2015年5月中旬。人生初の山形県酒田市潜入を果たした私は、その足で酒田ラーメン王道の一つ<中の町三日月軒>さんで絶品を啜った。オーソドックスなビジュアルだが、飽きの来ないシンプルな味わい。幾層にも旨みとコクがグラデーションを描いている。初対面で一目惚れ。`考える会´が発行している冊子(約1,000円)も購入したほどだ。
考える会には14店舗所属されているそうだが、掲載されていない店も数多いと推測される。2015年中に酒田へ10回以上足を運ぶ予定の私だが、到着は夜のミッション開始直前。翌朝早朝には立たねばならない。夜中営業の店もあるが、王道というより、ニューウェーブな雰囲気に包まれている。王道系に対峙するチャンスは意外なほど少なかった。
酒田ラーメンに短い後ろ髪を引っ張られた午前8時。庄内空港内の売店をホタホタ物色していた私の視界に「酒田のラーメン」という力強い表記が飛び込んできた。思わず手に取る。「自家製麺比率は日本一」という頼もしい表記の後に、ごく小さな字で「と言われています」と付記されているあたり、奥ゆかしい酒田人らしさがにじみ出て微笑ましい。
パッケージには以下のように記載されている。「海鮮だし さっぱりスープ プルプルもちもちの麵 酒田のラーメンは煮干し・飛び魚・昆布等の魚介系だしを基本に……(以下省略)」。
近くて遠い酒田ラーメンの王道を自宅で味わえるのは極めて幸せなことである。嵩張る上に重たいが、この重みが嬉しくもある。
ある夜中。自宅呑みの後、汁モノが啜りたくなった。酔っ払うと普段は面倒くさくて湯を注ぐだけのカップ麺だが、魚介系和風だしの惹きには抗えぬ。手順書きに沿って調理開始。
たっぷりの水(しかも浄化したもの)を鍋で沸かし、麺を2、3分湯がく(硬さは好み)。その間、丼にスープを入れ、熱闘を注ぐ。このタイミングが難しい。早くスープを作りすぎると冷めてしまうからだ。刻み葱とこの日のための買って置いた真空パックの焼豚も用意し、盛り付ける。程なくして、美女が出来上がる。
啜る。……。私の目の前の庄内平野が広がった。雄大な最上川が眼前に流れ始めた。夢中で啜る。醤油スープに潜む魚介の豊潤かつ切れ味の鋭さ。麺のモチモチしたノドごしも官能的。表記に偽りなし。神戸の自宅が酒田に早変わりした。しかし、啜れば啜るほど、「考える会」所属の店舗で啜りたくなる衝動に駆られた。
嵩張るがかなりのオススメお土産。

