2016年11月23日

第1583夜:50年前の中華そば【八戸(青森)】

 <宝来食堂>。八戸の中心市街地・二十六日町に屹立する超レトロな外観の老舗である。八戸では珍しく昼から夜まで通し営業されている。

 ある肌寒い7月中旬の15時。八戸中心部に到着した私は、空腹を癒すために15時でも開いている店をネット検索。ホテルに近いこと、チェーン店でないこと、ラーメンを啜りたいこと、初ダイブする店というすべての条件を満たしていたのが冒頭の<宝来食堂>さんだった。

 緊張しつつ店に入る。おろおろしながら空いている席に座る。店内は超常連と思しき後期高齢者たちが甲類焼酎を店の熟女たちとだべりながら呷っている。

 壁面メニューを観た。……。私は顎がハズレそうになった。見間違いかと思い、何度も目をこすり、凝視した。中華そば200円。繰り返すが、200円。かけそば250円より安い。玉子丼300円、カレーライス300円、カツ丼400円、カツカレー500円…。45年以上前から値段を上げていないそうだ(店内に貼りだされた新聞によると)。

 厨房に向かって「中華そば!」と叫ぶ。我がオーダーを受託いただいたようだ。しかし、中華そば200円だけでは申し訳ない気持ちになる。ミッション前なので酒は注文できない。

 中華そばの次に安いメニューがかけそばだが、中華そばとの取り合せは異常すぎる。玉子丼やカレーライスは少々重い。おにぎりありますかと尋ねたら、稲荷寿司があるとおっしゃる。ラスト2ヶというので、2ヶ頼む。

 秒殺で運ばれてきた稲荷寿司はコメがぎっちり。揚げは甘めの濃い目だが、飯の量が多すぎて揚げの味があまりしないほど。1ヶでおにぎり2ヶ分詰まっているのではなかろうか。

 中華そばが運ばれてきた。最初は200円という価格からあまり期待していなかった。ビジュアルは透き通った鶏ガラベースの醤油味である。煮干しもほのかに香る。

 胡椒をパラリと振りかけ、スープを啜る。……。絶滅危惧種寸前のあっさりとした滋味。深くて淡いのにコクがある。チャーシューも1枚だがしっかり味が濃い。メンマもたっぷり。ちぢれ麺がスープに絶妙に絡む。途中。稲荷寿司が大きすぎてスープで流し込む。

 大満足の大満腹。お会計はたったの300円。稲荷が1ヶ50円だったとは…。店を出て七夕祭準備中の縁日屋台を覗いたけれど、宝来さんの衝撃が強すぎてどれも高額に感じてしまう。

 味を長年守り継いでいる店はあれど、値段まで守り継いでいる店は稀。昭和40年代、中華そば200円は高いか安いか分からない。相場だったのだろう。

 手抜きなしの中華そば、200円。立食い蕎麦屋のラーメンよりも安い。出汁も手間暇かけているそうだ。消費税は苦しいだろうが頑張って頂きたい。こんな店こそ軽減税率を適用すべきだ。22世紀もこの値段ならスゴイ。ドラ●もん以外に確かめようがないけれど。

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老舗食堂の面構え。

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衝撃のメニュー表。

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これ全部でたったの300円。
posted by machi at 07:30| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月21日

第1582夜:夜の西遊記【八戸(青森)】

 <てんじく>。八戸中心市街地にある居酒屋である。カウンターと10人程度のプチ宴会が可能な広さだが、魅力は無限の広さと奥行きを兼ね備えている。

 ある夏の夜。八戸中心商店街連絡協議会の若旦那衆と検討会終了後、<てんじく>さんへ向かった。月1回恒例の懇親会となっているが、毎回異なるお店にご案内いただく。八戸の飲食店はどこもレベルが高く外れなし。高まる期待に猪八戒のごとくブヒブヒしながら私は着いていく。

 天竺に上り詰めた後、小上がりに陣取る。呑み放題である。ガツンと乾杯。桃源郷は瞬く間に絶品料理とジョッキで溢れかえる。

 鮮度無敵の刺身盛合せと茹でた蟹がドカンと鎮座。八戸では何故か夏に蟹が味わえる。小ぶりだが味噌が詰まって思わず目を細めてしまう。烏賊のミミのコリコリに笑みがこぼれてしまう。

