2024年11月09日

第3537夜:焼鳥屋のバタートースト【三宮(神戸)】

 <いなかや>。炭火焼鳥創業40年以上という老舗である。豪快で個性的な女将が一人で切り盛りしている。これだけならまあ特段珍しくもないが、その場所が三宮最強のド一等地・阪急サンキタ通りで、しかもKFC、バーガーキングの並びである。

 40年間、この前を数千回通っているだろうが1oも気づかなかった。路面沿いだが少し奥まっている。カウンターだけの店内は40年の風雪が壁床天井カウンターに沁み込んでいる。

 この店でY川氏と寒い夕方に吞むことに。氏はFェリシモの元部長で、定年退職後はいくつの顔をお持ちなのか覚えきれぬほどご活躍。その中の一つが隔月フリーペーパー『土日技術』の編集発行人。私も創刊号から『日本全国放課後三昧』を連載させて頂いている。

 Y川氏は大阪生まれの大阪育ちで大阪在住だが、40年近く神戸(Fェリシモ)でご活躍ゆえ神戸で凄まじく顔が広い。氏には数年前、創業50年を超えた元町高架下の「焼肉スナック」に連れて行って頂いた。度肝抜かれた。今回も、度肝をえぐられた。

 瓶ビールを頼むと、すでにグラスに何かの液体が。独特の味わいの野菜の煮汁。ママの健康への留意サービスなのだろう。青汁が呑みやすく感じる味を一気に飲み干し、ラガーを注ぐ。

 目の前にはピンク電話。ジーコジーコとダイヤルを回すタイプ。なんと現役らしく、実際に予約等で電話がかかってくるという。

 Y川氏は通い始めて23年らしいが完全に常連。焼物はママにお任せ。炭火でどんどん出してくれる。まずは鶏レバーを楽しむ。

 もも、ウィンナー、ずり、レバー、手羽先、皮、つくね…。塩もタレも絶品。皮は一度湯引きしてから炭火でじっくり焼いているのでクドサ皆無。つくねはハンバーグサイズ。

 目の前には見たことのない炭酸飲料が無造作に数本置かれている。能勢酒造のレモン炭酸。これを甲類焼酎で割る。甘さゼロですっきり。この独特に旨いサワーを3杯やった後は、銘柄分からぬ日本酒がグラスでナミナミ。実に心強い。

 常連がひっきりなしに入っては出ていく。そんな中、1人の若者がフラリと入ってきた。隣の雀荘で打っていたという。イチゲン客らしい。神戸市民歴ほぼ50年の私でもこの店に気づかなかったのに、とく気づいたもんだ。嗅覚が鋭いのだろう。

 彼は入るなり、煙草が吸えるか女将に聞いた。店内は焼鳥と煙草の煙で充満。若者は私の横に座り、おっかなびっくり女将とやりとりしている。私も若い頃、出張先で独りで飛び込んだ居酒屋で常連に声を掛けられると嬉しいものだった。

 私はこの店の常連でないが、隣に座った若者の言葉のイントネーションが中国地方っぽかったので話しかけた。岡山市出身だった。

 私はコロナ禍に岡山の表町商店街へ3年間通った。彼は当然にように承知しており、私と彼の共通の知っている店もあった。

 表町に近いスナック<コイン>にラフロイグをキープしていた。長らくご無沙汰ゆえとっくに流されているだろうが、万が一残っていたら好きに呑んでと彼に伝えた。彼は嬉しそうに、これから福原へ繰り出すという。頼もしい若者である。

 カウンターの奥の常連がY川氏と超友人で、俯瞰図を手書きする専門家。その作品に本日2度目の度肝を抜かれる。そんな常連たちに私が勧められたのが、この店のシメの名物。トーストだった。女将から食べるかと聞かれ、あまりピンとこずに首肯。

 常連やY川氏らと談笑していると、女将がトーストを手渡した。バター(マーガリン?)をたっぷり塗った、掛け値なしにトーストそのまま。ただし、焼鳥を焼く炭火で焼いたという。

 かぶりつく…。旨い。呑み屋でシメにバタートーストを喰ったのは初めてかも。自宅呑みでもできそうだが、決してこの感動と味は得られぬだろう。この日、3度目の度肝を抜かれた。

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40年ほどこの前を通り過ぎているのだが…。

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全く気付かなかった。

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お通し代わりの謎の液体。

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初めて観た「割り」の炭酸飲料。

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日本酒はナミナミと。

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現役の電話。

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豪快にトースト。

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貴重な経験。

posted by machi at 10:58| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする