とろろとラーメンだけでも珍しいが、それが豚骨スープと合わさる。さっぱりとした中に、濃いパンチがある。試したことはないが、醤油系より豚骨系の方が合うのかもしれない。不思議な感覚だが、箸が止まらない。スープも一滴残さず干してしまった。
最後はレンゲを使わずに、手で直接鉢を持ち上げ、直接口から啜った。口のまわりも手も、ラードかスープでベトベト。体の細胞の一つ一つに、豚骨の髄のエキスが染みこんでいきそうだ。贅沢で、手間暇のかかるラーメンだろう。
深夜24時。メイン通りと思われる明治通りの広い歩道には、ラーメン屋台が所々に立ち並び、独特の獣臭を放っている。苦手な人にはツラいかもしれないが、すっかりこの臭いにハマった私は、胃がキュルリと音を立てた。どの店を選ぼうか。いかにも久留米ラーメン、という店を選びたい。
久留米最大の繁華街・文化街エリア。商店街の路地に行列ができている。店の前を通りかかった。店名は<久留米屋>。いかにも久留米ラーメンっぽさが全開だ。明らかに地元民で賑わっていることも、私のアンテナに反応する。運よくお客が一気に出たので、待たずに私も潜り込んだ。
メニューはシンプル。店内はお母さんとその息子、といった雰囲気の2人が切り盛りしている。ラーメンを注文したが、目の前のおでん鍋もグツグツと旨そうだ。
おでん(玉子・天ぷら)を肴に瓶ビールを呑んでいると、久留米屋ラーメン600円が運ばれてきた。チャーシュー2枚、きくらげ、海苔、ネギ、そして茹で卵。具だくさんである。
スープを啜る。思った以上にあっさりしている。呑んだ後のシメには、濃厚ギトギトよりもあっさり系が好評なのだろう。翌朝も安心だ。店内の常連客も一心不乱に啜っている。
外は雨が降っている。店内は心地よく温かい。旨いラーメンを啜り、ビールを呑む。本来は至福の時間である。ただ、私の真横に座っている、肩にフケがとんでもないほど溜まっている豚骨紳士が、真横にいる私に向かって、肩のフケを頻繁に払うのだ。
私はラーメン鉢と体をクネクネ避けながら防戦するのだが、テキは久留米ラーメンの濃厚さのごとく手ごわい。武器を持たない私は、完敗である。しかも、フケ男爵は汁をすべて啜った後、そのままカウンターで余韻を楽しんでいる。動く気配が微塵も感じられない。
フケ男爵、恐るべし。おかげであまり味に集中できなかった。私は、まだまだ修行が足りない。
![170227久留米屋ラーメン@.jpg](https://azumachizukuri.up.seesaa.net/image/170227E4B985E79599E7B1B3E5B18BE383A9E383BCE383A1E383B3E291A0-thumbnail2.jpg)
おそらく行列のできる人気店。
![170227久留米屋ラーメンA.jpg](https://azumachizukuri.up.seesaa.net/image/170227E4B985E79599E7B1B3E5B18BE383A9E383BCE383A1E383B3E291A1-thumbnail2.jpg)
せっかくの絶品に集中できず。
(付記)
6年以上前に書いたと思しき死蔵ストック5夜目久留米編最終回。読み返しても味は覚えていないが、フケ男爵のことは鮮明に記憶。