スタミナラーメン。店や地域によって具材は異なるが、ニンニクが豊富に含まれている点は共通しているのではなかろうか。
ラーメン店において、圧倒的財力を駆使できる私はチャーシューメンほぼ一択だが、稀に「スタミナラーメン」という表記を発見すると身もだえする。チャーシューか、スタミナか。
北九州小倉から新幹線、特急を乗り継いで約4時間かけて「山陰の大阪」こと米子へ。2023年2月に訪問して以来、2カ月ぶりである。何故か2回とも14時17分米子着の特急に乗車せねばならなかった。駅前の定宿に入れるまで40分のタイムラグが発生する。
岡山駅での乗換時間はわずか8分弱。結果として14時30分から15時の間に米子駅周辺で遅い昼メシを喰うことになる。
雨が降りそうな春の米子駅周辺を物色。前回は完全にノープラン。今回は事前にネットでチェック。米子駅に隣接する町中華は休憩時間なしの通し営業とあった。一目散に向かうと食事休憩の札が。ネット情報はやはり鵜呑みにできぬ。
前回よりも捜索範囲を広げる。喫茶店やcaféは開いているようだが、私の魂に響かない。ラーメン店は私が通りかかった店すべてが休憩・準備中の札が。前回もだが、絶妙なまでに米子入りする時間タイミングがずれてしまう。
しかし、私には心に余裕があった。我が米子の定宿からほど近い<このみ>さん。ラーメンとお好み焼が2枚看板という海の家みたいなお店だが、安くて旨い。定番のラーメンがわずか450円という古き良き昭和価格である。令和の奇跡である。
時間は14時過ぎ。この時間にもコンスタントに客はいる。すべて20代と思しき男性の一人客。この時間帯、駅周辺ではこの店の貴重さをご存じのようである。
前回、私はチャーシューメンだった。絶品に旨かったが、冒険してみた。「スタミナラーメン」。ニンニク入りの文言が心強い。値段は650円。スタミナを注入せねばならない。
ラーメンや一品料理に組み合せるセットもあった。1gも興味ないがミニサラダが付くとある。200円セットがライス、餃子。300円セットがカルビ丼、唐揚、焼めし、お好み焼き。350円が中華丼、麻婆豆腐丼。通し営業に敬意を表し、セットを頼もう。
普段の私ならカルビ丼か焼飯。しかし、この日私は「お好み焼き」を召還。ラーメンと並ぶこの店の2枚看板。試す価値は十分すぎるほどある。そもそも、外食でラーメンとお好み焼を同時に食べた記憶がない。
神戸が舞台の備え付け漫画を読んでいると、ブツがセットで降臨。マヨネーズが添えられた、小さめだがジャンク感溢れる旨そうなお好み焼と、たっぷり野菜のスタミナラーメン。刻みニラにスタミナの矜持を感じさせる。
ミニサラダを瞬殺して無かったことにして、まずはラーメンに全力。2種類の胡椒を少しづつパラリ。まずはスープ…。
ばっちりニンニクが効いている。牛骨の風味がかなり弱くなっているか、そもそも牛骨ベースかも我がバカ舌には分からぬ。しかし、パワフルである。野菜たっぷりでタンメン的要素も。スタミナタンメンと呼ぶ方がふさわしい。
前夜の北九州若松での鯨飲、翌朝の特急の激しい揺れ、妙な蒸し暑さ…。疲れ気味の体にスタミナがガンガン注入されていく。お好み焼きもスナック感覚。ラーメンとがっぷり四つではなかったが、見事に全体を引き立てている。
ラーメンを全力で啜っている途中、店内TVのニュース番組で「大規模な火災から1年が経過した…」というアナウンサーの声が耳に飛び込んできた。
私の座っている位置からではTVが見えぬので、少し移動。そこには1年前に市場を襲った業火、1年後の現状(今)、そして会議や酒席を共にする知人…。北九州の台所・旦過市場のニュースだった。
ちょうど1年前、私は旦過市場にいた。鳥取県米子市にて遅い昼にラーメンを啜りながら、TVで私がつい4時間前まで滞在していた北九州小倉の市場のニュースを見るシュール感に途中からラーメンの味が分からなくなった。
魔の時間帯の救世主。
スタミナラーメンのお好み焼きセット。
日本津々浦々北Q州。