買ってから数日後に人身事故で電車が全く動かなくなった車内で斜め読み。きっちり読んでいない。5秒ごとにページをめくったが。それで十分。
椎名先生には20歳の頃にハマり、30年近く読んできた。一番作品を読んだ作家だろうし、私の人生観に多大な影響を与えて下さった大先生。この作品はシリーズ第7弾でまだ続くようだが、この作品で私は完全に卒業。80年代の名作旅エッセイは読み直すかもしれないけれど。

■7月×日(火) 涙雨
豪雨のため多治見到着が1時間遅れの14時着。多治見の鰻屋の昼営業はほとんどが13時30分がラストオーダー。ゆえに鰻へ辿り着けず、ヒラクビル正面の食堂で味噌ラーメン&ライス。
旨かったが、何故か本を購入する気勢を削がれた。ルーティンが生み出すリズムは大切である。
■8月〇日(火) <Y月>+『ベルリンは晴れているか』
13時前に多治見着。O口氏と合流。向かった先は雀荘、インド料理、スナックなどが軒を連ねるカオスなパティオ建物の一角。
最初、全然入口が分からなかった。イチゲンはめちゃくちゃ入りにくい。鰻だけでなく日本料理(懐石?)もウリのようである。
「時価」というおっかない二文字に恐れおののきながらメニュー確認。一番ノーマルなうなぎ丼が3200円。うな重が4350円。特上うな重にしてやろうかと値段を見たらまさかの8400円。
ビビッてしまい、4900円の特上うな丼に。肝吸い&御飯大盛りにブラッシュアップ。
ブツ降臨。鰻、デカい。パリパリでジューシーで食べ応え抜群。肝吸いは肝も大きく、出汁が絶妙。この日の多治見は39度が最高気温。暑い8月を乗り切るには、鰻である。
鰻のお新香はその店によってさまざま。私は鰻に関しては奈良漬けが好適。この店は奈良漬けだった。わかっていらっしゃる。
特上うな重と特上うな丼の3500円の違いが気になるも、何となく聞ける雰囲気でもなく退散。
多治見鰻からの一冊。この日選んだのは『ベルリンは晴れているか』(深緑野分 ちくま文庫)。初めて読む作家先生に普段あまり手が伸びぬが、ヒラク本屋の魔法である。
第2次大戦中および終戦直後のドイツを舞台にした骨太な歴史ミステリ。小説3冊以上分の密度。年に1冊出会えるかどうかの大傑作。こんなすごい小説を日本人作家が書いていることの衝撃。
17歳の少女が主人公で、一人称による終戦直後を描いた本編と、ナチスが勃興し始めて終戦までを描いた三人称視点による幕間で構成。
途中、悲惨すぎて顔をしかめる描写ばかりだけど、ページをめくる手が止まらないヒラクビルに来なければ手にすることなかったであろう一冊。一生ものの読書経験だった。〔次夜その4〕


