文禄・慶長の役で焼失したが17世紀に再建。秀吉氏の命を受けた大名らがこの寺を焼き滅ぼさなかったら世界遺産だったかもしれない。日本人にとっては法隆寺や金閣寺が異国人に燃やされるような感覚だったのだろう。何となく申し訳ない気分になる。
釜山の中心部・南浦駅から地下鉄で30分かけて梵魚寺(ポモサ)駅へ。地下鉄は途中地上に出る。巨大な団地群が至る所に密生している。規模は日本より遥かに大きい。
駅到着後、タクシーで強烈な山道を10分ほど上がっていくと釜山屈指の名刹「梵魚寺」に到着する。寺周辺はハイキングコースになっているようで、駅から寺まで登山スタイルで歩く人も数多い。駅前に登山系スポーツ用品店もあった。
広大な敷地内に色鮮やかな一柱門、天王門、大雄殿、仏殿が林立。釜山だけでなく韓国全土から参拝に訪れているようだ。街の中心部もだが、釜山では欧米人をあまり見かけない。寺だが城壁のごとく立派な石積みが施されている。何となく沖縄的色彩と風景を感じさせる。
雲一つない快晴。暑くも寒くもない最高の気候。登山ルックの山オヤジや山アジュマ(熟年婦人)たちが岩山の方に向かって歩を進めている。ハイキングというより、本格的なトレッキングコースになっているようだ。ウェアを見ても感じるが、韓国人は原色がお好きなようである。
我らオッサン3人衆も足場の悪い岩道を少し歩いてみる。同行2氏はラフなスタイルでスニーカーだが、ブレザーを着て革靴を履いている輩は私だけだ。
私は日本で登山らしい経験をした記憶はあまりないが、すれ違う人と挨拶しながら道を譲り合うイメージがあった。今回釜山を歩き回って気付いたことだが、山中や街中、地下鉄乗降時も含め数多く人とぶつかった。最初、私がどんくさいのかなと感じていた。
たまたまかもしれぬが、どうやらコチラには登山すれ違い時の挨拶や道を譲り合うという習慣がないらしい。それとも私が日本人であることを視抜かれたからか。ただし、地下鉄では年配者に年配者が席を譲るシーンは幾度となく見かけた。
山道どころか平地すらあまり歩かない私にとって、森林浴など久々である。巨石を縫うように流れる川も美しい。まさに都会の喧騒から離れた別天地だ。
少し汗がにじみ出てきたが、基本的に木陰の中のプチトレッキングなので風が涼しい。メッチュ(ビール)が無性に飲みたくなったが、境内では売っていないようだ。下りは足がガクガク震える。手ではなく足の震えなので、アル中の症状ではない。痛風持ちだけど。

