2016年02月29日

第1400夜:揚げそばの発音【八戸(青森)】

 「中合 三春屋店」。八戸市中心市街地の百貨店である。その一角が飲食ゾーン(3店舗ですが)。宿泊ホテルのフロントに15時でも開いているラーメン店をお聞きすると紹介された。百貨店やショッピングモール内の飲食店は正直食指が進まぬが、やむおえぬ。

 朝から何も腹に入れていなかった私は、ぼんやりエスカレーターで5階へ。建物に入ると、改めて北国であることを実感する。外の半端ない寒さと反比例し、室内は思いっきり暖房が効いて汗ばむほど。私が生息する関西は暖房をガンガンつける習慣がなく、建物の中が寒い。

 ラーメン屋<のすけ>さんに飛び込む。八戸ラーメンという呼称はあまり聞かないが、青森県はラーメンも旨いはず。私の第二の故郷・宮古と同じく煮干し系の本場と記憶する。

 困ったことに、私の苦手な券売機スタイルだった。特に初めての店はメニューを吟味したいが、その余裕を与えられない。後ろで待っている人が居る時など尚更だ。しかも味噌、塩、豚骨、醤油、激辛系、つけ麺、煮干……何でもござれの雰囲気。余計に迷ってしまう。

 煮干選択に傾いたが、ナンバーワン人気が味噌とある。初めての店は券売機の一番左上が鉄則。私は「みそのすけ(メス)」を選択。ちなみにメスは味玉入りで、オスは玉子なしである。

 カウンターに腰掛ける。出来上がる間、メニューを今更ながら吟味する。ブツが運ばれてきた。なかなかのボリュームである。ネギもたっぷり。スープを啜る。当たり前だが、味噌味である。なかなかマイルドだ。麺もモチモチ。温まる。鼻水が出てきた。

 その数時間後。商店街H田理事長行きつけのラウンジ<カボチャール>へ5人で向かう。いい感じの美女揃い。あまり若くないところも好感度高し。3人の先客がおられた。そのお一人が商店街の重鎮様だった。

 着座するなり重鎮下ネタ全開である。そこに至る流れをよく覚えていないが、<餃子●王将>などでよく耳にする中華料理の呼称が話題に。コーテルイーガー、コーテルリャンガーなど店内を飛び交う独特の暗号を王将ファンなら必ず耳にしているはずだ。

 揚げ焼きそばなるメニューがある。皿うどんのようなものか。その揚げ焼きそばを中国語で発音すると「ザー●ン」というそうだ。あまり大きな声で●ーメンと連呼するものではないが、店内はザーメ●話で大盛り上がり。しかしあまり食欲の沸く単語ではない。揚げ焼きそばは好物だけど、しばらく食指が伸びなくなりそうだ。

 北九州(特に旦過市場、たまに黄金町)や筑豊飯塚、紀伊田辺、札幌などで商店街関係者らと呑む際は下ネタ率がかなり高い。しかし、東北で下ネタを耳にすることはあまりない。たまにあっても、かなりソフトだ。東北で耳にした久々にハードな直球下ネタに心が震えた。

 ママさんはピアノでカラオケの伴奏を生演奏して下さる。どんな音痴でもOKという。旅の恥は「かき」捨て。私は股の間ではなく、声量を増幅させる金属製のマイクを握った。

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2016年02月28日

第1399夜:続・サバとセンベイ【八戸(青森)】(後編)

 せんべい汁、家庭で常食しているものではないそうだ。観光客向けメニューのようだが、そのあたりが微妙らしい。

 地酒を冷やで乾杯。日本酒グラスを置く小鉢の上にせんべいが敷かれている。酒をこぼしながらせんべいをヒタヒタにし、それをツマミに呑むそうだ。これぞその土地ならではの知識と醍醐味。地元民と一緒でないと体感体験できない。

