宮古に限らず三陸全般はラーメン帝国。たまに蕎麦は見かけるがうどんはめったに遭遇しない。うどんは家で食べるものであって外食の対象ではないと教えられた。
持ち帰り宮古ラーメンの奥深さと魅力にハマった私は、いつものように駅前商業ビル<キャトル>一階食品スーパーを物色していた。特に宮古の2大麺メーカー「小笠原製麺所」「ハニー食品」に虜である。宮古滞在中はホテルなので複雑な調理はできず、様々な種類の麺を買いだめスーツケースにぶち込んで、自宅でニヤニヤしながら調理して啜っている。
ある冬の昼。宮古2大メーカーがそれぞれアルミ鍋焼うどんを発売していることを知った。カップ麺ならホテルでも容易だが鍋焼うどんは困難。自宅まで持ち帰り、啜り比べを試みた。
まずはハニー食品から。売値は300円。具の充実とこだわりが凄まじい。蒲鉾が2枚だが、そのうち1枚はナルト。麩と関西立ち蕎麦系の衣97%天ぷらも嬉しいが、刻みネギが生だったことには驚いた。さらに度肝を抜かれたのが、まるまる1ヶのゆで卵。ナルトとゆで卵というあたりに、ラーメン王国のプライドが垣間見える。
鍋に水を張りコンロに火をかけ、関西風な細うどんをさっと茹でながら付属の3種類の出汁を入れる。昆布だし、鰹粉、醤油タレ。実に芸が細かい。すぐに出来上がった。
出汁の色は透き通った関西風。啜ってみる。……。味も昆布だしが効いた関西風。関西独特の細うどんの再現力も素晴らしい。天ぷらが溶けだし油のコクが出汁とうどんに乗り移り始める。本格的である。関西出身の宮古長期滞在者は、この鍋焼うどんを啜れば勇気百倍だろう。
小笠原製麺所の売値は283円。たまたま安売していたようなので定価は分からない。中の具はナルト、蒲鉾、麩(大きめ)、生葱は同じだが、相違点もある。きしめんのごとき太麺、関東かき揚げ風の天ぷら、ゆで卵がないことが大きな違いだ。出汁も3種に分かれていない。
同じ手順で作っていく。瞬く間に完成。思いっきり出汁の色が醤油色。いわゆる関東風である。啜ってみる。……。思いっきりカツオベースの濃口醤油。細うどんはツルツルだが、このうどんはモチモチ。私は関東の立ち麺屋でうどんを啜っている気分になった。
西日本人はハニー食品の、東日本人は小笠原製麺所の鍋焼うどんに軍配を上げるだろう。私は数年前なら迷わずに関西風のハニーに惹かれていたが、まちづくり旅芸人生活も6年目に突入。関東風のパンチあふれる濃厚風味の良さも分かってきた。
宮古人以外は入手が極めて困難な2大アルミ鍋焼うどんだが、ぜひ啜り比べていただきたい。日を置かずに啜ると、その違いが強烈にはっきりする。どちらも旨いことには違いないけれど。

ハニー食品様の作品。

小笠原製麺所様の作品。
(付記)
本年もこのバカブログを御笑覧賜り、誠にありがとうございました。本年最後は、年越しそば代わりのアルミ鍋焼うどんネタで。ちなみに今回は2年ほど前に書いていた死蔵寸前ネタをピックアップ。ネタのストックは減るどころか増える一方。5年以上前に書いて完全に死蔵になったネタも山ほど。来年も緩急ありますが続けていきたいと思います。銀河系30名ほどのセニョール&セニョリータ、大晦日もご安全に。