2018年06月28日

第1978夜:寿司屋での軍略【新長田(神戸)】(前編)

 レッツ・ノート。私が2010年度から愛用してやまないモバイルPCである。日本中どこに行くにも常に持参。揺れる電車内やバス、駅のホーム、喫茶店など場所を問わず酷使してきた。

 2018年中旬。2代目レッツがリコール対象になり発火の危険性があるという。2代目も3年以上酷使してきた。買い替え時でもある。レッツは高額だが、バッテリーの持ち時間と軽さは何物にも代えがたい。断腸の想いで最新モデルに買い替えると同時に、1999年から愛用してきたガラケーをスマホに機種変更した。

 私は超の付くアナログ野郎である。PCの設定もスマホの設定もさっぱり分からない。誰かの力を借りるどころか、丸投げせねばセカンドステージに進めない。私は高校の後輩のN干氏を先輩権限で呼びつけた。彼はその道のプロが集う会社で働いている。

 北九州から帰神したある土曜の午後。煮B氏にPCとスマホのセットアップを丸投げする。彼の知識と技術はまるで魔法。範馬Y次郎氏ばりの無敵っぷりである。あっという間に完了。

 私の無理難題も涼しい顔で解決していく。持つべきものはデジタルな後輩である。アナログな私だが、デジタルな後輩に教えることができることはあるだろうか。……。

 私はその前日、北九州折尾で焼肉を満喫。よって焼肉は選択肢から消えた。肉の反対語は、魚(たぶん)。後輩氏は回っていない寿司屋に行ったことがないという。パソコンの初期設定など絶対にできないが、寿司屋の注文セットアップは私の得意分野である。後輩氏に、寿司屋における注文の軍略を伝授しよう。

 神戸新長田に向かった。タンク筋沿いにある創業60年を優に超える老舗<寿し天>。私が神戸市内では最も愛してやまない寿司の名店である。超絶絶品なのに、意外なほどリーズナブル。カウンターは予約必至。ちなみにこの日もあっという間に満席に。ちなみに私は天ぷらと寿司だけはカウンターで攻めたい派である。

 熱いおしぼりで手を湿らせ、キンキンに冷えた黒ラベルの瓶で乾杯。ノドに染み込む。

 前半戦は単品攻めである。寿司屋であまり私は普通の刺身を頼まない。寿司で喰えばよいからだ。よってシゴトが施されている手間暇かかった逸品軍と体当たりである。

 マスターにオススメを聞く。6,7種類の提案があった。今しか味わえそうにない春の恵み。どれも聞くだけで垂涎。

 初陣は「鯛の肝の煮付」。淡い黄金色に煌めいている。口に運ぶ。……。絶妙の出汁を纏った身がほろりと崩れ、口の中で旨味が溢れる。初陣、圧勝である。後輩氏も嬉しそうだ。

 続いて珍味「のれそれ」。見た目は烏賊ソーメン風だが、穴子の稚魚である。高知あたりでしかお目にかかれないという。これも春の逸品である。二杯酢が三杯酢で味づけ。触感はツルンで味は淡泊。これが穴子になるとは信じられない。一気に啜ってしまいそうだが、チビチビ味わうべき至高の逸品である。

「鯛の白子焼」が登場。ぷっくりと膨らんでいる。スダチを搾り口に運ぶ。……。口の中で弾け、激熱のトロリが大暴れする。慌てながらビールをすかさず含む。落ち着いて二口目。……。絶妙の塩加減。冬なら鱈だが、春は鯛。濃厚で仄かな磯風味が柔らかな瀬戸内風情満点である。

 酢〆系は鯖ではなく「鰯きずし」。そしてこの店の定番中の定番「鯵たたき」。鰯はピッカピカ。生姜醤油との相性が見事。薬味たっぷりの鯵たたきは言わずもがなの安定感。

 前半戦の総括は「社長巻」。穴きゅう(穴子+胡瓜)のシャリ抜きであり、山葵多めというオトナの逸品。ボリュームもあり、ビールにも酒にも合う二刀流である。〔次夜後編〕

180628寿し天@.jpg
180628寿し天A.jpg
180628寿し天B.jpg
180628寿し天C.jpg
180628寿し天D.jpg
180628寿し天E.jpg
前半戦(ツマミ)は画像の順で攻略。
posted by machi at 07:53| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月26日