 ハイボールに切り替えてピッチを急加速させていると、ローストビーフのような料理が舞い降りた。凄まじい量である。柔らかくあっさりなのでいくらでも腹に入っていく。そして、圧倒的ボリュームのため食べても減らない。お釈迦様の手の中で大暴れしている孫悟空状態である。

 絶品料理が続いたが、私が最も印象に残ったのがネギと魚介を炒めた料理。ネギフェチの私にはトリップしそうなほど悶絶天界な逸品。中華風の味付けだが、香ばしくネギもシャキシャキ。海鮮の風味が筋斗雲のごとく天を駆け巡る。ブヒブヒ鼻息が止まらない。

 2軒目は6人ほどで<てんじく>さんにほど近いホテル最上階のバーラウンジへ。M井氏キープの極上スコッチを舐めつつ談笑しながら窓の外を眺める。八戸屈指に高い地点から街を見下ろしている。まさに`天竺´。しかし、たまたま座った角度が悪かったらしいがお世辞にも百万ドルの夜景とは言い難い。お釈迦さまのお力でもっと明るくしていただけねばならない。

 サクっと呑んでお開き。呑み足りない気分だった食いしん坊ダメ猪八戒な私は、三蔵法師のような佇まいのイケメン商工会議所職員・K井氏と<みろく横丁>へ。<てんじく>という名の桃源郷、文字通り八戸屈指の最上階な`天竺´からの帰り道こそ、ベッタベタな屋台街が相応しい。

 混んでいる店とそうでない店がある。三蔵法師(K井氏)と猪八戒(アヅマ)はその中間ぐらいの屋台へ適当に飛び込んだ。金角と銀角の熟女版といったお二人が切り盛りされている。

 何を食べて呑んだのかもあまり覚えていない。オススメボードから1、2品注文して何か呑んだのだろう。さらにもう一軒ハシゴしたような気がするが、さらに記憶は曖昧である。

 金角銀閣の妖術にハマったのか。単に天竺という名の桃源郷で浮かれすぎたのか。泥酔しながらホテルでダウン。翌朝、凄まじいノドの渇きで目が覚めた。頭の皿の水が干上がってしまった沙悟浄状態である。

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たっぷりの肉。

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たっぷりのネギ海鮮。
posted by machi at 07:45| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月20日

第1581夜:新天地クロクロの巻【伊賀(三重)】

 新天地。伊賀鉄道の中心・上野市駅前に伸びるレトロでシブいアーケード型商店街である。様々な仕掛けが施され、飲食店の開業が相次いでいるという。老舗の名店もあるそうな。

 ある夏の夜22時過ぎ。伊賀上野銀座商店街にて勉強会終了後、F山理事長と石B氏と新天地へ。何軒か灯りが煌めいており、その中の一軒<ONO>さんへ。私が普段足を踏み入れることなきお洒落でムードの良いイタリアンバールである。

 生ビールで乾杯した後は、ワインへ移行。鰆のカルパッチョが爽やかだ。エスカルゴのようなビジュアルを放つ海鮮アヒージョも抜群。バケットに乗せて口に運ぶ。……。冷まさずにかぶりついてしまったので上顎が大惨事。すかさずワインを流し込んで冷す。この激熱もアヒージョ系の醍醐味である。カレー風味の鶏ハーブ焼も見事だった。

 店内禁煙なので、煙草吸いは外に出る。すると若い(?)女性2人組が<ONO>さんを覗く。本来は22時ラストオーダーなので入れなかったようで、店前で途方に暮れている。

 すかさずF山理事長が優しく声を掛け、すぐ近くの2階のバー<4>をご紹介。女性コンビは嬉しそうに階段を駆け上がっていった。

 ワインなど洒落たモノは普段呑み慣れないので焼酎ロックに移行していると、<4>のマスターが店に入ってきた。用事かなと思いきや、生ビールを注文。休憩に来られたようだ。あれ、お客さんは…?さっきの二人組はバーに行かなかったのだろうか。

