2022年12月31日

第3078夜:豊前のジロリアン【小倉(北九州)】(前編)

 ジロリアン。二郎系をこよなく愛するラーメン者の総称である。

 私も軽度のジロリアンである。関東方面に行くとつい暖簾を潜ってしまう。一応私の拠点らしきものがある神戸でも二郎インスパイア系(直営でない)で豚ダブル(またはトリプル)を啜ってしまう。もちろん、にんにくはマシマシである。

 9月中旬なのに30度を超す快晴の昼前。連泊している北九州小倉馬借の定宿を出て昼飯に。

 前夜は北九州黒崎でベビーハムとポテトフライでビールやハイボール。〆のラーメンは啜らず。ラーメンは数日前の栃木県佐野市以来。渇望していた。

 魚町2番街にオープンしたつけ麺屋か、ちゅうぎん通りの行列店(娘娘)か…。定宿(クラウンパレス)正面の信号から駅方面へ直進。途中、井筒屋への納品帰りだった五嶋醤油の若社長とバッタリ。信号待ちの間、少し談笑する。私も知り合いが増えたものである。

 2,3カ月前。ちゅうぎん通りでラーメンを啜った後、リバーウォーク方面へ向かう路地(S−パーホテルの真裏)にラーメン店があった。

 ラーメン喰った後ゆえ入らなかったが、気になる外観だった。「ラーメン」という白ヌキ文字の赤暖簾が眩しかった。名店の雰囲気が漂っていた。そこに行ってみるか。

 <ラーメンだるま>という屋号だった。入口に「初めてご来店のお客様」向け注意書きが。

「当店の提供するラーメンは所謂『九州ラーメン』とは異なり太麺のガッツリした商品です」
「お好みのラーメンと違うとご迷惑をお掛け致します。どうぞ太麺の小麦の香りをお楽しみください」

 太麺の、がっつり。九州ではない。まさか…。更なるヒントが横に添えられている。

「当店のラーメンは醤油豚骨ベースこんもり盛られた野菜に食べ応えのある【超極太麺】」
「ニンニクと醤油と背油でガッツリ食べるラーメンです」
「一般的な豚骨ラーメンとは別の物となっております。是非一度ご賞味下さい」

 答えが、正体が分かった。「二郎(インスパイア)系」である。どこにも「二郎」と書かれていないが、難易度は乳幼児レベルだ。

 ふと気づいた。看板の字体と色使いがどことなく二郎を連想させる。

 数年前、北九州若松で横浜家系、それも<山岡家>を見つけた時は感動で頭が真っ白に。これまで北九州で数え切れぬほど啜り上げてきた我がラーメン道に、ついに二郎系が記される日に。

 暖簾が出ている。営業中のようで安堵。しかし、お昼時なのに行列がない。二郎系で行列がないという現象が信じられない。北九州では、豊前の国ではまだまだ二郎は浸透していないのか。

 ドアを開ける。1階はカウンター6席。先客は3名。2回にはテーブル席があるようだ(表示があった)。意外に広いようだ。2階からお客が降りてきた。

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惹きの強い外観。

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力強い注意書き。

(付記)
このバカブログをご笑覧の全世界20名ほどの紳士淑女、本年もありがとうございました。年越しそばがわりの、年越しラーメンネタで2022年を締めくくり。11月下旬ごろから壮絶に忙しくなり、SNSを更新する余裕すらなくなりストップしてしまいましたが、その分、このバカブログだけは意地と妄念で続けてまいります。誰にも頼まれていませんが。皆さまにとって2023年もステキな1年になりますように。新年も御贔屓に!
posted by machi at 11:38| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月30日

第3077夜:WKA祭【Cinema】

 WKA。香港の巨匠・ウォン・カーウァイ監督のことらしい。チラシに大きく銘打たれた3文字イニシャル、最初何か分からなかったが、カーウァイ監督が1990年代から2000年代の5作品を4Kにレストア。その特集上映が2022年9月<シネリーブル神戸>で開催されていた。

 私は大学生だった90年代半ば、カーワァイ作品がブームになった。代表作は『恋する惑星』。私は当時、大学内の500人以上が共同生活する寮で暮らしていた。たまに寮のイベントで映画の上映会があった。その時に観たけど、はっきり言って恋する惑星、さっぱり分からなかった。

 それから十数年後、神戸元町の単館系シアターでカーウァイ監督の『ブエノスアイレス』が上映され、時間つぶしか何かで観た。今から十数年前なのであまり覚えていないが、ゲイカップルの映画だった。何故この映画を選んだのか、今でもよく分からない。