第1977夜:会津ソースかつ丼戦争【柳津(福島)】

 ソースかつ丼。かつ丼には様々なバリエーションがある。定番は甘辛い出汁に卵を溶いてカツを絡めた神がこの世に賜った奇跡の料理。一方。新潟方面には「タレかつ丼」が、秩父方面には「わらじかつ丼」なども根を広げている。

 ソースかつ丼といえば私にとっては福井県敦賀市だった。ところが2017年10月に初めて福島県柳津町を訪問し、柳津のソウルフードが「ソースかつ丼」であることを認知。柳津から車で約30分の会津若松もソースかつ丼が名物。会津はソースかつ丼文化が根付いている。

 2018年5月中旬、4か月ぶりに柳津を訪れた。商工会にて「観光客(リピーター)増加対策」「地域資源の再発見と活用」をテーマにワークショップのお手伝いをさせていただいた。

 柳津は地域資源が極めて豊富な人口3500人の風光明媚な温泉町。土産の定番は「あわまんじゅう」。災害に「あわ」ないを掛けている。そして「ソースかつ丼」。柳津風はご飯の上に卵を敷いてソースカツを乗せるスタイルらしい。これは珍しい。

 柳津ソースかつ丼の駅弁化、会津若松バージョンの食べ比べセットなど様々なアイデアに耳と目を傾けていると、無性に食べたくなった。7か月間で5回目の訪問になるが、一度も柳津ソースかつ丼を実食する機会がなかった。もしかすると、1度も実食する機会がないままご縁がなくなるかもしれない。

 柳津で夜の21時以降に食事ができる店は洋食店<柳>一択。スナックはあるが居酒屋が1軒もない柳津町にとっては奇跡の夜の超人気オアシス。その夜、4か月ぶりに<柳>へ足を運んだ。私はこれで2度目である。

 同行氏たちは全員車。私だけが生ビール。メニューにソースかつ丼発見。思わず小さくガッツポーズ。迷わず注文。私はかつ丼が大好物だが、夜に食べた記憶がない。

 生ビールをゴキュゴキュお代わりしながら他の団体客らとも談笑していると、ブツが運ばれてきた。丼ではなく皿である。ご飯の上にレタスが敷かれ、その上に半熟卵が広がっている。頂上には大きく分厚いソースかつ。飴色に輝き食欲を掻き立てる。

 まずはカツを一口。……。柔らかくジューシー。ウスター系をイメージしていたが、割と甘めでトロミあり。本日3杯目の生ビールで追いかける。思わず笑みが漏れる。

 郡山駅にソースかつ丼の駅弁があったような気がする。会津若松駅の駅弁コーナーは私がいつも行く朝の時間帯にはまだ届いていない。他の店の柳津ソースかつ丼も食べ比べてみたくなる。そして会津若松バージョンも試してみたくなるのが人情というもの。

 人口約10万人の会津若松と約3500人の会津柳津。これまでは若松にソースかつ丼でも押され気味だったそうだが、これから柳津は攻めに転じる。会津ソースかつ丼戦争、勃発寸前。この戦争に関しては私は中立性を捨て、柳津の食客軍師として陣立てを構える所存である。

180626林@柳津.jpg
<キッチン柳>さんのソースかつ丼。今晩(2018年6月26日)も味わえるかな?
posted by machi at 17:38| Comment(0) | 福島県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月25日

第1976夜:春のタンまつり【川口・浦和(埼玉)】

 「お買い物は 私の街で 川口で」。埼玉県内第2の中核市・川口市商店街連合会のキャッチコピーである。

 2017年11月から川口市商連のビジョンづくりをお手伝いさせて頂いている私は2018年3月下旬、そのビジョンを関係各位に報告させていただくことになった。私も舌を滑らかに70分間ぶっ通しでしゃべり倒した。今後はプランづくりに移行することを検討されている。

 終了後、銀座商店街<ミルウォーキーズクラブ>へ。乾いたノドを生ビールで思いっきり潤す。激レアウィスキーをストレートにて舌で味わいながらもガバガバやり、市商連役員と談笑。この業務が2017年度の私のラストミッションだった。

 翌日の夜。2017年度から濃密のご縁を頂いた埼玉において、共に現場を戦い抜いた戦友たちと打ち上げっぽい呑み会を決行。私は無性に焼肉を喰いたくリクエストさせて頂く。

 屋号は<嬢々苑>。あの超有名焼肉店のパロディか。ドリンクも肉類も安い。そして、1人前あたりのボリュームがウリであるそうだ。生ビールも普通が大ジョッキサイズである。

