2016年03月12日

第1408夜:雲の王国【酒田(山形)】(その四)

 店内に飛び込む。女子高生たちが美味しそうに啜っている。私はチャーシューワンタンメンを召喚。期待に胸を膨らませつつ店内を見渡す。

 こちらのお店も「酒田ラーメンを考える会」所蔵。オリジナルストラップも売られている。シーナ先生の色紙が2枚飾られている。「川柳はなんでもうまい!」「雲にのるような川柳のわんたんめん」とノリノリのコメントまで味のあるイラストとともに激筆されている。

 程なくしてブツが運ばれてきた。絶世の日本美人である。大きなチャーシューが丼に幾枚もの華を咲かせているが、その下にワンタンの雲海が広がっている。

 まずはスープを一啜り。……。あっさり醤油に魚介風味が溶け込む王道の酒田系。麺を啜る。……。柔らかめである。

 事前に商店街の旦那衆にお聞きしていたのだが、このお店は高齢者の支持が分厚く、そのリクエストで麺を柔らかめにすることがデフォルトになっているという。コシが欲しいなら麺固めと伝えねばならないらしい。九州豚骨のようなシステムだが、柔らかい麺も一興。ワンタンと一体になる嬉しさがある。

 チャーシュー、メンマ、麺を食べきった。鉢にはたっぷりのワンタンの海が広がる。レンゲですくって口に運ぶ。……。私は、飛翔した。頭上にラピュタが浮かんでいる。店内の壁面の向こうに地平線が見えてきた。重力が消失した。

 ふわっと口の中で溶け、すっと消える。その後に皮に包まれたワンタンの肉の激しい旨みが破裂する。私の中の何かが弾けた。箸でワンタンを麺のように啜りだした。こんな振る舞いが可能なほどの薄さ、柔らかさ、千切れそうで千切れない芯の強さ。五里霧中で熊啜する。

 ワンタンメンは麺、具、スープ、ワンタンすべてが高次元に融合した総合芸術。それぞれに店に味は似ているのだが、個性がある。

 世界最強最高のワンタンメン王国・酒田。ワンタンを取り扱っていない店も決して少なくないけれど、うどんやそばを扱っても御飯系やサイドメニューを置いていない店も多い。その代わり、麺が多い。ラーメン(+ワンタンメン)一択勝負に王国の威信を伺うことができる。

 私は様々な店でワンタンメンを啜ってきた。8か月間で11回訪問した私の酒田ミッションの最終日翌朝。当分酒田を訪ねることはなさそうだ。最後の最後に、どうしても試したいことがあった。ワンタンだけを啜ることである。ワンタンだけの海に溺れることである。

 酒田みなと市場内にある<月>は、酒田最強のワンタンメン帝国<満月>の新業態。セルフサービス・食券・中華そば並がワンコイン(500円)。朝9時から開いているため「朝ラー」も楽しめる力強さである。〔次夜完結〕

160312川柳@酒田C.jpg
<川柳>さんの「チャーシューワンタンメン」。雲のごとし。

160312川柳@酒田B.jpg
シーナ先生のイラスト入りサイン。

160312月@酒田@.jpg
酒田みなと市場内にある、聖地<満月>さんの支店っぽい<月>さん。
posted by machi at 08:51| Comment(0) | 山形県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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