 カーウァイ作品は現実感にない浮遊感が特徴か。ストーリーはあってないようなもの。

 カーウァイ作品が好きというと、映画通のように思われる気がする。カーウァイ作品に陶酔するのでなく、それを観ている自分に陶酔するナルシスト映画のような気がしていた。

 マーベル作品やスターウォーズなどのSF、ロード・オブ・ザ・リングのようなファンタジー、またはミステリ系サスペンスしか観ない私にカーウァイ作品は遠いものだった。

 初めてカーウァイ作品を観て四半世紀以上。20年ほど前など、年間100本以上映画館へ。私の映画遍歴もそこそこに仕上がっている。今、カーウァイ作品に触れると新たな印象を抱くかもしれない。

 特集上映期間、三宮のファストチェーンでPC猿打の合間、気分転換に寸暇を惜しんでシネリーブルへ。6本上映の中で4本を観た。以下、実際の公開順でなく私の鑑賞順に。

 1本目は『2046 4K』。1960年代の香港が舞台。トニー・レオン氏とそれを取り巻く美女たちの恋愛映画(?)。途中、未来のSF映像が入り込んだり、アンドロイドが出てきたりと意味不明。

 最もシュールだったのが、キムタク氏。何故か出演しており、しかも氏だけ思いっきり日本語。

 2本目は『天使の涙 4K』。レオン・ライ氏が若い。ミシェル・リー氏は妖艶の極み。圧巻は金城武。浮遊感とポップを兼ね備えた圧巻の演技。よく分からん話だけど。

 3本目は『花様年華 4K』。既視感があったが、『2046』の前日譚。マギー・チャン氏のファッションショーのような作品。トニー・レオン氏とマギー氏の不倫のようで不倫でない恋愛映画。

 最期は『欲望の翼 デジタルリマスター版』。1960年代の香港が舞台。ぶちギレかつ現実感のない演技はレスリー・チャン氏の真骨頂。カリーナ・ラウ氏もビッチを熱演。マギー・チャン氏は儚くて圧巻。最後にトニー・レオン氏が出ていたけど、このシーンの意味は私には全く不明。

 4作品とも30分以上寝てしまった。それでもぼんやりとあってないようなストーリーらしきものは掴めた。しかし、ストーリー以上に「何が面白いのか」あまり分からなかった。映像表現や色彩を楽しむもの、ということで良いのか。

 私の映画鑑賞眼、四半世紀経ても全く成長せず。しかし、WKA新作が封切されるのなら、観に行くかもしれない。なんだかんだと、気になる監督である。

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2022年12月29日

第3076夜:行列のできる佐野ラーメン・2杯目【佐野(栃木)】

 らーめん予備校。こんな予備校なら敢えて浪人して入学したい、日本で唯一かもしれない専門課程が佐野市にある。その代表は市内で不動産会社を営むW田部氏。商店会の理事も務めるなど、誰もが認める佐野市内のキーマンである。

 ある9月上旬の朝。佐野市役所内の会議室でW田部氏から佐野での商売のヒントや物件探しのコツをたっぷりとご教授頂く。ラーメン店の損益分岐点のお話は本当に参考になった。こんなお話を聞けるのは、役得以外何者でもない。しっかり創業希望者に還元せねば。

 午後は市役所から歩いてすぐの<丸正不動産>にてK田社長から同様に様々なお話を聞かせて頂く。午前のW田部社長のお話と共通点もあれば、視点の違いも。

 どちらも実体験に基づいた話であり、真理である。この2氏のお話だけでも佐野市内のみならず栃木県内で創業と成功を目指す冒険者へにバイブルを十分に作成できる。私は、作成する。

 この日、午前と午後で1時間半以上も空きが発生した。同席していた3代目麺友・K川氏に車でしか行けぬ佐野ラーメン店をリクエスト。氏が向かった先は<Yうすけ>。10日前に足を運んだ<田M屋>と同じく、佐野ラーメンをけん引する超人気店のようである。

 我らは11時半ごろ到着。すでに十数組の順番待ち。メニューを事前にチェック。戦略を練る。

 30分ほど待った頃、店内へ。広めの6人テーブルに通される。ファミレス的店内は<T村屋>と似ている。コロナ対策で客席数を相当間引いているのだろう。

 私はニンニクラーメンにチャーシュー(4枚)と那須御養卵煮玉子トッピング。餃子(3ヶ)も。元作新学園4番のK川氏はラーメン大盛、ジャンボ餃子3ヶ、チャーシュー丼の飯&肉大盛。

