11月下旬というのに20度を超す暑さが、12月に入った瞬間一気に冷え込んだある日。12時前に高速バスで福山から松山入りした私は、13時開始の会合に備えて昼食を腹に入れることに。銀天街商店街をキョロキョロしながら物色する。寒いので温かい麺を啜りたい。
銀天街商店街から延びる路地に「鍋焼うどん」と書かれた看板が見えた。<ことり>である。鍋焼うどんは調理に時間がかかるものだが、移動時間を入れても1時間弱あるから大丈夫だろう。引き戸をガラリと開けた。店内はほんわり温かい。
店内は小上がりもテーブル席もあるが、すべて満席。私も相席させていただく。見渡すと、皆さん鍋焼うどんを啜っている。張り出されたメニューを見ると、わずか2種類というド直球勝負。「鍋焼うどん」(460円)と「いなりすし」(2ヶ240円)のみだ。
メニューも2種類なので、用語を省略しても通じるだろう。私も常連を気取り、眉間に皺を寄せながら指を1本立て、シブい声を発した。「一つ、お願いします」。
熟女店員さんは「は〜い、お一つで〜す」と厨房に声を掛ける。キマったな、と一人悦に入っていると、店員さんは私の前に水を置いてくれた。しかし、なかなか立ち去らない。
私がキョトンとしていると、「460円です」とおっしゃられた。現金前払いだったのだ。常連を気取ってしまったため、店員さんもルールを知っていると思われたのだろう。私はヘコヘコ赤面しながら財布を取り出した。
鍋焼うどんは調理に時間がかかる。最低10分は待つことになるだろう。店内を軽く見渡し、水を一口飲む。鞄から雑誌でも取り出そうとした瞬間、「お待ちどうさま〜」と運ばれてきた。
私はテーブルに付いていた肘がガクッと外れそうになった。厨房に声を掛けてから1分も立っていない。40秒程度だろうか。立食いそば級のスピードだ。
容器は土鍋系ではなく極めて熱効率の良いアルマイト系。フタを外す。湯気がホワリと立ち上る。具は肉、なると蒲鉾、きざみ揚げ、ネギ、玉子焼というシンプルさ。アルマイトのレンゲでダシを口に運ぶが、ダシもレンゲもとんでもない熱さ。そして、とんでもない旨さだ。
うどんはモチモチの関西風。具も素晴らしいアクセント。常連は冷ますためにフタを器がわりに活用している。夢中で啜り終えた。途中から出てきた鼻水もすすった。
外に出た。寒さで強張った体がほぐれている。体はホカホカ、心もホカホカ。おそらく日本一調理スピードの速い鍋焼うどんだが、手間暇とサービスはスローフードのようである。
見るからに旨そうなシブい外観
シンプルで旨くて安い<ことり>鍋焼うどん
(付記)
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