東日本大震災発生から2か月後に宮古入りした私は、商店街や消防団の皆さまと朝5時過ぎにともに商店街側溝のヘドロ掃除をお手伝いさせていただく機会を得た。掃除もそうだが、石板を外したりハメたりするだけでクタクタになる。匂いも強烈で、ドロドロになった作業ズボンは洗濯しても効果なかった。数あるお手伝いの中でもかなり印象に残っている。
2016年8月30日頃、台風10号が宮古の商店街を席巻。特に被害が大きかったのが中央通商店街。その中でも被害最大級が事務局長S本女史のご自宅。車も廃車の憂き目に。店舗でもないのに悲惨としかいいようがない。しかし、S本姐さんは自宅の掃除を後回し。商店街事務所や植栽の復旧を優先させていた。頭が下がるという安易な表現では言い尽くせない。
台風被害から依然として片付かない約2週間後の坂本邸。私は14時のミッション開始まで、朝10時から坂本邸側溝のヘドロ掃除をお手伝いさせていただいた。長靴を履かず、あえてズボンの裾をまくりあげてスリッパというある意味無邪気なスタイルだ。
ヌルヌル滑る足場をスリッパで踏ん張り、スコップを突き刺す。グッと腰に力を入れ持ち上げて横にはねる。……。水を含んだヘドロは凄まじく重い。ひとかきするたびに異臭が鼻をつく。足もスリッパもドロドロだ。
普段使わない筋肉が悲鳴を上げる。大きなヘドロをすべて掻きだした後は、さらに細かい側溝に詰まったヘドロを小さなスコップで掻き出していく。ひとかきごとに巨大なミミズや見たことのない虫がクネクネ現れ。私の素足で這いまわっている。
永遠に終わらないと思ったが、何とか正午過ぎにヘドロをすべて掻き出した。後は土嚢袋に詰めるだけ。S本邸の復旧に応援に来られていた熟女2人は休むことなく力仕事に精を出し、土嚢袋も平気で担いでいる。恐るべし宮古熟女パワーに圧倒される。わが身の情けなさを呪う。
少し休憩して昼食に。こんな日はたっぷりとラーメンである。中央通にほど近い<たらふく>さんは9月17日時点で再開しておらず、その先の<ぴかいち亭>さんへ。
この店のチャーシューメンは絶品である。今朝から久々に体を激しく動かした。午後もたっぷり汗をかかねばならない。私はチャーシューメンの大盛にワンタンを加えた「チャーシューワンタンメン大盛」というメニューにない裏コマンドを作動させた。
出てきたブツは洗面器サイズ。スープが煌めいている。後半は苦しくなったが、無我夢中で熊啜。スープ1滴、チャーシュー1片、麺1本、ワンタン1枚残らず我が細胞と同化した。
腹をさすりながらお会計の際、マスターと少し話した。何故か満面の笑みである。台風の被害をお聞きすると、かなりの浸水被害だ。いつから再開したのか尋ねると「今日から」とのこと。台風被害の落ち込みよりも、商売を再開でき、ファンが再び店を訪ねる喜びの方が大きいのだろう。笑みの理由が何となく理解できた。
マスターのガッツと笑みをみて、疲れ切った私の体に再び光が差した。何かの力が蘇った。ヘドロの土嚢袋詰め。よしっ!一つどころか100ヶ以上の気合が入った。

チャーシューワンタンメン大盛。最高。

再開した<ぴかいち亭>さん。

恐るべし宮古熟女パワー。

側溝のヘドロ除去掃除。
(付記)
今回ご紹介した宮古市中央通商店街の守護神・S本姐さんが阪神大震災の被災地・神戸新長田へ昨夕(2016年9月25日)ご来臨。私が案内役を務め、御視察いただく。夜は前職時代の盟友・スキンヘッドM好氏と新長田南地区商店街の「ラストエンペラー」U田翁でご歓待。御年82歳ながら夜中1時ごろまで5軒ハシゴするラストエンペラーの元気ぶりに驚愕。S本姐さんが少しでもリフレッシュして宮古の復旧復興にこれからも光輝かれることを祈念いたします。