 午後からヒアリングなのに、ニンニクラーメン。マスクの有難みである。コロナもこの時ばかりは悪いことばかりじゃない。

 ブツ降臨。まずはスープ…。これぞ、佐野。麺もスープも、佐野。人気も納得。佐野ラーメンのレベルの高さに放心。餃子もジャンボで、これぞ佐野。

 K川氏の喰いっぷり、動画に収めたくなるほどの気持ち良さ。鹿沼のK子氏と双璧である。

 啜る2時間前に、らーめん予備校代表のW田部氏からラーメン店経営に関することもいろいろお伺いしていたので、成功するラーメン店の法則に照らし合わせてみる…。激しく首肯した。

 電車の遅れで予定より1時間遅れの17時半の新幹線。缶チューハイ2本、缶ハイボール1本買う。2日前に「道の駅にしかた(栃木市)」で買ったが食べ損ねていた2種類のカレーせんべいをツマミに。道の駅が他県の商品なのに猛プッシュしていた理由に納得の旨さ。

 名古屋を超えたあたりで、呑みかけだった栃木市の地酒をカバンから取り出す。ツマミは、西方の梅干。2泊3日だけど、濃厚な日々。乗り過ごしそうになったけど。

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超人気。

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人気も納得。

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名古屋まで。

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名古屋から。
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2022年12月28日

第3075夜:長く栄える町中華【栃木(栃木)】(後編)

 その日は午後から下野市内でたっぷりと街歩き。18時半過ぎに栃木駅へ戻る。

 昼に食べ過ぎて空腹感はほぼない。むしろ満腹が続いている。しかし、2時間たっぷり歩いて激しくノドが渇いている。昨晩の<四季>で頼まなかったメニューで何杯かヤるか…。

 蔵の街大通りでなく、みつわ通りからホテル方面へ。夜の巴波川もライトアップされて幻想的。江戸風情が増している。

 私の足は、7時間前に満喫した<長栄軒>に向かっていた。店の前に立った。我が48年の人生で、1日に同じ中華料理店に入るには初めてのはず。

 ドアを開ける。女将さんは一瞬アレ、という顔に。店内は9割埋まっている。

 昼に座ったカウンターの1席が開いていた。そこに座ろうとしたら、4人掛けにゆっくりどうぞとおっしゃる。他のお客さんが来たら申し訳ない。私はグズグズしていると、笑顔で水を4人掛けに置かれた。

 昼にメニューをガン見していたので、頭に入っている。酒は瓶ビールしかなかったはず。瓶ビールとレバニラを注文。この組合せ、最強の町中華晩酌コンビである。

 店内は男性一人客、子供連れ一家、会社帰り、高齢夫婦など多種多様。ビールをコップに注ぎでイッキ呑み。2杯目を注いていると「よかったこれどうぞ」とキムチ、韓国海苔が眼前に。お通しでなく、サービスらしい。

 シビれた。初の「一人」での栃木外食晩酌。この店は2回目だが、実質は昼夜ダブルヘッダーゆえに初日。有難さに泣けてくる。

 レバニラ、降臨。昼の感触でかなり量が多いと予測していたが、その上だった。レバーもニラもたっぷり。4人で取り分ける量でないか。野菜のシャキシャキとレバーの甘みとコク。ビールが無限にノドを滑っていく。パワーが丹田から溢れだした。

 餃子(5ヶ入り)も迷ったが、佐野と同じくジャンボ系の予感がしたのでスルー。隣のテーブルの高校生風に餃子が運ばれてきた。こんがり焼けて旨そうだが、1ヶが大きい。一人中華は品数をあまり頼めないのが難点といえる。

 レバニラを食べ終え、2本目のビールで残っている海苔やキムチをつまみつつラーメン追加。

 三津田信三先生のミステリを読みつつビールをヤッていると、ラーメン降臨。分かっていたことだが、大きい。スープなみなみ。具も多い。チャーシューは分厚く大きめが3枚も。

 胡椒パラリ。スープから…。王道醤油である。佐野系とは全く異なる。麺は「夕顔麺」を使用しているらしい。お隣(佐野)は青竹平打ちゆえ、全く異なる。夕顔麺、定義もさっぱり分からぬが、王道。コシも細さも私好み。オーソドックスの中に真実が見える。

