浅草。日本屈指の観光地である。しかし、今やインバウンドのイメージが強烈である。
富良野からバスで旭川空港。時間は9時半過ぎ。空腹を極めていた。コンビニで何か北海道っぽいものを…。「ざるラーメン北海道山わさび付き」を捕獲。カードラウンジで珈琲を飲みながら啜ろうとするが、麺が固まったままひっついて解れない。啜れず、齧りつくしかなかった。
JALで羽田。京急で40分で浅草へ。いつぶりか。東武浅草駅まで距離がある。地上は外国人で溢れている。東武浅草駅で切符購入。特急列車の発車まで35分。昼飯を食う時間はある。
パッと見渡す。チェーン系の飲食店が目立つ。アーケード街を含め一帯は鰻、寿司、天麩羅…。そこに殺到するインバウンド観光客。日本語が全く聞こえない。不思議なもので、これが今やすっかりいかにも浅草な風景に思える。
私の昼は、浅草らしく「そば」に決めた。ただし、「中華そば」である。
それほど悠長にラーメン店を物色する時間はない。日本中で見かけるチェーン系を外した上で、最初に視界に入ったラーメン店に飛び込むと決めた。その1発目がアーケード街<田中そば店>。旨そうなオーラがプンプン。当たりの予感しかしない。
入口の横に券売機が。入る前にじっくりチェックできるから外券売は地味にありがたい。
定番を位置する左上のボタンは「中華そば」850円。チャーシューメンと思しき「肉そば」1250円。私はラーメン店では9割以上の頻度でチャーシューメン(肉そば)を頼む。
私の一つのオトナとしての目標に「値段を気にせずチャーシューメン」を頼むという理がある。「肉そば」のボタンを押した。他のボタンは…。特製肉めし、明太子ごはん。
気になったのが「山形辛味噌らーめん」「数量限定バリ煮干しそば」「数量限定津軽煮干し中華そば」。この店、山形系なのか、(津軽)煮干し系か…。
店内はカウンターが一席開いていた。他の席はすべて埋まっている。意外なことに、店内はすべて日本語。地元常連風もいる。期待が高まる。
ライスは無料だった。平日限定11時から14時までの嬉しいサービスである。私の着座時間は木曜日の13時30分。バシっと決まった感がある。
ライスの後、肉そばがカウンターからにゅっと登場。思わず口笛を吹きそうになった。極上の美女である。チャーシュービッシリで麺が見えない。中央の刻み葱とメンマが全体を引き締めている。スープは半透明。塩味なのか。
胡椒パラリ。スープから…。あっさりと深い。塩が前面に出過ぎない。醤油でも塩でもない。煮干味はしない…。旨い。王道のようで革新。直球なのにわずかに変化している。
肉を頬張る。笑みが漏れる。麺とスープの絡みもなかなかのロマンポルノ。時折ライスを口に運ぶ。肉、麺、汁、飯。私の奥底の雷門が御開帳した。
卓上の「香唐」。シャントウと発音する特製唐辛子とある。最初のひと口は甘く、後から辛さが来るらしい。少しだけ投下。スープを口に…。
辛みがシャープ。甘さはあまり感じないが、一味や七味唐辛子では出せない重層感のある辛さ。キリリと舌を引き締めてくる。気づけばスープ一滴残っていなかった。
大満足で店を出る。時間は13時40分。10分後に特急が発車する。信号に引っかかっても6分ほどでホームにつくだろう。
数年ぶりの浅草。雷門を見ず、仲見世通りも通らず、寿司や天麩羅、鰻をスルーし中華そば(ラーメン)に全集中。これぞ、旅行や神社仏閣、江戸風情に興味ないが、寸暇を惜しんでラーメンを啜りたいニッポンオヤジの昼メシである。
旨さが確約された外観。
期待以上。
(付記)
本年もこのバカブログをご笑覧いただき誠にありがとうございました。大晦日ゆえ「そば」ネタで。新年も御贔屓に。今夜もご安全に。