 <4>マスターがさっと店に戻り、我ら3人も追いかけるようにバーへ。お客さんで賑わっている。他にもスタッフがおられるようだ。

 F山理事長と石B氏がお二人とも「クロクロ」と注文。クロクロ?呑み喰いした2軒目の最初にこれを飲むと最高にスッキリして旨いとおっしゃる。よく分からぬまま私もクロクロに。

 目の前のボトルが置かれた。洋酒が高級品だったころの海外土産定番「ジョニーウォーカー」。その中でも「ブラックブラック」という銘柄。置いている店はかなり少ないらしい。これのソーダ割りがいわゆる「クロクロ」だった。

 クロクロが目の前に置かれた。普通のハイボールより何杯も豊潤で香り高い。どっしりしているのにキレがあり、スッキリしている。これはハマりそうだが、伊賀でしか呑めない。

 <ONO>のマスターもバーに来られた。名刺を下さったが、直径1pほどの丸い穴が空いている。F山理事長が私のその穴の意味を問う。全く分からなかったが、正解を教えていただき思わず唸らされた。なるほどと激しく首肯する。

 そんな話をしていたら無性にスパゲティを腹に入れたくなった。談笑しながらクロクロを流し込んでいると、スパゲティが運ばれてきた。大盛である。穴があったら入りたい気持ちで夢中で啜りこんだ。

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ジョニーウォーカー・ブラック×ブラック。

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それから2か月後。石B氏のバースデイサプライズ。
posted by machi at 15:37| Comment(0) | 三重県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月17日

第1580夜:空の竜宮城X〜夏祭〜【小倉(北九州)】

 小倉中央商業連合会(以下:中商連)。100万人弱都市・北九州の中心である小倉地区を統べる最強最大の商業団体である。商店街、市場、大型店など20以上が加盟。

2017年3月に小倉駅北側に竣工する新スタジアムにも大きな期待が膨らむが、ここをフランチャイズとするサッカーJ2「ギラヴ●ンツ北九州」がJ3へ降格寸前(2016年8月中旬現在)とは皮肉である。

 ある夏の夜。中商連大幹部や事務局(商工会議所)の皆さまと会合を終え、向かった先はこのバカブログでも幾度となくご紹介した北九州どころか日本屈指に予約の取れない割烹<空>へ。オーナー氏と懇意にさせていただいており、神戸の我が自宅まで出向いていただき出張料理人として腕を振るっていただいたこともある。一生の想い出だ。

 テーブルの上にはすでに小鉢が数品並んでいる。生ビールで乾杯。談笑しながら箸を伸ばす。鮎の塩焼を中央に、甘さ抜群のトマト、鮮やかな緑の枝豆、これだけでメインな鯨のヅケ、きびなご(たぶん)の酢味噌、卯の花(おそらく)、何かの魚の南蛮漬がお花畑を形成している。見た目にも涼やかで味は言わずもがな。室内なのに一服のそよ風が頬を撫でる。

 生を数杯呑んだ後、銘柄を忘れたが極上の日本酒を冷やで。第1陣が片付いた後、第2陣が敷かれた。大トロを目玉とした刺身5種である。どれも一仕事加えられており、鮮度かつ熟成を超高難度に融合させた至福の五人囃子。脳内で笛や太鼓が鳴り響く。

 談笑しながら杯を重ねていると、蟹の味噌汁が運ばれてきた。嬉しい中休めである。蟹のエキスが味噌汁に溶け込み、舌だけでなく湯気すらすでに旨い。鼻も目も喜んでいる。

 これでシメかと思いきや、メインディッシュが運ばれてきた。岩牡蠣と平目のフライである。巨大な岩牡蠣は生で食したことはあれど、フライは初めて。

熱々をかぶりつく。……。豊潤すぎる濃厚な海のエキスで口の中が高潮に。すかさず冷酒で追いかける。磯の香りがさらに広がる。鼻息という名の台風に飛ばされそうになる。平目のフライがかすむほどだ。

