旨そうなロース肉がドカンと出てきた。どんどん焼いていく。口に運ぶ。蕩ける。ときどきレタスに包んで頬張る。瓶ビールで開始し、途中から焼酎へ。たまに日本酒。肉に自信ありというママの言葉に偽りなし。肉が無くなればおかわりだ。
程なくしてY川氏がカラオケモードに突入。スナックでカラオケは黄金の組み合わせだが(私は勧められない限り自分からはめったに唄いませんが)、宴会場のような大広間ではないカウンターだけのスナックで肉を焼きながらカラオケを聴いたのは初めてだ。
私も唄うよう指示された。曲を選ぼうと機械をいじっている間にもどんどん肉が焼けてくる。機械のスクリーンも脂まみれ。あんまり反応しない。
曲を入れた。私はよくBE●INのボーカル氏に似ていると言われるので、「オバー自慢の爆弾鍋」を入れた。唄う間にも肉が焼ける。ラフテージューシー昆布イリチー♪と叫びながら肉を口に運ぶ。肉を焼きながら唄ったのは初めて。まさに「焼肉スナック」の真骨頂である。
途中、デザイナー氏から美女に氏製作の壺の贈呈式があった。私はY川氏以外初めて面識いただいたので、その経緯が分からない。しかし立派で素敵でオリジナリティ溢れるデザインに感動。私は調子に乗って、プロのデザイナー氏に私の似顔絵を書いていただく。その横にワケトンもリクエスト。私、ワケトンにそっくりである。
肉を焼く。唄を歌う。壺を眺める。不思議な時間と空間である。常連さんはいつの間にか爆睡。ちなみに常連さんは焼肉を頬張らずツマミと酒を嗜まれていた。
客のすべてが焼肉を注文するわけではなさそうだ。もし私が一人で入って普通にスナック利用しているのに、隣の客がガス台で肉を焼きだしたら落ち着かないだろう。
元町高架下は神戸最強のディープスポットだが、その中でも<焼肉スナックはまさか>さんのディープさは群を抜いている。
ママさんにとっての商売のコツを教えていただいた。それは「客の名前を一切敢えて覚えない」こと。世間一般の常識からかけ離れているが、聴けば納得することもある。その理由を聞きたければ、このお店へ足を運ぶべし。初心者はかなりの蛮勇を必要とするだろうけど。

シュールな空間。

あまり反応しない。

肉を焼きながら唄う非日常。