 ビールもレバニラもラーメンもサービス小鉢2品も滅失。腹がはちきれそうである。気になるのはカツカレー。次回は迷わず、コレだ。

 ホテルの部屋で缶ハイボールを呑みながらT野氏に昼夜2回足を運んだことを伝えた。

 氏から翌朝返信があった。氏曰く、このお店、2019年の台風水害で浸水被害にあってしまったが、地元民からの熱すぎるラブコールで復活した愛すべき店という。これからも長く栄え続けること間違いなしである。

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灯台。

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これぞ町中華晩酌。

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夕顔麺、旨し。

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夜も風情満点。
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2022年12月27日

第3074夜:長く栄える町中華【栃木(栃木)】(前編)

 巴波川(うずま)。蔵の街・栃木市を流れる風情満点の川である。遊覧船クルーズも楽しめるそうである。

 雨が降りそうで降らない、肌寒いぐらいの午前11時過ぎ。栃木グランドホテルを出て巴波川沿いを歩く。これまで大通りやみつわ通り、嘉右衛門町通りしか歩かなかった。こんなに魅力的な、これぞ「ザ・蔵の街」的風景があったとは。絶句の後、感嘆の呻きが漏れる。

 旅情気分をたっぷり味わいながら5分ほど歩くと、目的地の<長栄軒>が見えてきた。町中華で昼メシである。前夜酒席をご一緒した栃木市在住T野氏がココの担々麺を絶賛していたから。

 11時半前。店内はご夫婦と思しき男女で切盛り。店内ほぼ満席だが、2席しかないカウンターの一席確保に成功。幸先に良い一日になりそうである。

 メニューはこれぞ「ザ・町中華」。初めての店ではオーソドックスなラーメン(チャーシューメン)と決めているのだが、T野絶賛の担々麺に。地元人の助言に従うことも我が法則の一つ。

 T野氏は担々麺の他にレバニラ炒めを勧めてきた。心が動くも、レバニラには私にとって(私でなくてもだろう)ライスかアルコールである。

 もう一品欲しい。餃子、ライスも気になるが、焼飯も捨てがたい。普通のラーメンには半チャーハンセットがあるものの、他の麺類には半チャー(またはミニカレー)はない。

 女将さんに半チャーの有無を聞いてみる。メニューにはないが作って下さるという。しかし、セットの半チャーよりも割高になると申し訳なさそうにおっしゃる。

 全く問題ない。初めての客なのにメニューにないものを頼もうとしているのだから。

 炒飯に付け合わせのスープの有無を尋ねられた。担々麺と同じ味ではないだろう。呑み比べも一興。迷わずお願いする。

 水を飲みつつぼんやり店内のTVに目をやっていると、まず半チャー降臨。目を剥いた。全然「半」じゃない。「全」である。スープはラーメンスープでなく、かきたま。トロミが優しい。

 担々麺降臨。青菜が眩しい。赤褐色一色でなく、グラデーションがある。期待が高まる。

 まずはスープ。重層、深淵、麻辣、濃厚、鋭利…。様々な味が絡み合いつつ、1つの味が立っている。私は普段あまり担々麺を頼まぬが、これは別格。我がラーメン人生における担々麺部門、圧倒的に1位に躍り出た。2位が思い出せないほどのぶっちぎりである。

 食べ進める…。量が減らない。私は汁系麺類と米系(白米除く)を頼んだ際は、まず伸びる前に麺を啜り切り、残ったスープで米系に挑む。しかし、麺が減らない。半チャーに移行できない。

 麺を啜り切った。すでに満腹、満足感で満たされている。半チャーをレンゲでガシっとリフト。口に運ぶ…。しっとり系の極北。

 焼飯はパラパラ系、しっとり系に好み別れるが、私はしっとり派。まさにラッキーストライクである。前述のごとく、半の量でない。これで通常の「全」を頼んでいたら…。

 もう入らない。満腹。しかし、担々麺スープがまだ3分の1ほど丼に残っている。レンゲですくう…。さらにすくう。止まらない。気づけば丼には汁1滴、ミンチ1片残っていなかった。

 極上の夢心地で店を出る。巴波川に沿って駅に向かう。蔵の街に屹立する町中華。カツカレーも気になった。旨い町中華のカレーは絶品であることは天地開闢からの真理。

 次回はいつ行こうか。レバニラか、ラーメンか、カツカレーか。〔次夜後編〕

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巴波川沿いは風情満点。

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栃木の、日本の宝。

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至福を通り越した絶頂。
posted by machi at 11:06| Comment(0) | 栃木県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする