため酒も食い物もセーブ気味とする。
大根おろしの入った出汁に浸して熱々を頬張る。旨い。ビールで追いかける。川から吹く風が心地よい。極上のロケーション。値段は決して安くないが、このロケーションを考慮すれば大満足である。いつまでも居たい気分になるが、長居は野暮。2軒目を目指す。
人がさらに増えてきた。ラーメンにはまだ早い。焼鳥と天ぷら以外で攻めたい。ブラブラしていると、絶妙の声がけタイミングでラーメン&一品系の屋台に飛び込んだ。今度は若い店員さんたちが活気と元気を漲らせながら軽快に立ち振る舞っている。
着座するなり追加注文不可と伝えられる。飲み物の追加は場合によってとおっしゃる。温いビールを呑みつつ地鶏焼と牛タン焼を注文。量は少ないがまあまあ旨かった。隣の客のラーメンも旨そうだ。値段はどれも平均1000円程度。観光客価格なのだろう。
腹が張ってきた。休憩したいが休憩できるところがない。ちょうど中洲の映画館(中州大洋)で20時半ごろからレイトショー(1,100円)があった。作品は超大作ヒットシリーズ第5弾『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』。私もこれまで映画館で観てきたが、これほど後味も余韻も残らない爽快スッキリ映画は珍しい。今回も期待に違わぬ爽快感と何も残らなさ。少し小腹も減ってきた。再度屋台に向かう。
23時ごろだか客足は途切れない。私は「焼きラーメン」なるものを喰ってみたかったので適当に空いている店に飛び込む。瓶ビールをチビチビやりながら出来立てのブツを啜る。……。超濃厚な味付けである。これは酒のサカナである。
中州の屋台は保健衛生なども絡みもあり拡大されることはないだろう。また、地元民の多くは中州以外の屋台に足を運んでいるようである。観光客向けにここまで特化することも天晴な戦略の一つ。中途半端が一番よろしくない。
このような屋台の空気や文化はもう日本では生まれない可能性が極めて高い。中州はまさに人工感にない「最後の屋台」。私は海賊気分で残りの焼きラーメンを啜り込み、〆の焼酎ロックを呷った。

中州の天ぷら&焼鳥屋台。

揚げたてを冷たいビールで。

すごい人。外国人が半数以上かも。

2軒目は温いビールと焼きもの。

腹ごなしのレイトショー。

深夜でも人途切れず。

〆の焼きラーメン。