<CICACU>。鹿沼市中心市街地に位置する、老舗旅館を生まれ変わらせたゲストハウスである。随所に風格とモダンが共存している。2018年初秋、初めて宿泊する機会に恵まれた。チェックインの際、何かのイベント準備らしく、凄まじい賑やかさとバタバタさだった。
20名近い参加者が織りなすミッション終了後、我が鹿沼滞在時コーディネーター・M越氏の運転で<山いち>さんへ。勉強会に参加されていた女将さんは急いで店に戻られたようだ。
外観は思いっきり餃子屋にしか見えないが、ラーメンの比重が高いという。「こうらく」という宇都宮餃子を用いている点を思いっきり前面にアピールしている。
ほろ酔いセットが無敵である。ドリンク1杯、焼餃子1人前、メンマ、麦風どり唐揚2ヶで990円。餃子はさすが本場(宇都宮)の王道感。ラー油が刺激的で食欲を倍加する。唐揚も部位がことなるため別料理が2つというオモムキで笑みが漏れる。生は当然1杯で足りるわけなく、2杯追加。その後は焼酎だ。
同行氏たちには「塩」が人気だが、私は定番王道と思しき「あっさり醤油ラーメン」召還。ハーフサイズもあるが、もちろんフルである。
店内には様々なPOPにこだわりが記されている。昆布・椎茸・野菜・鶏ガラがゆっくり抽出された黄金色のスープ。滋養たっぷりという。読むだけで味わっている至福の気分である。
ブツが運ばれてきた。トッピングは別皿で、ネギも何もない「素ラーメン」が眼前に広がる。スープを構成する生姜、椎茸、にんじん、長ネギ、昆布など、すべて生産地と生産者が表記されている。まずは「素」で味わってほしいという配慮だろう。
まずは胡椒すらかけず、スープを一口。……。やさしさに包まれる。思わず「ほわぁ」と温泉に浸かったような心地よき吐息が漏れる。あっさりだが、深い。細胞が喜んでいる。
絶品のチャーシューや刻み葱などを載せて味の変化を楽しむ。ちょい足しにより、素とは異なる別の旨味が新たな表情を見せる。気づけばあっという間に麺1本、汁1滴残さず啜り終えた。他にも試したいメニューがたっぷりである。
M越氏にゲストハウスまで送っていただき、お別れする。鍵の暗証番号を事前に渡されており、開錠を試みる。……。ところが、いくら番号通り押しても開かない。10回ほど繰り返しただろうか。ウンともスンとも反応しない。途方に暮れそうな折、水K氏が私の横に立った。
氏は私が開錠して無事旅館に入るまで見守って下さっていたのか。氏は番号を押し、私と「逆」の方向にダイヤルをねじった。……。何事もなかったように「カシャッ」と音がした。
私は恥ずかしさと申し訳なさに包まれながら、黄金色のスープに漂う素ラーメンのように布団にくるまった。真夜中、壮絶に激しい脹脛のこむらがえりに襲われた。私は少しも成長しない、ちょい足しのない引き算ばかりの生活である。
具は別皿。
好みにカスタマイズ。
絶品。
無敵。
居心地抜群。
餃子専門店のよう。
改装されたゲストハウス。