小雨降る9月上旬の夜、大阪府八尾市で朝から夜までタフな一日終了。自宅まで2時間。イッパイやらずにいられない。
普段から八尾でお世話になっている飲食店のFBを拝見すると、食材に秋の気配が濃厚に感じられる。秋刀魚、松茸……。この数年、私の初秋刀魚実食は日本屈指の秋刀魚水揚げ港・岩手県宮古市と決めている。松茸は私のようなヨゴレまちづくり屋には御縁なき高値の花。
私にとっての秋は「すだち」である。漢字変換して「酢橘」という字を当てていることを知る。檸檬ともカボスとも違うキュンとした高貴な香りと酸味。秋刀魚にも、漬物にも、焼酎にも、どんな食材にも合う。酢橘画像を拝見すると、胸がときめいて落ち着かなくなる。
超人気店<わっちょい>に一人で飛び込んだ。看板娘・I井嬢に日中八尾市内をブラブラしていると声掛けられたのも大きい。名前を憶えて下さることは最強のリピーター獲得手段だ。
生ビールをやりつつ、本日のオススメメニュー拝見。真っ先に視界に入ったのが「山形だだちゃ豆」。2015年度に10回以上山形県酒田市に通わせていただいた際に思いっきり満喫した秋の味覚だ。そして、鰹のたたきである。
程なくして超多忙な我が一人弱小会社の顧問・S藤先生がご来店。先生と乾杯し、だだちゃ豆を口に運ぶ。茹でたてポクポクの甘み最高。鰹のたたきは本場高知なみの「塩たたき」。わさび醤油に溶かずともそのままで絶品だ。鰹の身の鮮烈な赤さが鮮度の良さをうかがわせる。
生絞りすだちチューハイに切り替えてアッという間に3杯ノドに放り込む。そしてこの店に来れば頼まずに居られぬ黒豚とんかつ。断面の仄かな赤みが最高に食欲をそそる。普段は岩塩またはおろしポン酢だが、今日はすだち。すだちをキュッと搾り、岩塩をつけて口に運ぶ。
……。目からウロコどころか眼球そのものが頬っぺたと一緒に落ちそうに。わっちょいトンカツをすだちと岩塩のみで満喫する天国。私は秒殺で昇天した。
続いて超人気海鮮割烹居酒屋<えん>へ。カウンターもテーブル席も満席。焼酎ロックをヤリながらメニューを見る。超レアじゃがいも「インカの目覚め」バター焼、とうもろこし天ぷらで残暑を懐かしむ。インカの甘さととうもろこしの甘さが芋焼酎ロックの甘さと化学変化を起こし、旨さのマグマが噴火する。
〆に我が秋の最強メニュー注文。「松茸土瓶蒸し」。そのまま焼いた松茸も松茸御飯も吸い物もめったに口にできないが、土瓶蒸しだけは頭が真っ白になり後先考えず注文してしまう。
蓋を外す。ハモ、松茸という初秋限定コラボが織りなす奇跡の組合せ。すだちをキュッと絞る。香りが立ち上る。猪口に注ぎ、口に運ぶ。初秋の旨みがふんだんにたっぷりと詰まっている。大きな秋を、私は見つけた。
土瓶蒸しに合う酒は、日本酒である。それも熱燗でヤリたい。猪口で出汁を啜り、猪口で熱燗をやる。日中は蒸し暑いが、夜は風が涼しくなった。雨音はショパンの調べだが、すだちは初秋の調べである。

鰹たたきには、すだち。

とんかつにも、すだち。

土瓶蒸しには、絶対にすだち。