 メニュー以上に店内の視線を釘付けにしているのが、所狭しと店内中に張り付けられたPOP風ポスターである。ピンクを基調としたデザイン。3月から4月にかけて日本中のスーパーやデイリー●マザキ等で見かけるような気がする。女優・松た●こ氏がパン皿を手に素敵で爽やかな笑顔を浮かべているポスターに類似している。しかし、違和感がある。

 目を凝らす。……。松氏ではなく、白い割烹着を着た中年男性が皿を持っている。そして、マジックで野太くこう書かれていた。

「春のタンまつり」

 思わず笑ってしまった。一本取られた。やられたと感じた。タンまつりの概要は「タンのサイコロステーキがオススメ」とのこと。もちろん注文する。

 店員さんたちの感じよい接客、パロディな店名とフェア。この店、かなり極上。戦友のN野氏、よく発見できたものである。店内は戦友たちと同じ職場と思しき男女が制圧している。

 焼肉もリーズナブルなのに十分な旨さ。タンまつりの後は精肉とホルモンをガンガン焼く。ホッピーを浴びるように呑む。

 春の日は長くなりけり。入った時はまだ明るかったが、ようやく夜も更けてきた。外は生暖かい風が吹き、春の訪れを実感させられる。

 2017年度の私の埼玉が完遂。最後に経験した粋な「春のタンまつり」。最後の余韻を噛みしめるべく、私が知る限り埼玉唯一のアーケードっぽい「ナカギンザセブン」へ足を運んだ。

180625川口浦和B.jpg
このパロディポスターの写真を撮り忘れて無念。

180625川口浦和A.jpg
春のタンまつり。

180625川口浦和@.jpg
川口の夜はウィスキーをストレートで。
posted by machi at 10:43| Comment(0) | 埼玉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月24日

第1975夜:人間の本質【新長田(神戸)】

 鰹、業タウンマネジメント。私が2017年2月13日に分社独立した従業員ゼロ自宅事務所の超弱小零細会社である。

 1期目は2017年2月13日〜5月30日、2期目は2017年6月1日〜2018年4月30日。3期目以降は5月〜4月で固定する予定だが、1期目は何の動きもなかったので実質的な初決算は2期目から。

 その決算に関し、独立前から多大なご尽力を頂戴した大阪総合労務会計事務所のS藤先生・A部先生にお願いした。結果的に、無事3期目を迎えることができるようで安堵する。

 2018年4月中旬。決算打合せを神戸妙法寺の自宅事務所で終え、夕方からだが先生方を神戸新長田へご案内。自宅周辺は飲食店がショボいのでディープ新長田をご堪能頂く所存である。

 まず向かったのは、新長田駅北口すぐの<のぎく>。私が新長田で最も愛する炭火焼肉店である。このバカブログでもいつか忘れたが書いたことがあるはずだ。細かい注文をせず、大皿・辛口と発する。精肉、様々な部位のホルモンが大皿に大量に盛られてくる。

 サニーレタスで包みながら、キムチやナムルで箸休めしながら、生ビールやハイボールをノドに放り込みながらガンガン焼いて、ガンガン喰う。太古の野生に還ることができる。

 行き止まりの路地にあり、ドアといいイチゲンが飛び込むのはほぼ不可能な立地である。しかし、広めの店内はあっという間に満席に。しかも順番待ちまで発生。味とコスパが良ければ立地など関係ないことを思い知らされる。新長田人はディープスポットが大好きである。

 腹ごなしに南側の商店街ゾーンを歩く。鉄人28号モニュメントが闇夜に聳え立っている。商店街エリアを歩くのは久々で、19時を大きく回っていたのでたいていのお店は閉まっていたが、ブラブラしていると知り合いに遭遇する。懐かしい。

 新長田で最も愛する鉄板こなもん店<喜楽>へ。大好物のシソチューハイをゴビゴビやりながらねぎすじ焼、アマダイ、目玉焼を注文。3人で取り分ける。先生方は大阪八尾が拠点なのでおそらく長田焼もどろソースも、そして謎のドリンク「アップル」も初体験。ご堪能頂けたようである。20年近い付き合いのママと話し込みながら、私も満腹だったがベツバラを発動させる。

