2018年中旬。2代目レッツがリコール対象になり発火の危険性があるという。2代目も3年以上酷使してきた。買い替え時でもある。レッツは高額だが、バッテリーの持ち時間と軽さは何物にも代えがたい。断腸の想いで最新モデルに買い替えると同時に、1999年から愛用してきたガラケーをスマホに機種変更した。
私は超の付くアナログ野郎である。PCの設定もスマホの設定もさっぱり分からない。誰かの力を借りるどころか、丸投げせねばセカンドステージに進めない。私は高校の後輩のN干氏を先輩権限で呼びつけた。彼はその道のプロが集う会社で働いている。
北九州から帰神したある土曜の午後。煮B氏にPCとスマホのセットアップを丸投げする。彼の知識と技術はまるで魔法。範馬Y次郎氏ばりの無敵っぷりである。あっという間に完了。
私の無理難題も涼しい顔で解決していく。持つべきものはデジタルな後輩である。アナログな私だが、デジタルな後輩に教えることができることはあるだろうか。……。
私はその前日、北九州折尾で焼肉を満喫。よって焼肉は選択肢から消えた。肉の反対語は、魚(たぶん)。後輩氏は回っていない寿司屋に行ったことがないという。パソコンの初期設定など絶対にできないが、寿司屋の注文セットアップは私の得意分野である。後輩氏に、寿司屋における注文の軍略を伝授しよう。
神戸新長田に向かった。タンク筋沿いにある創業60年を優に超える老舗<寿し天>。私が神戸市内では最も愛してやまない寿司の名店である。超絶絶品なのに、意外なほどリーズナブル。カウンターは予約必至。ちなみにこの日もあっという間に満席に。ちなみに私は天ぷらと寿司だけはカウンターで攻めたい派である。
熱いおしぼりで手を湿らせ、キンキンに冷えた黒ラベルの瓶で乾杯。ノドに染み込む。
前半戦は単品攻めである。寿司屋であまり私は普通の刺身を頼まない。寿司で喰えばよいからだ。よってシゴトが施されている手間暇かかった逸品軍と体当たりである。
マスターにオススメを聞く。6,7種類の提案があった。今しか味わえそうにない春の恵み。どれも聞くだけで垂涎。
初陣は「鯛の肝の煮付」。淡い黄金色に煌めいている。口に運ぶ。……。絶妙の出汁を纏った身がほろりと崩れ、口の中で旨味が溢れる。初陣、圧勝である。後輩氏も嬉しそうだ。
続いて珍味「のれそれ」。見た目は烏賊ソーメン風だが、穴子の稚魚である。高知あたりでしかお目にかかれないという。これも春の逸品である。二杯酢が三杯酢で味づけ。触感はツルンで味は淡泊。これが穴子になるとは信じられない。一気に啜ってしまいそうだが、チビチビ味わうべき至高の逸品である。
「鯛の白子焼」が登場。ぷっくりと膨らんでいる。スダチを搾り口に運ぶ。……。口の中で弾け、激熱のトロリが大暴れする。慌てながらビールをすかさず含む。落ち着いて二口目。……。絶妙の塩加減。冬なら鱈だが、春は鯛。濃厚で仄かな磯風味が柔らかな瀬戸内風情満点である。
酢〆系は鯖ではなく「鰯きずし」。そしてこの店の定番中の定番「鯵たたき」。鰯はピッカピカ。生姜醤油との相性が見事。薬味たっぷりの鯵たたきは言わずもがなの安定感。
前半戦の総括は「社長巻」。穴きゅう(穴子+胡瓜)のシャリ抜きであり、山葵多めというオトナの逸品。ボリュームもあり、ビールにも酒にも合う二刀流である。〔次夜後編〕






前半戦(ツマミ)は画像の順で攻略。