宿場が書き込まれた掛け紙を読みこむ。小倉を出て黒崎・木屋瀬・飯塚・内野・山家・原田・田代・轟木・中原・神崎・境原・佐賀・牛津・小田・北方・塚崎・嬉野・彼杵・松原・大村・永昌・矢上・日見を経て長崎へ。転記するだけでキーボードを叩く指が悲鳴を上げそうだ。
小倉、黒崎、飯塚は頻繁に訪れているのでなじみ深い。佐賀と長崎でも当地で絶品名物に舌鼓を乱打したが、他の宿場町は残念ながらなじみがまるでなし。だが、楽しみでもある。
中央に鎮座するのは、北九州を代表する名物「かしわめし」。周囲を完全に制圧。甘辛く煮込んだ鶏そぼろ、錦糸卵、刻み海苔の茶・黄・黒が織りなす3色グラデーションはいつみても美しい。かしわめしの代名詞は北九州折尾の`東筑軒´が著名だが、中央軒作品も引けをとらない。
北九州(小倉・黒崎)名物かしわめしでスタートし、極力宿場順に歩むことに。掛け紙を見ると、いきなり佐賀に飛びそうな気配だ。急ぐ旅でもない。御品書では特に名産指定されていない「焼き鮭・煮えび・二色団子」で寄り道する。この団子も出汁が染みて実に好もしい。
佐賀宿に到着。「和牛の味噌焼」と「れんこん煮」が御出迎えしてくれる。れんこん煮が佐賀名物とは驚きである。煮物は他に「南瓜・筍・蒟蒻・椎茸」がある。どれも大きくカットされ、噛みしめると煮汁が口の中であふれる。かしわめしで追いかける。思わずホホが緩む。
佐賀を出た。もはや読み方すら分からぬ轟木宿という宿場町で「しゅうまい」を口に入れる。ノンではないアルコールビールが欲しくなる味わいだ。牛津宿の「うみたけ粕漬」はワサビ漬のような味わい。甘めに味づけされたかしわめしをキリリと引き締める。`うみたけ‘が何かさっぱり分からぬが、おそらく一生訪れることはないだろう牛津という宿場の方言なのだろうか。
ノンクレジットだった「小芋巾着・おくら・もみじ麩」を制圧し、コンニャクのようなプルプルした漆黒のおかずを口に放り込んだ。……。私は、叫び声をあげそうになった。凄まじい甘さだ。慌てて御品書を見ると小城宿の「羊羹アマレットかけ」と書かれていた。
スィーツが不得手な私だが、中でも羊羹・ういろうは最強クラスのライバル。羊羹を口に入れた記憶がないから、初めてではないはずなので30年ぶり以上か。油断していた。
羊羹ハプニングもあったが、駅弁街道の旅は間もなく終着の長崎へ。「豚角煮」が出迎えてくれる手はずだが、見当たらない。付近を捜索すると、発見した。煮物ゾーンの中に小指の第一関節ほどのつつましやかなサイズで、恥じらいながら隠れていた。
デザートは長崎宿の「びわ」。久しぶりに口に入れる。甘くなった下を酸っぱい「はじかみ」が引き締める。大満足の長崎街道駅弁旅だったが、黒崎宿「赤ウィンナー」「ベビーハムマヨネーズ」、飯塚宿「ホルモン」はぜひ今後加えていただきたい。中央軒様、お願いいたします。
