2012年08月07日

第536夜:オトコ一匹、きりたんぽ【秋田(秋田)】(中編)

 90円?900円ではないのか。何度も確かめたが、間違いはなさそうだ。しかも、まだ注文できるという。90円のいか刺しだけを注文する蛮勇を私は持ち合わせていないので、舞茸・なめこ・しめじ・えのきが入った秋味濃厚な「旬のきのこ煮」も注文。私はきのこ類にも目がない。

 ビールとお通しが運ばれてきた。お通しはエビマヨ・バイ貝煮・がんもと野菜の炊き合わせという気合いの3種盛。どれも手ぬかりなく、しっかりと仕事が施されている。今夜の勝利を、お通しの段階ですでに確信することができた。 

 瓶ビールは一番搾り。本当にたまたまだろうが、私が訪れた仙台と秋田の店は、ほとんどがビールはキ●ンで、しかも一番搾り。冷えていれば何でも爽快に旨いから銘柄は何でも良いが。

 イカ刺しが運ばれてきた。透き通るほどに鮮度の良いイカが、光り輝いている。しかも、木桶に氷が敷き詰められた上に、たっぷりと乗せられている。わさびもすり下ろしの本格派。サービスとは言え、度肝を抜かれる。イカのメニューだけでかなり種類があり、心が震えた。

 秋田名物ベスト3に間違いなくランクインするのは「比内地鶏」。通常の鶏肉と比べると高額だが、私のような流浪のまちづくり屋でも、ギリギリ手が届く範囲のぜいたくが楽しめる。

 様々な比内地鶏メニューがある。比内地鶏ねぎピザなど、真に心が動く逸品も見受けられた。私は一人でも、つい4人程度で呑みに来ているかのごとく注文しすぎて失敗すること限りなし。きりたんぽ鍋を味わう前に轟沈してしまうのは本意ではない。

 熟慮を重ね、私はタレ焼つくね一本勝負を選択。見事なタレの照りである。かぶりついた。……。噛みしめるごとに味わい深い。添えられた比内地鶏の生卵の黄身に、チョン付けして口に運ぶ。七味もパラリ。マイルドにして野生、ワイルドかつ繊細。うなずける味わいである。

 カセットコンロがセットされ、どう見ても4人前はありそうな鍋にフタをしたきりたんぽ鍋が運ばれてきた。グツグツ煮立ってから3分程度が食べごろという。嬉しいことに、比内地鶏が使っているという。

 煮えすぎると固くなる。頃合いを見て比内地鶏を口にした。……。ピュッと肉汁が口の中に飛び出した。ハフハフしながら噛みしめ、呑みこんだ。鶏肉の味とはこれほど濃いものなのか。

 鍋は具だくさん。ミツバの香りが良く、白舞茸の歯ごたえと風味がきりたんぽ鍋のグレードを3ランク以上アップさせている。ネギ、糸こんにゃく、ごぼう。いずれも渋い働きを見せている。とにかくダシが絶品。地鶏から出た油の油膜で、表面がキラキラ光沢を放つ。このダシだけで、酒が何倍も呑めてしまう。

 ビールが無くなった。追加したいが、確実に満腹になる。ここは秋田、地酒をチビチビやりながら一人鍋をつつくのは、冬の北国一人出張の醍醐味。

 清酒「いなにわ生貯蔵酒」をボトル注文。木製の容器に氷が敷き詰められ、ボトルが冷やされている。一つ一つの芸が細かく、注文するたびに感心の唸り声をあげてしまう。〔次夜後編〕

120807きりたんぽ鍋(秋田).JPG
どう見ても4人前はある「一人用きりたんぽ鍋」

東朋治フェイスブック⇒http://www.facebook.com/#!/tomoharu.azuma
posted by machi at 07:34| Comment(0) | 秋田県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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