 隣のお客さんも含めワイワイ談笑していると、3種類のアテが並んだ。八戸沖の鯖の冷燻製とそのシメ鯖、そして南蛮味噌である。大阪の〆鯖(きずし)は酢が効きすぎている。これはこれで旨いのだが、限りなく生に近く、鯖の甘みを残している絶妙の酢加減は八戸ならでは。

 口に運ぶ。……。蕩ける。全くクセがない。すかさず地酒で追いかける。口の中で鯖がピチピチと跳ね始めた。冷燻も風味絶佳。これはピートの効いたウィスキーとも合いそうだ。

 あまりの喜びぶりの私を観て、会議所のK泉部長が若くて明るくて美人のママに〆鯖を少し炙って食べさせてあげてとリクエスト。出てきたブツ、感涙。外は温かく、中は冷たく。風味が倍加している。熱燗に切り替えてグイグイ。隣の別グループのお客さんとも返杯を繰り返す。

 熱くなってきた。汗がにじみ出た。冷たいハイボールを一気に半分流し込む。サウナから出た時のような爽快感である。

 メニューにせんべい汁がある。一人前はかなりのボリュームらしい。ハーフサイズのせんべい汁を特別に拵えて下さった。時間は1時を大きく回っている。酒と話は尽きない。ママさんは八戸せんべい汁を普及する会のメンバーらしく、これは期待が高まる。

 ブツが運ばれてきた。呑んだ後のシメに最高なビジュアルである。澄まし汁にたっぷりの刻み野菜、そして下に餃子のような風情を醸し出すせんべいが眠っている。

 スマホで撮影しようとしたら、ママがちょっと待ってと声を掛けてくる。ママが箸で椀の底からせんべいを浮かび上がらせた。グルメ雑誌のようなビジュアルに。すかさずカシャッ。嬉しくなるノリの良さである。

 さっそく初のせんべい汁に挑む。全国1位の実力はいかに。まずは汁。……。優しい。柔らかい。深い。それは、一つの森である。それは、一つの山である。それは、一つの風である。それは、一つの土である。それは、一つの天である。

 普段のシメは濃厚ギトギト系で鍛錬しているが、このあっさり味は五臓六腑に沁み渡る。出汁が染み込みトロトロになったせんべいが旨い。うどんでもラーメンでもそばでも水餃子でもワンタンでもない、独特の食感。夜中2時、私は全国一の実力の前に居住まいをただした。

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せんべいがコースターに。

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日本屈指のB級グルメ「せんべい汁」。
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2016年02月27日

第1398夜:続・サバとセンベイ【八戸(青森)】(中編)

 日本酒乾杯の後、3本のピンクがかったボトルがテーブルの上に置かれた。「三戸のどんべり」。9代目が持ち込まれた激レアの純米にごり酒である。

 キャッチフレーズが踊っている。「それはほんのり甘酸っぱい初恋の味」。にごり酒とは思えぬノリノリぶり。ピンクかかった初恋の味だが、着色料は使っておらず、原料は米と米麹のみ。米麹に独特の配合を施しているのだろう。

 さっそく試させていただく。……。胸がキュンとした。確かにほんのり甘酸っぱい。頭の中が四半世紀ほどタイムスリップ。アルコール度数12度なので呑み過ぎると酔っ払うだろう。

 私には強い味方があった。商店街H田理事長から頂いた「肝助」なる最強の錠剤。これを事前に飲んでおくと酔っ払わないらしく、翌朝の二日酔いもないそうだ。その代わり自分の限界を通り越して呑み過ぎてしまうという頼もしくも厄介なシロモノである。

 私自身「ドンペリ」を呑んだことはあるのだろうが、思い出せない。あっという間に皆で初恋の味を呑みつくした。その後はオヤジの味である焼酎を鯨飲し続けた。

 割烹料理に舌鼓を打ち、H田理事長いきつけのラウンジにて下ネタで大盛り上がり。途中、東京の某フォーラム懇親会でお会いした<はっち>に努めるY沢氏を呼び出す。

 時間はあっという間に夜中1時前。ラウンジを出た。私はかなり呑んでいるが、`肝助´効果が持続しているようで全く酔いが回ってこない。最後は屋台村でシメたくなった。どこも開いていなければ、昼に食べ損ねた煮干しの効いた八戸ラーメンを啜りたい。

 八戸の皆さんは市も会議所も商店街もホントに人懐っこく、初対面と思えぬほどフレンドリーかつホスピタリティに溢れている。先ほどのラウンジで解散と思いきや、私を含め5人全員が屋台に付き合って下さることに。

 「みろく横丁」へ。閉まっている店もあれば、煌々と灯りがともっている店もある。会議所行きつけの<わが家>さんへ。7人座れば満席で、すでに二人の先客が。すかさず脇に詰めて頂ける。この協調性が屋台の魅力である。

 八戸の屋台は博多と異なり屋外で呑むと凍死するから、室内の密閉空間で杯を重ねる。人が大勢いるためか、暑いほどである。YシャツどころかTシャツ一枚でも寒くなさそうだ。

 カウンターに着座する。注文は常連たちにお任せ。八戸入りして、まだ食していない私の中の八戸名物が二つあった。一つは鯖。もう一つはB‐1グランプリを制したせんべい汁である。

 鯖の旨さは敬愛するラズウェル細木先生の我が愛読バイブルコミック『酒のほそ道』で紹介されており、改めてお手合わせ願っていた。せんべいは本日一軒目で3種類をバリバリボリボリ齧ったが、その「汁」は未啜である。〔次夜後編〕

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みろく横丁。
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2016年02月26日

第1397夜:続・サバとセンベイ【八戸(青森)】(前編)

 「三戸のどんべり」。八戸でなく三戸。ドン「ぺ」りではなく濁音でドン「ベ」リ。遊び心溢れる、大昔から八戸で酒蔵を営む酒造メーカー<八戸酒類>さん幻のにごり酒である。

 2015年12月中旬。私は3年半ぶりに北東北の大都市・八戸に訪れた。骨身に沁みる寒さだ。仕事では初めてである。

 3年半前、あまちゃんブームに沸く前の岩手県久慈市から青森へ向かう途中、八戸で一泊した。その日はスゴい人だった。駅車内も駅からの道も人が鈴なり。何の予備知識も無かったのだが、その日は「三社大祭」という東北屈指の大きな祭り当日。よくホテルを確保できたものである。屋台街はどこもいっぱい。以前このバカブログでも八戸編を幾度か取り上げた。

 八戸中心市街地はチェーン店が目立つものの、空店舗は少なくとも1階部分でほとんど見当たらない。通行量も十分にある。八戸はどんどん中心市街地の開発整備が進んでいる。民間開発と行政開発が高レベルで見事に融合。3年後には屋根のある巨大な広場も完成する。

 企業の進出も進み、若者を千人単位で雇用が進んでいるそうだ。街中の拠点施設「八戸ポータルミュージアム はっち」は大人気である。「8・八」。いわゆる末広がりのハチ。八戸には「はち」に拘ったモノやコトが無数にある。

 中心部は12の商業団体で構成されている。朔日町、三日町、六日町、八日町、十三日町、十六日町、十八日町、廿三町、長横町、番町、本八戸駅通り、鷹匠小路。マップと対比せねば分かりにくいが、みろく横丁は「三日町」と「六日町」を繋ぐので「みろく」。二つの町名の末尾の数字を足すとすべて「9」になるという結界ぶり。「8」でないところがさらに不思議だが。

 人口20数万人の地方都市だが、いい意味で閉鎖商圏。この規模では珍しく中心市街地内で二つの百貨店が共存している。近隣の似た規模の都市である青森、弘前、盛岡などはあまり眼中にないようで、仙台か東京が買い回りや娯楽のライバルという。

 商店街の代表者、市、会議所の主要メンバーが集まって開催された勉強会終了後の懇親会は大正時代の建築物を割烹に改装した<ほこるや>さんへ。大正ロマンの香りが溢れている。

