立ち蕎麦系でラーメンを取り扱っている店では可能である。または稀に存在している24時間営業のラーメン屋か。空港内のラーメン店なら朝9時か10時頃から啜れるかもしれない。
そのような特殊環境ではなく、普通に地域に根差し早朝から営業しているラーメン店。それもたまたまの一軒ではなく、複数が朝7時ごろから営業している町がある。聖地・喜多方である。
喜多方市は福島県会津地方に位置。2017年から会津地方に御縁を頂き、月1回ペースで足を運んできた。会津若松駅から喜多方行きの普通列車が走っている。しかし、本数はかなり少ない。
私は2010年代から喜多方ラーメンにハマってきた。愛読コミック『めしばな刑事タチバナ』にて全国で展開している<坂内>を知ってから。今では視界に入ると飛び込まずにいられない。
これまで<坂内>は天王寺店(大阪)、御油店(愛知)、川口店(埼玉)、蒲田店(東京)などで熊啜してきた。<坂内>以外にも郡山駅構内のフードコートで、会津若松駅から徒歩圏内の数店で喜多方と対峙してきた。しかし、聖地に足を運んだことがなかった。
会津若松での呑み会のたび、神明通り商店街や市役所の皆さまに喜多方ラーメンや会津ソースカツ丼の実食経験を話し、また地元人おすすめの店をご教授頂いていた。しかし、足を運べていなかった。
令和元年師走の夜。日本一入りにくいコミュニティカフェ<ハジャイ>で鮟鱇鍋をつつきながら神明通り商店街の皆さまと忘年会。その最中、隣に座るA津若松市役所のO村氏が聖地・喜多方での朝ラーを誘って下さった。朝7時にホテルまで迎えに来て下さるという。
歓喜した。以降は鯨飲だけ繰り返し、〆の雑炊も軽く一杯だけ。2軒目にも立ち寄らず深夜の麺類もスルー。翌日の朝ラーに備え、深夜24時半定宿チェックイン。万全の体調を整えた。
翌朝。テンション上がり5時半に目覚める。ユニットバスで身を清め、7時にホテルを出てO村氏と合流。氏の運転で喜多方へ向かう。
前夜は夜霧だったが、今朝は朝霧。しかも、冬。最高の朝ラーシチュエーションである。
喜多方市の人口は4万人程度らしいが、ラーメン店が50店舗ほどあるそうだ。その中で早朝(朝7時頃)から開いている店は15店舗ほど屹立しているという。土日は観光客も多いそうだが、平日は主に地元人が朝ラー。まさに聖地に相応しき生活への根付き感である。
20分ほどで喜多方市内に。ロードサイド沿いにラーメン店が並ぶ。心ときめく光景である。さらに路地に入っていくと、暖簾が出ている店が増えてきた。
聖地の中の聖地<坂内>は定休日だった。しかし地元評価で二分する人気という<まこと>へ。昭和の食堂感満載。年配の先客が朝ラーされている。店内は喫煙フルOKという剛毅さだ。
壁面メニューを拝見。いちいち「喜多方ラーメン」と唄っていないところが本場感である。中華そば、チャーシューメンがそれぞれ大盛可能。
会津地方らしくソースカツ丼もメニュー化されているが、「煮込みカツ丼」もある。ソースで煮込んでいるのだろうか。さらにカツライスまである。かなり奥深そうである(後日知ったが、会津では普通のカツ丼のことを「煮込みカツ丼」というらしい)。
旨しラーメンとの出会いは一期一会。しかし、朝7時半である。こんな時間に固形物を腹に入れることはめったになく、習慣ないゆえあまり空腹でもない。恋焦がれた喜多方の朝ラー……。
一瞬の迷いの後、「大盛チャーシューメン」召還を決意。もう、引き返せない。
談笑していると神が降臨。……。旨そうというレベルを超えた完璧な美が眼前に現れた。生唾を呑む。小さな歓声が漏れる。胡椒をほんのわずかパラリし、2年越しの宿願を叶える時が来た。
まずはスープ。……。頭長に落雷。肛門に鉄杭。全身を壮絶な太い感動が貫いた。DNAレベルで歓びが二重螺旋をさらにクネらせている。麺は太めのちぢれでモチモチのツルツル。スープとのカラミも国宝級。たっぷりチャーシューもあっさりシンプルだが旨味の濃いモモ肉で私好み。
豪快な葱が泳ぐ油膜煌めく黄金色のスープは飲み干すほどに味わいが増す。気づけば麺1本、汁1滴、葱1片滅失。朝の8時前とは思えぬ満ち足りた多幸感に包まれた。
大満足の二乗で店を出る。朝霧は消え、氷雨に変わっていた。氷雨すら私には熱い。聖地の中の聖地<坂内>へも巡礼したいが、O村氏曰く最高に旨い塩ラーメンも存在しているという。
麺ドライブを共にする麺友。北九州市と宮古市と沖縄市に、会津若松市が旅の仲間に加わった。次回は塩ラーメンか、聖地巡礼か、会津若松市内の実力店か。心乱れる師走の朝である。

聖地は定休日。

地元の超人気店へ。

昭和感満載。

会津若松の麺友と。

朝7時半の天国。