鰹のたたき。私が最も愛してやまない魚料理である。居酒屋で視界に入ると頼まずにいられない。しかし、心の底から笑みがこぼれる逸品に出会うのは8回に1回程度である。
2018年の夏、私が最もシビれた鰹のたたきに出会えたのは、長崎だった。それもうどん屋さんである。<喜助うどん>である。
長崎市新大工町商店街ミッション終了後、皆さまと恒例の<喜助うどん>へ。生で乾杯し、談笑してると大皿に鰹のたたきが運ばれてきた。分厚い。思わず生唾を飲み込む。断面の赤さが鮮度を物語っている。薬味もたっぷりだ。
薬味を絡め、さっそく口に運ぶ。……。福音が聞こえてきた。クルスが輝きだした。タレ、薬味、鰹が織りなす天の祝福。うどん屋さんで今季最高の鰹が味わえるとは。
続いてはアボカドとウィンナーを炒めたマヨ味、ハムカツなど、ビールが進む料理のオンパレード。好物料理ばかりである。
たまたまかもしれぬが、新大工ミッション終了後は熱燗好きが集う。私も愛している。エアコンの効いた部屋で呑む暑い夏の夜の熱燗も季語にしたくなる風情と旨さだ。
談笑の中で、何うどんが一番好きかという話題になった。私は「カツカレーうどん」をプレゼン。その旨さ、奥深さを普段の仕事のプレゼンの10倍以上の情熱を持って激しく訴えていた。すると、カツカレーうどんが運ばれてきた。
えっ?何という偶然……。嬉しさ以上に悪寒が走り抜けたとき、そのプレゼンを聞いていたオーナーのK島氏が厨房に作るよう指示していたという。ちなみに初めての調理らしい。
これほどの贅沢はない。K島氏は1年以上前、私が「ハトシ大好き」という話を聞いて店でオリジナルのハトシを提供して下さったこともある。最高のおもてなしだ。
とろみある絶品のカレー出汁に、ソリッド感を兼ね備えたカツのザクっとした歯触り、その後に押し寄せるカレー汁を含んだ野趣あふれるスパイシーな香ばしさ。
カレーうどんの出汁は、普通の出汁よりも熱い。さらに揚げたてカツの熱さも加わり、旨さと熱さは何乗にも突き抜ける。ここで、ビールではなく熱燗でおいかける。……。狂おしきほど、物狂おしけれ。うどんも私好みの細麺。もう思い残すことはない。
カツカレーうどんで〆かと思いきや、大皿に汁ダクのスパゲティが運ばれてきた。K島氏のこだわりとして、絶対に同じメニューをアヅマ懇親会では出さないという。シビれてしまう。
トマトソースは幾分和風に施されている。カレーしかり、スパゲティしかり。麺やライスよりルーやソースが圧倒的に少なく切ない想いを抱えてきた同好の士は多いはず。しかし、ここはソースの方がたっぷり。
啜りこむ。……。うどん屋で、スパゲティ。あってはならぬ禁断の組み合わせ。ムフムヒと笑ってしまった。つゆだく最高。ほのかな和風にうどん屋の矜持を感じさせる。その勢いで対面2階のスタンディングバーへ。私の締まらぬ顔はフヤけて蕩けっぱなしである。
最高。
毎月ありがとうございます。
カツカレーうどんのサプライズ。
禁断のサプライズ。
対面2階のスタンディングバーにて。