 本当のシメが運ばれてきた。なんと鰻丼である。満腹なので超小ぶりサイズだが、米と鰻の比率がほぼ1対1。鮎、トマト、枝豆、夏の魚、岩牡蠣、そして鰻。これほど夏を感じさせる割烹料理は初めて。日本の夏の素晴らしさを<空>の竜宮城で存分に満喫した。

 お開きとなり、M渡氏と<ムーラン>へ。氏がキープするプレミアム焼酎を痛飲していると<空>のオーナーも合流。

M渡氏と私は満腹なのだが、オーナーは空腹。当たり前である。ムーランのマスターが夏野菜トッピングの冷やしうどんを作ってくれた。そういえば<空>では麺類でシメなかった。思わず箸が伸び、ズルズル熊啜。これぞオトナの夏である。

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涼やかな第一陣。

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見事な仕事ぶり。

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最高の箸休め。

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口内が牡蠣のミルクで洪水に。

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ご飯より鰻が大きいミニ鰻丼。

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〆の〆は<ムーランルージュ>マスターの冷やしうどん。夏を満喫。
posted by machi at 17:33| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月16日

第1579夜:旦過まちなかBBQ【小倉(北九州)】

 バーベキュー。心躍るワードである。海岸や高原といった大自然の中で楽しむ場合もあれば、ハリウッド映画に出てくる豪邸では自宅の庭でパーティすることもあるだろう。しかし、思いっきり街のど真ん中、それも幹線沿いで楽しめるとしたら。

 老朽化と治水対策に伴う再整備計画が進行中である北九州の台所・旦過市場からほど近いところに商工貿易会館がある。その前の広大なスペースを活用し、7月13日から8月31日まで連夜バーベキュー会場に早変わりする。

 肉食べ放題(野菜追加別料金)、飲み放題、時間無制限でオッサン一人3500円である。持ち込みもOKという。受付テントで料金を支払うとリストバンドを渡される。それを装着し、スタッフの方の案内で席に着く。バーベキュー会場の様々なルールが説明される。

 ある夏の風のない蒸し暑い夜。旦過市場の旦那衆や市、会議所の方々と勉強会終了後、十数人でBBQ会場に向かった。完全セルフで、肉は専用ブースへ取りに行く。ドリンクも自分で注ぐ。生でもハイボールでも自由自在だ。

 私の隣には「炭火七厘奉行」ともいうべきT中氏。見事なうちわ扇ぎとペンライトを駆使してどんどん焼いて下さる。明らかに他のテーブルより火と煙の勢いが強い。豚バラ肉を投下すると脂が炭に滴り、一気に炎が舞い上がる。

 旦過の皆さんが持ちこまれた惣菜もアテにしながら、煙で目をショボかせつつ杯を重ねる。どんどんホロ寄ってくるとドリンクコーナーへ向かう足が覚束なくなる。

 街なかなので星は見えぬが、市場の目と鼻の先でバーベキューが楽しめるとは感無量。スタッフの人と雑談すると、最初から最後まで(5時間)食べ飲み続ける方もおられるという。

 特に航空自衛隊の皆さまは最初グァ〜っと肉を喰いまくり、少しドリンクタイムで休んでからラストにまた肉を喰いまくるという。頼もしい限りである。

 体中いぶされたまま、七厘奉行T中氏の御子息の店<空>へ。何度もこのバカブログでもご紹介させていただいている、北九州でも最も予約が取れない(たぶん)割烹である。

 御子息も一緒にBBQを楽しんでいたので、当然店はお休み。わざわざ開けて下さり、見たことのない超プレミアム国産ウィスキーや激レア焼酎をご馳走になる。同行の女性陣はこれまた珍しそうな梅酒を満喫されている。

 豪快に街なかの夜空の下で肉を喰らい酒を鯨飲した後は、隠れ家のごとき超名店でプレミアムな酒を楽しむ。いつまでも居座りたい気分だが、翌日15時までに青森県八戸市の中心市街地に辿り着かねばならない。

 喧騒と静寂。夜空と空。炎と静謐。ワイワイガヤガヤの楽しさとほっこり落ち着き時間のギャップが極上である。

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posted by machi at 09:31| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする