ある冬の午後。雪が積もっていない七日町通りをブラブラと神明方面へ歩く。いい街並みである。プランプラン歩いていると、小腹が減ってきた。
この日は朝食として春日部駅ホームの立ち食いラーメンを啜っていた。ソースカツ丼や会津バーガーにも途中惹かれたが、「喜多方」という字面が視界に入ればスルー出来ない。
こんな時間(たしか15時ごろ)でも通し営業中だった<空山>というラーメン店へ飛び込む。店内も外観も激シブではなく、おしゃれなcaféの雰囲気だ。
このテのお店は一瞬、ハズレかと思わせる。ラーメン好きなら首肯する感覚だろう。しかし地元民と思しきオヤジ2人が店内で一心不乱に啜っている。期待が持てそうだ。
着座してメニューをさらり鑑賞。バリエーション豊富である。醤油系が「空」、味噌系が「山」、塩系が「雲」、魚介系が「時雨」。
少し面倒な雰囲気だが、おそらく定番かつ王道っぽい「空」の肉盛(税込910円)を召還。他にも期間限定系などがあった。
店内を見渡す。「古き良き昭和の喜多方ラーメンここに進化」というポスターが。テイクアウト商品も。たまたま七日町通りで開いていたので予備知識なく飛び込んだが、かなりの人気店なのかもしれない。
程なくしてブツ降臨。思わず生唾を呑む。肉たっぷりである。胡椒をパラリし、まずはスープ。
……。涙がこぼれそうになった。会津の魂・亀ヶ岡城(未だ未踏ですが)が震えだした。新選組が脳内を駆け抜けた。スッキリしているのに、深海1万b級の底知れない奥深さ。
麺はモチモチの縮れ太麺。ツルツルと唇を統べる食感が官能を極めている。チャーシューは噛みしめるほどに旨味が増す。脂少な目(ロース)も私にとって好ポイント。葱の爽やかさも嬉しい。
気づけばあっという間にすべて滅失。眼前には洗い立てのような丼だけ。旨いを通り越して、気持ちいい。魂が鳴動しながら店を出て、神明通りを目指した。
それから6時間後。神明通り商店街ミッション全6回が終了。理事長のお店<ハジャイ>でかに鍋、〆の雑炊を満喫しながら黒生ビール、熱燗を鯨飲していた。談笑の中で、私が遅昼に<空山>で啜った旨を報告した。
地元民たちは笑顔で頷いている。地元民にとっても評判のお店らしい。喜多方で創業したらしいが瞬く間に規模を拡張しているという。
予備知識なく入った私のラーメン嗅覚もまだそれほど衰えていないのかもしれない。

壮大なスケールの屋号。

「空」の肉盛。

世界一入り難いコミュニティカフェ<ハジャイ>にて。


かに鍋。野菜も旨し。

雑炊。感涙。