暑くも寒くもない最高気温なある夏の12時半。3度目の入国である。最も昼食で込み合う時間帯だ。共和国以外の普通の飲食店の方が混んでいる気がしないでもないが、国内も半分ぐらいの店がプチ行列状態である。未踏だった2州の1つ<初代>へ。小樽が本拠であるらしい。
メニューを観る。味噌、塩、しょうゆのラインナップが揃っている。しかし大切なのは、その順番である。この店は味噌・醤油・塩の順に表記されている。醤油や塩と比べて味噌はすべて40円割高だが、これはラーメン屋あるある。
店名を関したラーメンか、チャーシューメンか、それともシンプルにいくか……。
私はこの日に北海道入りし、これから富良野へ向かう。そして翌日は埼玉(春日部)、さらに明後日は沖縄(宜野湾など)。景気づけとスタミナ付けを併せ持つ最高値メニュー「超絶焼豚盛り 新味噌」を写真指名。豊満なビジュアルである。値段も1310円と最高級。
メニューにおける位置もいわゆる「左上」で、これはアイドルグループのセンターに等しきエースポジション。人気ナンバーワンの指名に成功だ。
ぼんやりと店内を見渡す。サラリーマンが多数だが、観光客風もチラチラ。
私の右隣に座る少女が若くて美人のお母さんに笑顔を向けながら「おいしいねぇ〜」。その様子があまりにも微笑ましい。私もつられて笑いそうになるが、私が一人で笑えば単なる不気味な変質者オヤジだ。
ブツが降臨した。……。一瞬、フリーズした。私が頼んだメニューではない。チャーシューがほとんど見えない。違いますよ、と声を発する前に店員さんから「焼豚盛りで〜す」。
……。間違えてなかったのか。あまりにもビジュアルが違い過ぎる。待合室でワクワクしてたら、奥から出てきたのは写真とは別人。いや、風雪を重ねてかなりスリムな枯淡具合が染み出てきたのだろう。そう思うことにした。
釈然としないが、肝心なのは味である。胡椒をパラリし、まずはスープ。……。かなり好きな部類である。濃厚すぎないが、しっかりと深みとコクがある。見事なテクニックを感じさせる。麺も黄色くかん水が効いていてスープとの相性も良い。半熟卵の黄身も眩しい。
チャーシューはスープの下からチョコチョコと湧いてきた。しかし、私の左隣に座る男が注文したシンプルな味噌ラーメン(890円)の方がチャーシューが大きい。
写真と実物とのギャップ割合。実物が写真に勝る割合は300対1である。あくまでも私(アヅマ・男性・神戸在住・45歳)の経験値ですが。

写真指名。

まるで別人(別麺)。2019年8月実食。
■4国目「みその」:炙り豚盛り味噌らーめん+手稲ライス
令和元年12月上旬の正午前。何とか令和元年中に4か国入国を果たす。トリはこの店。かなりの賑わいっぷりだ。
一番人気が「炙り豚盛り味噌らーめん+半熟玉子」という。メニュー再度読み込むと「手稲ライス」が視界に。メニュー写真は単なる目玉焼ライスだが、「手稲」という道民にしかほぼ伝わらない地名にグっと来た。目玉焼と半熟玉子がカブるので、シンプルな「炙り豚盛り味噌」召還。
紙エプロンの丈夫なタイプが芸が細かい。しっかりと装着し臨戦態勢確立。ブツ降臨。……。期待を裏切らない、写真指名通りのビジュアル。卓上のモヤシナムル食べ放題も心憎い。
胡椒をパラリし、まずはスープ。……。共和国の中で、住むならこの国と決めた。生姜が仄かに香るが、コシのある重厚、濃厚なのにキレがあるスープが抜群。ちぢれ麺とのカラミも官能的。
炙り豚はチャーシューより味が染み、食べやすい。ラーメンとの相性も良い。メンマもたっぷり。
麺を啜り終え、手稲ライスへ。黄身を潰し、かきこもうとした。……。箸が何かにぶつかった。目玉焼をずらす。……。チャーシューが1枚敷かれていた。これほどサプライズで嬉しい岩盤は他の追従を許さない。ライス部分も白飯ではなく醤油味のかつお節ご飯。不味いわけなし。
スープを味噌汁代わりに、焼豚目玉焼鰹節醤油飯に喰らいつく。どのあたりが「手稲」なのかは謎に包まれたままだが、4国目を完全制覇した。米粒1つ、汁1滴残っていなかった。
残りの4か国は新千歳空港内「北海道ラーメン道場」で実食済である。しかし、醤油、塩をはじめどの国もバリエーション豊富。共和国をいったん抜け、再び足を踏み入れた時は残り4か国を歴訪することを誓う。雪が舞い散る中、札幌同じビルの地下の札幌バスターミナルへ向かった。

2019年12月実食。