2022年11月30日

第3051夜:鰻と本のシアワセな午後【多治見(岐阜)】(その3)

 多治見鰻昼メシ後のブックCaféセレクト。この日は『おれたちを齧るな!わしらは怪しい雑魚釣り隊』(椎名誠 小学館)。何もこの素敵な本屋で買わなくてもと思わぬでもない一冊。

 買ってから数日後に人身事故で電車が全く動かなくなった車内で斜め読み。きっちり読んでいない。5秒ごとにページをめくったが。それで十分。

 椎名先生には20歳の頃にハマり、30年近く読んできた。一番作品を読んだ作家だろうし、私の人生観に多大な影響を与えて下さった大先生。この作品はシリーズ第7弾でまだ続くようだが、この作品で私は完全に卒業。80年代の名作旅エッセイは読み直すかもしれないけれど。

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■7月×日(火) 涙雨

 豪雨のため多治見到着が1時間遅れの14時着。多治見の鰻屋の昼営業はほとんどが13時30分がラストオーダー。ゆえに鰻へ辿り着けず、ヒラクビル正面の食堂で味噌ラーメン&ライス。

 旨かったが、何故か本を購入する気勢を削がれた。ルーティンが生み出すリズムは大切である。

■8月〇日(火) <Y月>+『ベルリンは晴れているか』

 13時前に多治見着。O口氏と合流。向かった先は雀荘、インド料理、スナックなどが軒を連ねるカオスなパティオ建物の一角。

 最初、全然入口が分からなかった。イチゲンはめちゃくちゃ入りにくい。鰻だけでなく日本料理(懐石?)もウリのようである。

 「時価」というおっかない二文字に恐れおののきながらメニュー確認。一番ノーマルなうなぎ丼が3200円。うな重が4350円。特上うな重にしてやろうかと値段を見たらまさかの8400円。

 ビビッてしまい、4900円の特上うな丼に。肝吸い&御飯大盛りにブラッシュアップ。

 ブツ降臨。鰻、デカい。パリパリでジューシーで食べ応え抜群。肝吸いは肝も大きく、出汁が絶妙。この日の多治見は39度が最高気温。暑い8月を乗り切るには、鰻である。

 鰻のお新香はその店によってさまざま。私は鰻に関しては奈良漬けが好適。この店は奈良漬けだった。わかっていらっしゃる。

 特上うな重と特上うな丼の3500円の違いが気になるも、何となく聞ける雰囲気でもなく退散。

 多治見鰻からの一冊。この日選んだのは『ベルリンは晴れているか』(深緑野分 ちくま文庫)。初めて読む作家先生に普段あまり手が伸びぬが、ヒラク本屋の魔法である。

 第2次大戦中および終戦直後のドイツを舞台にした骨太な歴史ミステリ。小説3冊以上分の密度。年に1冊出会えるかどうかの大傑作。こんなすごい小説を日本人作家が書いていることの衝撃。

 17歳の少女が主人公で、一人称による終戦直後を描いた本編と、ナチスが勃興し始めて終戦までを描いた三人称視点による幕間で構成。

 途中、悲惨すぎて顔をしかめる描写ばかりだけど、ページをめくる手が止まらないヒラクビルに来なければ手にすることなかったであろう一冊。一生ものの読書経験だった。〔次夜その4〕

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2022年11月28日

第3050夜:鰻と本のシアワセな午後【多治見(岐阜)】(その2)

 珈琲は2種類。ワニブレンドなる新メニュー?を注文。珈琲がドリップされる間、本を物色。

 喫茶部門は若いカップルや女性グループ、子連れの若い主婦等で満席。皆さま上品にステキな午後を寛いでいる。ヨゴレが跋扈する街では見かけない品が漂っている。

 私がレジに手渡した本は『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』。

 北Q州商工会議所M渡アニキ推薦。舞台は北九州市の門司港にある「テンダネス」というコンビニらしい。本屋大賞受賞作家・町田そのこ先生原作の新潮文庫である。

 ブックカバーが多治見の街なかのマップでお店情報も楽しい。カバーだけでもじっくり楽しむことができる。余談ついでに、オリジナルのしおりの強度が頼もしく使いやすい。

 小説ならミステリかサスペンス、冒険しか読まぬ故、普段なら絶対に手が伸びぬジャンルだが…。

 面白かった。どこかのコンビニがモデルなのかもしれぬが、数年前から月1回ペースで門司港に通っているので作中の情景や地名、空気感が鮮明に分かる。

 老松公園が登場した時、公園を挟む門司中央市場とプラザ祇園も登場させてと心でツッこんだ。私が毎週のように北九州入りしているからより楽しめたのだろう。門司港、素敵な街である。

 どこか既視感もあったが、コンビニを舞台に描き切った良作。無性に玉子サンドが喰いたくなり、翌日に神戸の<イスズベーカリー>まで買いに行ったほど。

 私もコンビニ好きだけど、見方がさらに変わりそう。続編があるならぜひ読んでみたい。

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■7月△日(火) <澤中>+『おれたちを齧るな!わしらは怪しい雑魚釣り隊』

 この日も13時ちょうどに多治見着。世界最先端の地域商社「たじみDMO」O口COOは超多忙ゆえ、COO側近・M井氏と氏おススメの名店<澤中>へ。

 数ある多治見市内の鰻店。市民それぞれにお気に入りがあるという。M井氏は注文を取りに来た女将さんと親戚のように談笑されている。

 この店、来た事あったかなと思いきや、初だった。<澤千>と勘違いしていた。暖簾分けか何かだろうか。シーズンUで、初の鰻店。期待が否応にも高まる。

 鰻丼が小・中・並・大・特。味ではなく量の違いである。小が1600円、特でも3600円。税込表記に誠実と正義を感じる。鰻の魔力は、これを安いと感じさせることでもある。

 鰻重が丼特と同じ3600円。ひつまぶしは最高値の4000円だが、ここは名古屋ではなく多治見。視界に入らない。鰻御飯はどのようなメニューかお聞きすると、白飯と蒲焼という。夜に酒を呑めるときならアリだが、昼はタレ、鰻、白飯の三位一体のワシワシに敵わない。

 肝吸い、漬物、特上鰻丼。旨すぎて骨盤が割れそうに。サクサクした関西風だが、上品さも。関東系蒸しのフワフワと正対だが、鰻の焼き方一つとっても奥深すぎ。これだけ極上の鰻なのに、サービスやサイズ、その他を勘案すると、スーパーより遥かに安い。〔次夜その3〕

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(付記)
『コンビニ兄弟』、11月中旬に本屋さんで続編を発見。楽しみであります。
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2022年11月27日

第3049夜:鰻と本のシアワセな午後【多治見(岐阜)】(その1)

 昼鰻からの、ブックCafé。日本屈指に暑い・熱い・篤い・厚い街、多治見における我が午後の至福ルーティンである。

 2021年、多治見まちづくり且蜊テ「本気の出店!創業塾」という催事に6回お招き頂いた。その際、初回を除き2回目以降はO口たじみDMOのCOOと昼飯を打合せを兼ね会食することが定番に。

 行先はCOOにおまかせおまかせだが、私のリクエストは毎回「鰻」。多治見は日本有数の鰻処。多治見市のマス鰻コットキャラも鰻がモチーフである。

 2022年度シーズンUは全5回の多治見入り。Uも昼飯は鰻一択で揺るがない(はずだった)。

■7月〇日(火) <うな千>+『コンビニ兄弟』

 10ヶ月ぶりに多治見へ。O口COOの運転で向かった先は、シーズンTの一匹目に訪れた美濃最強の人気鰻屋<うな千>。13時を回り、かなりの豪雨だったためか順番待ちは1組。割とすぐに入れたが、広い店内は満席である。

 名古屋文化圏の多治見はひつまぶしの取扱店も数あれど、ここは岐阜県。そして多治見市。ひつまぶしは名古屋名物なので軽くスルーする。

 シーズンT訪問時は7切も入った特上のうな重だった。今回は「いそ丼」。メニューには3切とある。少々切ない。店員さんにお願いし、メニューにない「いそ丼」の特上(5切)にバージョンアップ。許認可を得た。シーズンU、幸先好調である。

 座敷でお茶を飲みつつ談笑していると、ブツがいそいそと降臨。鰻、ひつまぶしのように刻まれている。別添でわさびと刻み海苔が添えられている。サラダと吸物を従えて。

 いそ丼の正体は、刻み海苔と山葵。出汁の無いひつまぶしと言ってしまえばそれまでだが、どこか風格が漂っている。

 刻み海苔パラり。山葵を天頂に鎮座。山椒も少しパラリ。海苔の風味を弱めぬために控えめに。

 10か月ぶりの多治見鰻。流行る、荒ぶる心を静めるため、まずは吸物。より真摯に、鋭敏に鰻と向かい合うための大切なプレリュードである。しみじみと、旨い。

 そして、本丸へ。多治見の鰻はパリッと焼いた関西風。脂のノリも上品でサクサクとジューシー。そして、海苔と山葵がサッパリ感を演出。普通の山椒オンリーな鰻丼より好きかもしれない。牛丼チェーンでテイクアウトした鰻弁当に応用してもよさそうだ。

 途中、追いタレ。夢中で喰らいつく。重は上品、丼は野生。左手でガシっと掴み、右手の箸でワシワシ。消えかかっていた「オトコ」が鎌首をもたげる。

 多治見鰻な昼メシ後は、ヒラクビル内<喫茶わに>でホット珈琲を飲みながら、同じくビル内で隣接するセレクトブックショップ<ひらく本屋>で気に入った1冊を買い、パラパラすることが無上の多治見の午後の過ごし方。蕩けそうに眠くなるけど。〔次夜その2〕

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多治見最強クラスの超人気店。

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磯丼。旨くないわけがない。
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2022年11月23日

第3048夜:創業塾はジントニックで【多治見(岐阜)】

 ジントニック。カクテルイメージ皆無の私がバーに行けば必ず頼むカクテルである。20代の頃は馴染のバーへ行くと7、8杯は呑んでいた。ちなみに、ライムよりもレモンが好みである。

 ジントニックは居酒屋やスナックで呑むことはほぼない(記憶にない)。バー以外は触れ合う機会もない。しかし、それがCaféで、それも仕事中だったなら。

 たじみDMO主催創業塾2022の最終回。会場はアルコールも提供するヒラクビル1階<喫茶わに>。オンライン、リアルを含めたら最後の5回目は10名ほど参加があった。

 最終回は、かなり自由な座談会。私は聴き手というか、狂言回し。オンラインとリアルの受講生両方に話を振るという話芸がおかげさまで身に付いてきた。

 私には、十数年前からぜひ実現したいことがあった。酒を呑みながら人様の前で話芸をかますか、場をマワすことである。酒を呑んで単なる参加者として座っているだけではない。

 我がクライアントの風雲児に、最終回はぜひ呑みながらヤリたいと訴えていた。しかし、正式な許可を得る前に、風雲児は風雲急の所用で現場不在に。まあ、いいか。黙って夢を叶えよう。特に、補助金を頂いているモノでもないのだから、

 カウンターに何かアルコールを買いに行ったら、DMO飲食部門責任者のTヒラ嬢から開口一番。

 「ホッピーはありませんよ」。

 ホッピー呑みながら人様の前でシゴトしてたら、何か完全に終わっている気がする。「中(甲類焼酎)」とかお代わりしている場合でない。

 Tヒラ嬢おススメのジントニックに。ビールより爽やか。参加者にとってもレモンスカッシュか何かにしか見えないだろう。

 開始直前、ジントニック降臨。スタッフの男性が耳元で何かささやく。「お通しのサービスです」。「創業塾」に「お通し」。あってはならぬ禁断のマリアージュ。ジントニの横にポテサラが添えられている。思わず笑ってしまった。

 最終回、スタート。参加者の皆さまは私などよりも遥かにしっかりとしたビジョンをお持ち。こういった商売もあるのかと何度も首肯させられた。狂言回し役の私が最も勉強させて頂いた。

 ジントニックをチビチビやりながら進行していると、その姿がリモート画面にアップで映る。何故か私だけリモート呑み会にしか見えなくなる。

 終了後、風雲児不在の悲しみに暮れながら5人で超人気居酒屋<くっくる>へ。お通し6種盛の先制パンチでのっけからアガる。鰹たたき、高知級。何喰っても旨し。鰯フライ、白眉。半分をタルタル、半分をソースで。鰯にはソース。ムースーローも木耳の歯ごたえコリッコリ。

 風雲児のいない多治見の夜、私には初めての経験である。しかし、壁に風雲児あり。どこで話が漏れ伝わっているか、もしくは直接聞かれているか分からない。創業塾リモート参加の際も、要所で「俺は聞いているぞ」的な合図がサブリミナルに挟まれ、苦笑、微笑させられる。

