やくも。岡山駅と出雲市駅の間を疾走する特急列車である。天候に弱くすぐに運休すること、日本屈指によく揺れることは、山陰人の基礎常識である。
2023年、米子市へ6回訪れた。毎回、約2時間少し「やくも」に乗る。たまに満席でグリーン車しか空いていない時があるから注意が必要である。行きも帰りも順調に移動できたが、私が乗ってきた特急の後の便が何らかの理由ですべて運休になったこともあった。
2024年7月上旬。私は中国地方を徘徊していた。月曜は岡山県井原市。火曜は神戸の自宅でPC猿打。水曜は山口県周南市。木曜は神戸の自宅でPC猿打。金曜は島根県出雲市。
そんな週の木曜。山陰地方大雨というニュースが飛び込んできた。嫌な予感がした。運行状況をネットでチェック…。この日、特急やくもはすべて運休していた。始発から終電まで。山陰だけでなく、岡山県北部あたりから動いてない。
明日は動くのか…。岡山駅へ行かねば分からない。雨がやんでも、倒木とかで運休になる可能性が実に高い。
翌朝。5時からPCに向かう。運行状況確認…。やくも、通常通りとある。安堵する。その代わり、広島県の瀬戸内沿いが全滅。私は岡山から乗り換えるので、セーフ。持っている。
念のため予定より15分早い新幹線に乗車。駅改札内でホット珈琲を飲みながら「やくも」の入線を待つ。予定通りの時間に出雲市行きが発車する。
安堵しつつホームで熱いコンビニ珈琲を味わっていると、見慣れぬ車両が入線…。やくもの新型車両だった。
岡山から出雲市まで約3時間。車中でPC猿打し続けねばならない。到着後、出雲市駅周辺の商店街をたっぷり視察した後、PCにフル稼働してもらわねばならない。初訪問ゆえ、充電環境が分からない。
全席にコンセントがあった。震えた。シビれた。思う存分猿打できる。しかも特段操作していないのにパソコンにWi-Fiがビンビン。新幹線よりもネット環境が良い。たまたまか。
コンセント、ヘッドレスト、Wi-Fi…。あらゆるリニューアルが施された新型車両でありながら、強烈な揺れだけは以前のまま。むしろ好ましく感じた。
2時間ほど経過。車内放送で「間もなく米子」とアナウンス。クセで思わず荷造りして降りそうになる。
未踏だった米子以西。安来、松江…。フリーになり15年目。ついに初の島根県内ミッションである。未踏だったダンジョンの階層へ足を踏み入れた緊張感と高揚感である。車窓は雨だが、大雨でない。
途中、宍道湖畔を通過する。雄大な景色である。西へ向かっているためか、雨が上がり晴れ間がのぞいている。
順調に時刻通り到着するかと思いきや、終着駅から1駅手前の特急が止まらぬ駅で停車。5分経っても動かない。アナウンスが鳴り響いく。「業務連絡」のため一時停車したそうな。
7分遅れで出雲市駅着。岡山駅から3時間10分の鬼揺。切符売場は長蛇の列。少し殺気立っている。やはり倒木か何かの影響で、私の後続の特急がすべて止まっているらしい。私の出雲入りは、出雲を統べる八百万の神々の御加護である。
見慣れぬデザインが入線。
グッと快適に。
コンセントが大助かり。
出雲市駅の一駅手前で「業務連絡」のため一時停車。
出雲市着。
モダンな駅舎。
華々しいデビュー。それだけ力のこもった路線。