 酒処・八戸らしく日本酒で乾杯。メンバーに八戸酒類さんという大昔から続く蔵元の当主(9代目)が居られ、その9代目が持ち込まれた極上の市販していないと思しき冷や酒だ。どっしりしているが、すっとしたキレがある。いくらでも呑めそうだ。

 割烹らしくお品書きが添えられていた。「シャモロック」というブランド鶏が強調されている。先付が「マグロ山かけ」と「茶碗蒸し」、造りが「スズキ」と「赤エビ」、焼物が「タラねぎみそ焼」、串焼が「シャモロックねぎ間」と「美保野ポークバラ」、鍋が「シャモロック水炊き鍋」、替鉢が「牛タタキサラダ」、〆の食事が「シャモロック塩ラーメン」。〔次夜中編〕

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三戸のどんべり。

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民間再開発が進む八戸市中心市街地。

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シャモロック御膳。
posted by machi at 07:28| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月25日

第1396夜:胃腸にやさしい「豚骨」漢方スープ【飯塚(福岡)】

 前夜の濃厚ラーメンで胃に鉛が詰まっている状態の午後遅く。同じ様な食生活を昨日筑豊飯塚の中心市街地で過ごしたはずのK保氏と筑豊麺ドライブに繰り出す。

 軽快に車を走らせること約10分。途中、うどん、ちゃんぽん、ラーメン屋が視界に入ってくるのを軽く無視し、向かった先は<王ちゃん>。ラーメン屋では珍しい緑色の暖簾に不思議な2文字が刻まれている。「よもぎめん」と「漢方スープ」。本当にラーメン屋なのだろうか。

 引き戸をがらりと開け、店内へ。カウンターに陣取り、張り出されたメニューをチェック。ラーメン500円がベースで、味玉が600円、チャーシューメンが700円、替玉150円。低価格でコスパが良さそうである。しかもライスは無料という剛毅さだ。氏は味玉と無料ライス、私はチャーシューメン一択。何となく餃子も1人前追加する。

 氏と談笑しながら店内を見渡す。シンプルで清潔である。張り紙の「胃腸にやさしい漢方スープ」という字体が踊っている。私の肝臓と胃が日々の酷使に耐えきれずしくしく忍び泣きしているのが体内から伝わってくる。風邪が完治していないのにも関わらず真夜中まで鯨飲している私にぴったりのスープである。

 ブツが運ばれてきた。チャーシューが鉢一面に咲いている。それより驚いたのが、スープの色。どう見てもとんこつ色である。しかし湯気がほのかに漢方の匂いがする。

 チャーシューを1枚脇に寄せる。黄色がかった白濁豚骨の海からのぞかせる緑色。よもぎめんである。よもぎを練り込んだうどんは北九州小倉で実食済だが、よもぎを練り込んだラーメンは初めて。目の前にありえないSFチックなビジュアルが展開されている。

 金星探索機あかつきの気分になりながらまずはスープを一啜り。……。とんこつである。しかし、漢方である。初めて味わう独特のコラボレーション。面白く、旨い。緑の麺を一啜り。完全に豚骨系細麺固めである。ほのかによもぎの風味がするような気がするものの、風邪気味で味覚がボケている私に繊細な違いは分からない。

 チャーシューも半端ないボリュームだが、しっかりとした味付け。これだけで御飯が進みそうだが、とても無料ライスをオーダーする調子ではない。餃子をツマみながら漢方の効能を体中に沁み渡らせる。

 二日酔いの翌昼、これまで様々な麺を啜って体調を快復(または悪化)させてきたが、新たな選択肢が増えて喜びに絶えない。豚骨が胃腸にやさしいとは初めての知見である。

 胃腸に優しい豚骨漢方スープとよもぎめんという健康第一な相思相愛カップルにたっぷりチャーシューいう悪女がどのような三角関係を私の胃腸の中で生じさせるのか、興味がないこともないけれど。

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斬新な暖簾。

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不思議なビジュアル。
posted by machi at 08:06| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする