2020年06月19日

第2469夜:東武ラーメンの流儀【春日部(埼玉)】

 東武ラーメン。東武春日部駅7・8番ホーム限定で屹立する立ち喰いラーメン店である。ラーメン好き、屋外飲食好き、駅そば好きにはこれだけで心躍る一文である。

 ある寒い朝。<ホテルカスカベ>をチェックアウトし春日部駅へ。電車まで15分ほどある。

 春日部駅周辺は駅構内も含め立ち蕎麦屋が見当たらない。ファストフードは林立しているものの、さっと立ったまま蕎麦を手繰りたい二日酔いの朝もある。鯨飲した勢いで出汁の効いた汁が啜りたい夜もある。ヒットしたのは冒頭の東武ラーメンのみ。

 私は3・4番ホームから発つのだが、いったんスーツケースを苦闘しながら7・8番ホームへ。券売機の前に立つ。

 ……。思わず目を剥いた。完全なラーメン店だった。立ち蕎麦屋がついでにラーメンも提供しているのとは気合が違う。そば、うどんなし。ラーメン一本勝負である。思わず笑みが漏れる。好敵手を目の前に打ち震える気分といおうか。

 メニューが豊富である。定番の「ラーメン」が500円。醤油と塩が選べる。これをベースに大盛、ネギ、玉子、メンマ、チャーシュー、野菜、ワンタンと組み合わせれば無限のバリエーションが広がる。宇宙が広がる。コロッケや天ぷらまであるあたりに蕎麦の名残も感じさせる。

 つけ麺(あつ・冷や)、冷やし中華、冷やしザルラーメンまであった。冷やし系は「売切」ランプ点灯中なので夏期限定なのだろう。

 ここはド定番の「ラーメン(醤油)」。ボックスには私(45歳)より30歳以上御年輩と思しき手慣れた雰囲気の熟女3名が切り盛り。わくわくしながら待つ。ラーメンはそばより幾分ゆで時間が長いものである。

 ブツを受け取る。胡椒をパラリし、まずはスープ。……。ユネスコが絶滅危惧種指定を検討している昔懐かしい鶏ガラ醤油。味は平たんではなく重層。濃い目だがスッキリ。これは朝昼夜いつどんなコンディションで啜っても最高クラスに旨い万人向けである。

 麺も黄色い縮れ細麺。フニャフニャではなくコシがある。チャーシューも大きく柔らかい。メンマ、ナルト、海苔、ネギが完璧な五芒星を描く。究極の様式美である。

 麺1本、汁1滴残さず啜り切った。大満足を遥かに超える、ホームの快楽と至福。これはありとあらゆる無限のバージョンを試さねば心残りと悔いに溺れる。おそらく、春日部市民のソウルフードのひとつかもしれない。

 次回はコロッケか、天ぷらか。ベースは塩にしようか。朝早くから夜遅くまで開いているのも頼もしい。駅そばも嬉しいけれど、駅ラーメンは嬉しさが確変していくようである。

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Yネスコは世界遺産に登録すべき。
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そば、うどんのない鮮烈さ。

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王道にして完成形。

(付記)
ちょうど1週間前(2020年6月12日)、大宮駅京浜東北線ホームの立ち蕎麦屋さんでチャーシューメン大盛にコロッケ&かき揚げをトッピング。……。どちらの良さも壮絶に殺し合い。今回の最後の2行、懲りたので実践しないと思います。
posted by machi at 17:34| Comment(0) | 埼玉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月17日

第2468夜:住みやすい街の流儀【春日部(埼玉)】

 フォーカスグループインタビュー。ある冬の午後と夕方。春日部駅東口<三輪興産>1階で40〜50代主婦層、20〜30代主婦層を対象としたグループヒアリングを実施した。

 東口商店街活性化に向けて様々なお話をお聞かせ頂いた。中でも、生粋の春日部人と春日部に嫁いでこられた方、子育て真っ最中の母親と子供も独立し落ち着いてきた方とのギャップが興味深い。随所に春日部をディスりながらも春日部愛を感じさせる。

 年齢層に関係なく主婦層は大型店を頻繁に利用。食料品以外もショッピングセンター内の専門店を利用する傾向にある。一方、埼玉都民ゆえか日中はお年寄りが多く、買い物に必死感が出過ぎて悲壮感が溢れているという意見も。

 同様に市内の交通の不便さを指摘(特に駅構内、東口側と西口側の相互通行など)。一方で住むことに対しては便利(特に子供連れ家族)であるという認識で共通。給食も充実しているらしい。

 若年主婦層は子供を連れていきやすい点が店選びのポイント。子育てがひと段落した年輩主婦は値段だけでなくポイントの付与や一定以上の品質も重視。一通りのモノは揃うらしい。

 年齢層に関係なく、子供や孫への親切な対応およびサービスを強化するとリピーター獲得強化に直結するようだ。

 年輩主婦層でも「味や値段」「ポイントの付与」だけでなく「キャッシュレス対応」も大切であるという。「毎週どこかでイベントをやっている」点も評価されている。

 「都心への近さも」魅力。「春日部から600円で都心へ行けることは『神』」らしい。「まあまあ田舎でまあまあ都会」という「あか抜けていない」雰囲気も春日部の魅力らしく、「気取らない雰囲気」が居心地の良さを高めているらしい。「帰ると落ち着く。住んでいたい街」とのこと。

 印象深かったのが「引っ越してきた人にはなじみやすい」。「友達がたくさんできる」らしい。埼玉都民、つまり「転入者が多いので、街としてフレンドリーでウエルカムでないと街がなりたたない」という。いい街ではないか。

 嬉しいご意見もあった。「商店街では未だにおじいちゃんおばあちゃんが店をやっているので子供に見せてあげたい」。商店街の新たな可能性といえる。

 これからを踏まえて終了後さらに会議を実施。新たな方向性が何となくだが見えていた。

 濃密だったトリプルヘッダー終了後、5人で東口の人気チャイニーズレストラン<けいらく>さんへ。何を喰っても旨しの中で、私は特に餃子と焼豚がお気に入り。

ハイボールを重ねながら、こんなステキな店が溢れている春日部は埼玉屈指に住みやすくフレンドリーな街であるのかもしれない。

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子育てがひと段落した皆さまと。

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子育て真っ最中の皆さまと。

(付記)
上記の内容は「ビフォーコロナ」。「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」へ移行しつつある昨今、同じ質問をしても答えは全く異なるかもしれない。
posted by machi at 13:17| Comment(0) | 埼玉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月16日

第2467夜:からあげ定食の流儀【春日部(埼玉)】

 唐揚。年間何ヶ口に入れ楽しんでいるかどうか数え切れぬほど王道中の王道料理である。鶏肉が絶対にダメという御仁以外、全世界の心をつかんでいるはずである。

 私も愛してやまぬ唐揚だが、昼はめったに口にしない。せいぜい何かの定食の脇役としての付いてくるブツを口に運ぶ程度。テンションもあまり上がらない。

 何故なら私にとって、唐揚は「夜」の「酒」の友だから。ライスと一緒に口にすることなど年に1度もないだろう。駅弁で唐揚系を捕獲する程度か。店内ではほとんど記憶がない。

 ある正月があけてお屠蘇気分もすっかり抜けきった午後。4日ぶりに春日部駅東口へ。ミッション待ち合わせ時間まで50分。普段なら迷わずラーメンである。それもめったにない、ほとんどのラーメン屋が昼休憩に入ってしまう15時前。チャンスである。

 ところがネットで検索すると、あまり東口駅前にラーメン屋がない。離れているか、埼玉県内ではどんな駅前にもありそうなH高屋などチェーンばかり。西口は遠回りせねばならず面倒だ。

 駅前に<KFC>が。それこそ日本中にあるが、珈琲呑みながら何か腹に入れるか。

 トボトボ向かっていると<からあげ日本一>と書かれた看板が。この店の前は何度も通っているが気に留めなかった。理由は上記の通り。昼は選択外、夜はすでに閉まっているからである。 KFCも好きだが、せっかくなら「日本一」の唐揚とやらを口にしよう。

 店内へ飛び込む。外からは気づかなかったが、かなり奥行きがあり席数もある。店頭ではテイクアウト商品が並べられている。

 メニューを観る。……。唐揚一択だった。味付けやトッピングの違いはあれど、唐揚のみ。焼鳥もあるようだが、明らかに唐揚押しである。

 タルタルソース掛けに心惹かれたが‘定番’と唄われている「からあげ定食」に。税込781円。内税表示に誠実を感じさせる。

 卓上調味料は七味、ソース、ドレッシング、そして食べ放題の漬物。塩も醤油もない。果たしてライスに合うのだろうか。

 この世に生まれて45年6カ月。もしかすると5回目ぐらいの「からあげ定食」。前回を全く覚えていない。初めてということはなかろうが、妙なドキドキ感がある。私の中で唐揚とライスはあまり合わない気がしているからである。貴重な一食を絶望してしまう恐れに震える。

 武者震いを抑えるべくトイレで小用を足して戻ってきたら、カウンターにいきなり置かれていた。思わず度肝抜かれる。これもあまりないシチュエーションだ。

 唐揚は4ヶ。でかい。キャベツもライスも量多め。まずは味噌汁。……。とろろ昆布が入っていた。これがツルリと滑り込みすさまじい熱さ。
唐揚にかぶりつく。……。日本一かと問われれば味は人の好みでそれぞれとしか答えようのない味。しかし何もつけずともかけずとも十分に旨い。

 2ヶ目はマヨネーズ。マヨネーズを絡めるとグッとご飯との相性が華やかに。漬物を齧りながら口内をさっぱりさせ、3ヶ目、4ヶ目と手綱を緩めない。

 店内では割と若い主婦が一人で満喫していたり、学生グループが青春いっぱいに満喫していたり。春日部の昼間は平和である。

 割と満足して店を出る。待ち合わせ時間までまだ30分ある。‘からあげ日本一’から2、3軒隣の<KFC>へ珈琲&PCのために。チキンフィレサンドを習慣でうっかり頼みそうになった。

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posted by machi at 07:09| Comment(0) | 埼玉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月15日

第2466夜:第4の麺択肢【宮古(岩手)】

 たぶん本州最東端の立ち喰い駅そば。それは岩手県宮古市の宮古駅(JR・三鉄)である。キュッと魚介の旨味が効いたキリっとした出汁が二日酔いに最高の薬膳となる。

 後日知ったがいろいろとあったらしい2019年「いわて絆まつりin宮古」の前夜。宮古市末広町商店街ミッション終了後、深夜2時まで3軒ハシゴしながら鯨飲。翌朝は当然のごとくこってりとした二日酔いである。

 ホテルをチェックアウト。時間は朝10時過ぎ。こんな朝昼兼用は魚介の効いた宮古ラーメン一択である。他の選択肢が思い浮かばない。しかし、宮古のラーメン店の多くが11時オープン。バス乗車時間が11時過ぎ。残念ながら時間が合わない。

 宮古駅そばにするべ。この店は何故か「にゅうめん(そうめん)」があり、うどん、そばに続く第3の選択肢を提供してくれる。これまで何度啜ってきたか分からない。ある意味で宮古のソウルフードの一つなのかもしれない。

 2019年3月下旬。宮古駅は大きな変革があった。三鉄とJRは同棲し始めた。ホームや切符売り場も共通に。ただし切符売り場は三鉄とJRが別々。このあたりの縦割り感が生みの苦しみを感じさせる。

 宮古駅そばはJRの管轄だっただろうが、そもそも本数が少ないため営業時間も異様に短かった。いつ何時でも啜れるモノでもなかった。

 前置きが長くなったが、バス乗車前に突撃すると、うどん、そば、にゅうめん(そうめん)に続く第4の選択肢が出現していた。「宮古ラーメン」(480円)である。「宮古ラーメン」のノボリが頼もしい。

 宮古ラーメン、三陸鉄道全線開通を記念し定番メニュー化したらしい。定番三銃士よりプラス30秒ほど余分に待ち、ブツを受けとる。プ〜ンと煮干し風味のスープが香る。

 胡椒をパラリし、まずはスープ。……。毛細血管が喜んでいる。五臓六腑に染み込む。血液がスープになる。ちぢれ気味の麺にスープが絡む。
啜りこむ。……。官能の喉ごし。チャーシューも大きくて頼もしい。480円の楽園に浸りながら、麺1本、スープ1滴残さず羆啜。

 宮古ラーメンは(宮古市内の)スーパーで買うことができる。メーカーはハニー様と小笠原様の二強。私はいつも<ミヤビル>か<玉木屋>で大量捕獲し、自宅で楽しんだり宮古ラーメン好きに発送している。

 ふと気づいたが<宮古駅そば>、営業時間もグッと延長し18時までに。そばもにゅうめんもステキ。本州最東端の立ち蕎麦、ぜひお啜りあれ。ラーメンもね。

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三陸の宝物。

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頼まずにいられない。

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二日酔いの早朝に無敵。
posted by machi at 11:55| Comment(0) | 岩手県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月11日

第2465夜:六本木の遥か斜め上【鹿沼(栃木)】

 <夢や>。鹿沼市のド中心街とはいえないが、一応路面店にある居酒屋である。……。一概に居酒屋という単純な言葉で括ってしまってよいが自問してしまう世界観に満ちている。

 ある1月の日曜の夜。JR鹿沼駅近くの<中華料理 嘉蒂>で旨し中華と旨し酒を7人でたっぷり堪能し、いざ2軒目という運びに。しかし、日曜日。時間は20時半ごろとはいえ開いている店があるのだろうか。カラオケボックスだろうか。

 鹿沼ではほぼ常に一軒目から最後まで<パブリックハウス六本木>。一度だけ<山いち>からの<六本木>があったか。

 Ⅿ子氏から2軒目は「かなりディープですよ」と代行便乗して連れて行って頂いたのが冒頭の<夢や>。最初、どこに店があるか分からなかった。

 駐車スペースの奥まったところに入口らしき風景が。……。全然気づかない。看板には「お気楽にどうぞ」とあるが1000%お気楽に入れない店構え。そもそも、暗い。本当に開いているとは信じがたい漆黒っぷりだ。

 店内はカラオケがメインに据えられている居酒屋。L字カウンターと思しきゾーンが存在しているが、完全に物置に。

 ママは169pの私より遥かに背が高い。初期の頃の『北斗の拳』にこのようなシーンがあったことを何故か思い出す。

 店内には先客がお一人。ガッツ石M氏の初恋の相手だったらしい焼きそば屋のママさんという。……。ここは異世界か。情報量が多すぎて混乱する。

 トイレに行こうとしたら、奥からいったん店に出ないといけない。裏口からトイレまでがまるでロールプレイングゲーム。真っ暗で見えない。私は出っ腹が邪魔で自由に動けない。

 <嘉蒂>でテイクアウトした焼きそばやママの手料理をツマミに談笑する。ママが呑んで呑んでとサービスして下さった結構プレミアムな赤ワインなどを私一人で1.5本空けてしまう。

 7人で4時間ほどカラオケ。ママのダンスというか踊りが独特。途中、ママからとろろ卵ごはんと味噌汁が。これがこだわりの味付け。落涙の旨さ。

 ママと少しお話しする。路面店で30年以上営業されているそうだが、これまでイチゲンで入ってきた者が一人もいないという。あまりにも濃すぎる世界観。鹿沼に<六本木>より濃い店はないと油断していた。ディープとは聞かされていたが、想像よりも遥かに斜め上を行く。

 A子氏とⅯ子氏以外、他の同行氏たちもこの店は初めてだったらしい。お会計も驚愕驚天動地の安さだった。

 度肝抜かれながらタクシーで宇都宮の定宿へ。ちなみにタクシー代、ママのお店の一人当たりの割り勘料金の3.1倍だった。

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イチゲンでとても入れない店構え。

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この写真では分かりにくいが、店内は独特のレイアウト。

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熱唱。

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絶品。
posted by machi at 09:28| Comment(0) | 栃木県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする