スパゲティとライス。あるようでない組合せである。一応は関西(神戸)人の私にとってお好み焼&ライスは定番。焼きそばとライスもアリ。餃子とライスなど有無言わせぬ黄金コンビ。しかし、何故かたこ焼&ライスは私の中では無い。
スパゲティ&ライスはどうか。数年前、長崎でナポリタン&ライスを食べた記憶がぼんやり残っている。「ぼんやり」というあたりが力弱い。印象に残っていないということは、可でも不可でもなかったのだろう。
秋の気配が濃密になり始めた11月上旬の昼。小倉駅1階・三十歩横丁へ。昼飯は何にしようか…。入口正面の博多ラーメン店(ShinShin)は横丁内で無双の人気っぷり。この横丁、私は夜呑みでなく昼メシ攻め専門だが、まだ全店未制覇とはいえ満足度高い。
入り口近くの肉バル<GOCHA>で夏の盛りにカレーを喰ったことがある。その待ち時間にランチメニューをガン見していたら、気になるメニューを発見した。「ポークバタ―パスタセット」。セットの中身は、ライスかパンの選択である。
ポークバターという響きに惹かれた。スパゲティでなくパスタという響きに偽善を感じた。そして、パンはともかくライスという響きに混迷を感じた。要するに、気になる存在に昇華した。昇華という響きに、自分自身で面倒くささを感じつつ、いざ店内へ。
ポークバターバスタセットを迷わず注文。セットは、ライスで。胸が高鳴る。結果はいかに。
水を飲みながらぼんやり待つ。平日の13時ごろというのに、店内はワインなどを楽しんでいるお客多数。謎のカップル風であったり、子育てを20年以上前に終えた雰囲気を漂わせている熟女軍団であったり。
ブツ降臨。全体的に白っぽい。あまりパンチのないビジュアルである。私は普段から料理に彩りは全く求めないのでサラダ系は不要。しかし、カップスープぐらいは欲しいところだった。
まずはバターを絡めずにパスタ、もといスパゲティへ。右手にはフォークでなく割り箸。濃厚コテコテ日本オヤジの作法である。
あまり期待せずに口に運ぶ…。目を剥いた。電撃を喰らった。何かが弾けた。旨い。旨すぎる。
スパイシーでマイルド。ニンニク風味濃厚なのにキレがある。醤油系ダレのコクが深い。すかさずライスを追いかける。このスパ、信じらぬほどライスに合う。
ステーキソース風が掛かっている豚肉を口に運ぶ。ライスで後追い。合わぬわけなし。
後半からはバターを絡める。ジャンクで淫靡な旨さが倍加している。スパゲティなのに肉を、それもステーキ肉を喰っている不思議な感覚。ライスと合わせれば十分なボリュームなのだが、もう1セットは軽く腹に入りそうである。
半世紀近い我が麺道。スパゲティに関してはナポリタン9割、ミート1割で他の味が我が選択肢に入る余地などなかった。しかしポークバターパスタ、これまで啜ってきたスパゲティの中で1番旨かったかもしれない。ライスは絶対に欠かせない。
この店の上階にはナポリタンの<パンチョ>がそびえている。ラーメンや焼鳥が火花を散らす小倉駅構内にて、スパゲティも静かだが、核マントルのごとき巨大なうねりを魅せつつ、天上界の争いとして勃発しているのかもしれない。