ある氷点下の日の昼。予定より早く郡山に到着したため、数年ぶりに駅前のアーケード街をブラブラ。空腹を覚えたので<くさび>というラーメン屋へ適当に飛び込む。異様にメニューが豊富。学割が特に充実していているが私はオッサンゆえに恩恵に値せず。店内の半分は学生である。
数あるメニューの中で期間限定という「にぼ味噌豚骨チャーシューメン」のランチ割引だった半チャーハン(焼飯)も召還。ラーメンはエグいほどの魚粉。太い縮れに良く絡む。チャーハンもかなりのハイレベル。チャーハンは店の味、焼めしは家庭の味という住み分けが私にはある。
会津若松駅で稲M氏と合流し、氏の運転で柳津へ。<清流の宿かわち>へチェックインし、無料ルームサービスの珈琲を頂き一服。まずは露天風呂に浸かる。最高の気持ち良さ。役得である。
外はみぞれ雪だが、それほど寒くない。建物が暖かいからどこも快適だ。2017年10月から続いた柳津ミッション最終回終了後、21時から<滝のや>で懇親会。
豪華なオードブルが並ぶ。鍋も気合がこもっている。ピザも旨し。特に鮭が入ったおにぎりが塩加減も絶妙で妙に旨い。ビールの後は会津の地酒に切り替え、凄まじいピッチで鯨飲。おにぎりを齧りながらグビリと呷る冷酒は野趣あふれ、意外なほどの旨さに昇華する。
柳津への来町者(主に観光客)にとって、「温泉」が最も関心が高い。「あわまんじゅう」などがそれに続くが、売り出そうとしている柳津ソースカツ丼はまだまだ伸びる余地だらけだ。
柳津に1年3か月の間位に平均月1回ペースで通った。神戸市民150万人の中で最も柳津に詳しい自負もある。そんな私でも毎回驚かされることがある。今回も最後に目を剥いた。
私が目を細め口角を上げながら齧りついているおにぎり、柳津では「焼めし」というらしい。焼きおにぎりなら1000歩譲って理解に努めるが、少しも焼いていないノーマルタイプを「焼めし」とはスルー出来ない情報である。厳密には、ご飯を真ん丸に丸めてすべて海苔で隙間なく覆いつくしたものらしいが、定義もイマイチあやふやな雰囲気である。
予備知識なく柳津の食堂に飛び込み、メニューを見て「焼めし」を注文して「おにぎり」が出てきたら、腰を抜かす。
「いや、ワシが頼んだんは焼めしや」
「だから、焼めしだべや」
永遠に噛み合わない会話が繰り返されることだろう。ちなみに神戸大倉山の大盛飯の店<こふじ>には「チャーハン」と「焼飯」が別々にある。
23時ごろ<かわち>まで送ってもらう。大浴場入浴時間は23時までだが、旅館の好意でゆっくりと浸からせて頂く。湯上りに冷たい清水を呑みほし、溶けるように眠りこんだ。
翌朝6時に目覚める。一面雪景色である。絶景が広がっている。みぞれが雪に変わり、たっぷりと積もったようだ。雪見露天風呂を満喫すると、空腹を覚えた。普段朝飯を口にする習慣はないが、柳津では別。朝食が楽しみになる。
熱々の味噌汁、湯豆腐をはじめ郷土料理に舌鼓を打つ。炊き立てご飯はもちろんお替り。仕事と慰安の境目が滅失する。
この旅館の朝食時間は7時から8時と定められている。7時前にチェックアウトせねばならぬ時は、おにぎり弁当を手渡して下さる。もしかすると、この弁当は「焼めし弁当」だったのかもしれない。


郡山駅前のラーメン屋さんのランチセット。この焼飯が「前振り」に。

大浴場を満喫。

歓迎ボードを独り占め。

懇親会。

これが「やきめし」?

翌朝の風流な絶景。

心のこもった朝食。

これが「やきめし弁当」だったのかもしれない。