2015年10月25日

第1317夜:天ぷら三十六人衆【酒田(山形)】

 酒田三十六人衆。義経氏を匿った奥州藤原氏が頼朝氏に攻め滅ぼされそうになった際、三代目秀衡氏の妹御直属家臣36名が酒田まで逃れ、現在の街の礎を気付いたという歴史がある。

 神話のごときおとぎ話のようだが、実際に現在も三十六人衆の末裔がおられるという。なかなかご本人にお目に係る機会はなさそうだが、「三十六人衆」という銘柄の地酒は割と手軽に酒田で味わうことができる。

 庄内空港でも販売されているが、2015年9月上旬の肌寒い酒田のメイン通り・中通り商店街2階のカウンターの鎮座していた。カウンターに腰掛けた私の目の真ん前である。

 商店街2階に位置する超人気居酒屋<魚山人>さんへS野理事長とS藤女史で。これまで2度突撃して満員で入れなかったのだが、3度目の正直が実現。まずは生でノドを潤し、魅力があふれ出そうなメニュー拝見。全部注文したいほどの多幸感である。

 これまで酒田では刺身を満喫してきたので、地物の天ぷらに惹かれた。旬の終わりを間もなく迎えるお隣の鶴岡名産だだちゃ豆(枝豆)をやりながら地野菜の天ぷらと地魚の天ぷらを指名。今日はほぼ天ぷら一択である。

 お通しが登場。大きな舞茸と万願寺級のしし唐揚げ出し天ぷらである。お通しも天ぷらとは予想外。これだけで十分にメインを張れる逸材である。

 生を2杯呑んだところで、すかさず地酒に切り替える。豊富な銘柄で迷ったが、目の前の「三十六人衆」一升瓶が圧倒的な存在感で眼前にてオーラを放っている。これを冷やでやる。豊潤で爽やかだか芯の強い香りが鼻から抜けていく。

 地物野菜天ぷら盛合せが運ばれてきた。すごいボリュームである。トマトといった変わり種もある。口の中で熱々の汁が弾ける。すかさず冷やの三十六人衆で押さえつける。コーンの柔らかさと甘み、椎茸のポクポク、巨大しし唐に爽やかで上品な苦み…。他にもあったが種類を忘れてしまうほどの充実感である。

 地魚天ぷら盛合せ天ぷらも圧巻である。キス、烏賊……。メゴチもあっただろうか。奥深い岩塩にチョン付けし、口に運ぶ。……。荒波のイメージが強い日本海に揉まれた極上の白身。淡麗かつ上品なのに、芯の通った三十六人衆の強さが感じられる。冷やの地酒で追いかけると、旨さにふくよかさが増す。店名に相応しい山と海の恵みたっぷりである。

 一升瓶が残り少なくなった。マスターが「ハイ、あげる」と瓶ごと下さった。大きなぐい呑みに自分で注ぎ豪快に呷る。満腹に目を蕩けさせていると、お待たせ〜と「だだちゃ豆のかき揚げ」が降臨。すっかり忘れていた。かぶりつく。これだけ天ぷらを食べ続けると胸焼けするが、この店はカラリと上品。いくらでも入る。素材の良さが空前絶後に高められている。

 地酒を呑み干した。3人でバー<アバディーン>へ。車で理事長を迎えに来られた奥方様も緊急参戦。奥州藤原氏ゆかりの三十六人衆が酒田に錨を下ろして800年強。商人町・酒田は商人にその気脈が受け継がれているようである。

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旬の地物野菜の天ぷら。感動。

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地酒「三十六人衆」を豪快に。

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繊細と豪快が高次元に同居する地魚の天ぷら。
posted by machi at 12:01| Comment(0) | 山形県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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