 風雲児不在の穴はブラックホール級だけど、風雲児が育ててきた若手たちの成長っぷり、雨後の筍のように力強い。

 たじみDMOの皆さま、呑み会にほぼ毎回(呑み会にも)参加して下さったNオミさん&Rエちゃん、今年度もありがとうございました。

 多治見、この2年間で掛け値無く本当に大好きに。多治見出身でもない風雲児(長野県民)が多治見を愛し(たぶん)、多治見に愛されている(これは本当)の多治見愛への気持ちが分かる。多治見人、ヨソモノ(私を含む)にも限りなく優しい。

 もし、また機会を創業塾の狂言回しをさせて頂けるなら、今度はジントニックをお代わりしてみよう。

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見た目は普通の座談会。

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私の前にはジントニック。

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お通しは5種盛。

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鰹の前ではアヅマも笑顔。

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アジフライ、無性に食べたい夜がある。

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風雲児不在に号泣。
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2022年11月21日

第3054夜:ホットとホット【佐野(栃木)】

 青竹打ち。何かの必殺技のようだが、その通り。必殺技である。ただし技を繰り出すのは人間だが、掛ける相手はたぶん小麦粉。佐野ラーメンの麺を打つ奥義である(らしい)。

 盛夏のお昼時、両毛線佐野駅着。市役所方面へ向かう。ミッション開始まで約80分。佐野駅前にはチェーン系の喫茶店がない(私は見つけられていない)。

 佐野市役所の掛け値なしに真ん前の<青竹打ち 麺屋 翔稀>がオープン中だった。前回は入れなかったから嬉しさ増し増し。「無化調佐野らーめん」と店頭に大きく貼られている。

 初ダイブ。店内は独りの中年男性が一心不乱に啜っている。券売機の前に対座。後ろから並ばれるプレッシャーなく、余裕を持って向き合える。

 定番が佐野ラーメン800円。コク旨佐野ラーメン850円、佐野白湯ラーメン890円と続く。4番バッターが「チャーシューメン」1050円。‘人気1’とある。迷わずナンバーワンを指名。

 カウンターに座り、冷たい水を飲みながらメニューをじっくり吟味する。

 麺類は他に生姜ラーメン、唐揚ラーメン、辛ネギラーメン、坦々つけ麺、屋号を冠した辛麺もある。ランチセット(980円)の中身も気になる。B5(1100円)とは何ぞや。奥深し、佐野。

 手造り餃子も3ヶから選べる。各種トッピングも豊富。屋号を冠したカレー丼(350円)は‘店主おすすめ’とある。これは、次回の愉しみに。

 うま味調味料を一切使わない手造りっぷり。根葉を多く使用したスープは優しい味わいだそうだ。数十年、化学調味料で鍛え上げられた我がバカ舌にその繊細が理解できるか。

 ブツ降臨。目を見開いた。スープの色がかなり濃い。私の知る佐野ラーメン、スープは透き通ったイメージ。しかし、麺は平打ちのちぢれ。平打ちちぢれが佐野の定義か。大きなチャーシュー4枚の照りもセクシー。人気ナンバーワンに相応しい王者の風格が漂っている。

 胡椒パラリ。まずはスープ‥‥‥。濃い。なのに、優しい。スープを構成する味の要素ひとつひとつのキャラが立っている。ソロ演技が、いつのまにかアンサンブルに。

 麺はツルツルのモチモチ。スープの絡みも良い。チャーシューは味が濃く、ライスが欲しくなる絶品。これだけブロックで買って帰りたい。

 この日の佐野は38度。雲一つない炎暑。涼しい店内で汗をかきつつ旨しラーメンを啜る。夏バテもコロナも近づけない盤石の魔法陣。気づけば汁1滴残らない熊啜だった。

 ミッション開始までまだ約50分。ラーメン店のすぐ近くに喫茶店<こんふぉーと>が。市役所からも歩いて数十秒。ランチタイムだったが、ホットコーヒーだけでもよいかを尋ねた上で店内へ。店主ご夫妻(たぶん)、笑顔でご快諾。接客も素晴らしい。

 摂氏38度だろうが、私はホット。ラーメンも、珈琲も。涼しい店内で熱く香ばしいブレンドのホット。人心地ついた。

 すぐ目の前の市役所での集合時間まで20分。佐野で昼飯はこれで3度目。何となく、佐野の昼の楽しみ方、くつろぎ方の軍略が見えてきた。快適さがマシマシになる。次の軍略は、いまだ経験のない夜の佐野のホットな攻略である。

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市役所の真ん前。

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人気ナンバーワン。

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日本屈指に暑い街。真夏もホットで。
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