肉吸。大阪難波<千とせ>の超名物料理である。要するに、肉うどんにうどん抜きだ。大手メーカーが商品化しているのを見かけたこともある。二日酔いの芸人さんが注文したことが始まりという。私も何度か本店で堪能。「肉吸大玉」とビールだ。
北海道を襲った地震のあった初秋の夜。羽田から長崎方面の飛行機は無事テイクオフ。22時過ぎに長崎駅に近い我が定宿にチェックイン。空腹の上、ノドも乾いた。
一人呑みもつまらんので、同じ定宿のT木長崎つきまちタウンマネージャーを呼び出しタクシーで思案橋へ。久々に<武将門>と<満福>をハシゴ満喫する。
翌日の夜(金曜日)。築町にて8人でこじんまりと懇親会。2軒目は普段24時までだが金土は3時まで開けている<武将門>へ2夜連続。奥の小上がりに何とか4人で座るが超満員。我がキープボトルを呑むがあっという間にカラになる。
深夜1時頃K島氏奥方合流。ホテル戻りは深夜2時半。この週は日曜に神戸を発ち、埼玉、三陸、埼玉、長崎と移動。この夜が今週のラストミッション。さすがに疲労がにじみ出る。
翌朝も長崎は雨だった。しかも強め。ホテル朝食を軽く無視し、濡れながら歩いて長崎駅前バスターミナルへ。普段朝食をとる習慣はないが(朝昼兼用)、長崎で朝食をとる際はバスターミナル内の立ち食いうどん屋と決めている。
この店は出汁が旨い。うどんも旨い。しかしこの日の朝は前夜の酒が残り、汁だけが呑みたい気分だった。店内では朝9時からおでんにカップ酒を煽っているオヤジもいる。
メニューを見る。……。「肉玉吸い」を発見。今まで気づかなかった。大阪難波<千とせ>が誇る日本屈指の知名度を誇る「肉吸い」をアレンジしているのか。玉子かけごはんと一緒に味わうのが千とせ流。玉子かけご飯は二日酔いに厳しいので、汁だけがちょうど良い。
肉玉吸いを注文する。店員熟女は一瞬間を置き、目を見開いた。そして慌て気味に「うどんは入ってないですよ!それでもいいですか!?」。
……。入っていたら肉吸いじゃない。当たり前だ。力強く首肯する。
しばらく待って肉玉吸い完成。オニギリ(稲荷寿司)2ヶが漏れなくついてきた。できればこの2ヶはいらぬ代わりに100円引きとかにしてほしいが、店のルールには抗えぬ。
肉玉吸い、肉たっぷりである。玉子は半熟でなく固めだったが、それでも旨そうだ。天かすが出汁の表面で舞っている。
一味をパラリし、出汁を啜る。……。五臓六腑が歓喜し始めた。肉の旨味と甘み、天かすのコクが出汁に溶け込んでいる。玉ねぎにも出汁が染みている。一口すするごとに毛細血管、細胞が弾ける。腹の底のチャクラが回りだす。
一滴残さず啜り切った。一週間の疲労も出汁に溶け、霧消した。
雨の思案橋。日本三大横丁。
初日の<武将門>。
<満福>カレー皿うどんはキラーメニュー。
2日目の<武将門>。
長崎駅前バスターミナルで存在感を発揮。
二日酔いの朝は頼まずにいられない。
五臓六腑に染み渡る。