 北口から南口の大正筋商店街に移転した<てんてん>へ。ここのママとも20年近い付き合いである。餃子を喰いながら魂荒ぶるママの力強さを堪能し、先生方と新長田駅で解散。私は終電までまだ2時間ほどある。

 フラフラと駅北口の場末スナックへここのママとは15年以上の付き合いか。カウンターに腰掛けるや否や、私は初見だったが隣に座る常連と思しき輩が「二度と来るか、ボケ!」とママに捨て台詞を吐いて退出していった。

 再開発や区画整理で街並みはすっかりキレイになったけど、人間の濃さや本質は少しも変わらぬ新長田である。

180624新長田@.jpg
<のぎく>にて。

180624新長田A.jpg
180624新長田B.jpg
180624新長田C.jpg
<喜楽>にて。
posted by machi at 09:46| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月23日

第1974夜:禁断のハーフ&ハーフ【板宿(神戸)】

 ハーフ&ハーフ。ラガービールと黒ビール、ピザなどハーフ&ハーフが楽しめる飲み物喰い物は割とありそうだ。私が2018年になって急遽試したいハーフ&ハーフがあった。お好み焼きである。しかし、豚焼とすじ焼のハーフ&ハーフなどではない。それは……。

 ある3月中旬の汗ばむ陽気の夕方。大阪八尾で4年間お手伝いさせて頂いたミッションが最終回に。夕方に終わり、普段は八尾の呑み友達たちと終電または結局終電を逃して事務所等に泊めて頂くことも頻繁だが、年度末が近いためか皆さん超多忙。オトナしく帰神することに。

 その日はバタバタして朝昼何も腹に入れていなかった。空腹以上にノドが乾いた。真夏以上に春の蒸し暑い夕刻にノドに放り込む生ビールの旨さは最強かもしれない。乗換の鶴橋駅ホームで焼肉の香りが鼻孔に飛び込んでくる。一人焼肉の気分でもない。難波で途中下車し、商店街内の激安居酒屋へ飛び込む。少し落ち着く。

 ノンビリと阪神なんば線で帰路に。ところが難波の居酒屋であまり心惹かれるアイテムがなくあまり注文しなかった。電車に揺られていると更なる空腹が襲ってきた。

 私は板宿で降りた。小中同級生が営む人気お好み焼き店<とん>へ。地元の地方新聞を読みながら瓶ビールでスタート。目玉焼を焼いてもらう。

 神戸新長田育ちの私にとって、お好み焼はソウルフードの一つである。それも、マヨネーズではなく激辛の「どろソース」たっぷりだ。高校を卒業するまで、私は日本中どこでも「どろ」を使用していると思い込んでいた。マヨネーズというものを使う風習を知らなかった。

 私は神戸新長田以外でお好み焼を口にすることはめったにない。少なくとも自分では行かないし、テイクアウトもしない。新長田より旨い地域があるとは思えなかったからだ。

 2018年になり、なぜか広島焼にハマってしまった。北九州の広島系お好み焼店が絶品だったこと、大好きなグルメコミックでも登場人物たちが旨そうに喰っていたことが要因である。

 私が愛してやまない新長田お好み焼は「ねぎすじ焼」である。その次が「モダン焼」。それもそばではなくうどんのモダンだ。ビールをお替りし「モダン焼(うどん)」を焼いてもらう。

 焼きあがった。まずは普通のソースを全面に塗る。そして、さらに半分だけ「どろソース」を垂らした。そして店主に「マヨネーズ」を所望。もう半分に「マヨネーズ」をたっぷり。一度試してみたかった「どろソースとマヨネーズのハーフ&ハーフ」である。

 新長田っ子にとって、お好み焼にマヨネーズは邪道。置いていない店の方が多いのではないか。少なくとも卓上では見かけない。まさに邪道喰いだが、ここは新長田から微妙に離れた板宿。ギリギリ許されるだろう。ちなみにこの組み合わせ、あるようでない禁断である。

 まずは「どろ」ゾーン。……。定番の食べ慣れた愛する味である。そして「マヨ」ゾーン。……。ジャンク感が増し、コクとマイルドは私を包む。神戸新長田から一歩も出なかった十代から四半世紀。私は日本中を飛び回っている。味覚も嗜好も変わってきた。これからはハーフ&ハーフだ。もう私は「新長田っ子」を名乗ることは許されないだろう。

180623とんA.jpg
「どろ」と「マヨ」。

180623とん@.jpg
最初はこれから。
posted by machi at 10:49| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする