2015年09月30日

第1302夜:五番街の涼感【東大阪(大阪)】(後編)

 私が今回ブランドーリ商店街とご縁をいただくキッカケとなったのが、2012年から13年にかけて実施した東大阪市内の商店街対象にした元気グループコーディネート事業(主催:東大阪市)。前回は近鉄瓢箪山駅周辺の商店街だったが、1年ブランクを置いた第2弾は布施駅前のブランドーリ三番街と四番街の若手で構成する「三・四会」である。

 四番街が直営するマンション1階のセットバックした開閉屋根付オープンカフェ<五番街>で、四番街のK茂理事長と若手リーダーK脇氏らとヒアリングを兼ねた意見交換。炎暑だが、<五番街(オープンカフェ)>は涼しい風が吹き抜けて最高の気持ち良さ。汗がすっと引く。

 涼しいのだが蚊が襲ってくるので、理事長は店の中から蚊取り線香を取り打してセッティング。勝手知ったる我が家という雰囲気だ。

 店から一人のオバ…じゃなかった貴婦人がマシンガントークをかましていく。さすが府内屈指のディープスポット。ところがこの貴婦人、理事長曰く布施だけでなく東大阪で最も著名な市民(商業者)という。全国に講演でぴっぱりだこらしい。以前は商店街で煙草屋を営んでいたそうだが、なんと2、3坪の店で年商1億数千万円を売り上げていたという。恐れ入る。

 K茂理事長から布施地区商店街における様々な歴史や取組の経緯をお聞かせいただく。7月と8月に隔週開催される「土曜夜市」は35年を数える一大恒例イベント。凄まじいほど来場者が殺到するそうだ。商店街周辺はマンションが雨後の筍のごとく新たに建設されている。

 極めてユニークなのが、四番街の一部が東大阪市ではなく大阪市であること。市を跨いでいるアーケードも珍しい。

 十数年前まで、布施は大阪府内で最もひったくり被害が多かったという。大阪一ということは、自嘲気味に言われていたが自他とも認める日本一。もしかすると世界でもベスト10に入っていたのかもしれない。

 商店街で買物する際、自転車の買い物かごに買い物袋を入れたまま店に入ると、あっという間になくなっているそうだ。女性の夜道の一人歩きは厳禁で、男性社員が駅のホームまで同行せねばとんでもないことになるという。戦前やせめて昭和の話のようだが、平成12年前後の話。つい最近である。

 理事長らは警察や行政と懸命な努力と工夫を重ね、駅前に誰がどう見ても交番にしか見えない「立ち寄り所」を設置した。この抑止力は凄まじく、犯罪件数は一気に減り治安が良くなりはじめたという。ひったくり日本一の座からも転落したそうだ。

 仕事柄、かなりディープスポットに足を運ぶ。布施駅前商店街、壮絶な犯罪対策の歴史である。ある意味、東日本大震災の被災地よりタフである。やってやるぞという気合がみなぎる反面、少し引いてしまいそうになったけれど。

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四番街にある喫茶<五番街>。

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犯罪を激減させた交番にしか見えない立寄り所。
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2015年09月28日

第1301夜:五番街の涼感【東大阪(大阪)】(中編)

 様々なお得なセットメニューを無視し、「金の麦味噌」に麺とチャーシューを別途大盛。初めての店かつイチゲン一人飛び込みの際は何も足さずに定番一択で様子を見るのだが、暑さと空腹で正常な神経が働いていないようだ。

 ブツが仕上がるまで水をがぶ飲みしながら店内をキョロキョロ。様々な雑誌やTVにも紹介されている人気店のようだ。店員の若いお兄さんの接客も実に好もしい。

 店内は8割の入りだが、時間は13時半を回っている。客は皆どうみても地元民。周辺は飲食店が密集している激戦地であることを考慮すると、最初はハズしたかと落ち込んだが、思わぬ大当たりかもしれない。

 期待が高まってきた時、ブツが目の前に運ばれてきた。……。掛け値なしに金色に輝いている。思わず見とれた。口が半開きになった。ネギも白ネギと青ネギが2種類トッピング。チャーシューも分厚くてたっぷり。麺の神様は炎天下を巡礼している私も見捨てなかった。

 胡椒を振りかけ、まずはレンゲでスープを一口。……。ほほう。今まで啜ってきた味噌ラーメンとは全くことなる。麦味噌というのが初めてだったが、甘みが強い。しかし、和ではなく中華の味。刻み玉葱が独特のアクセントをかましている。

 麺に挑む。太目である。ガツンとした小麦の風味。タフなコシ。これが熱々の麦味噌に絡むと旨さが確変する。葱のシャキシャキも嬉しい。チャーシューは柔らかく、食べ応え十分。チャーシュー増し200円はお得だ。後は一気呵成に熊啜。

 このスープ、最初の印象よりも食べ進めるほど旨くなる。飽きることなく、ますます夢中になる。これは中毒性が高い。綺麗さっぱり熊啜。大満足で店を出る。

 外へ出ると、一気に汗が噴き出してきた。汗がにじむというより、シャワーを浴びたかのように頭皮からこぼれ出す。ヘロヘロと歩いて布施駅に戻る。東大阪市で商業担当10年目に突入したN部氏と新卒採用で商業担当になり4年目に突入したK田女史と合流。構内で珈琲を呑みながら打合せし、駅北側にアーケードが伸びるブランドーリ商店街を視察する。

 ブランドーリは駅に近い一番街から四番街まで。シロウトさんは恐らくその違いに気づかず一本の商店街として通り過ぎるだけだろうが、見分け方は簡単。アーケードのデザインが異なるからだ。昔は五番街まであったそうだが、現在は四番街に吸収(合併)されたという。

 賑わっているが、自転車の通行が凄まじい。徒歩と自転車の比率は自転車の方が高いように感じられる。しかも、中々のスピード感である。

 一番街は呑み屋が多く、昼間から赤ら顔のオヤジで大賑わい。商店街内外にはマンションも多く、商店街が整備した立派なホールもある。土地柄か、自転車屋も多い。〔次夜後編〕

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<細見商店>さんの「金の麦味噌チャーシューメン(大盛)」。中毒性の高い極みの逸品。

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近鉄布施駅北側「ブランドーリ」。

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一番街は魅力的な安居酒屋が林立。
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2015年09月27日

第1300夜:五番街の涼感【東大阪(大阪)】(前編)

 ブランドーリ。東大阪市最大最強の商業集積地・近鉄布施駅の北側に伸びる全長600mほどのアーケード商店街である。駅に近い方がブランドーリ一番街で、四番街まで繋がっている。駅南にも商店街が広がっている。

 2015年7月下旬。複雑極まりない布施駅で下車する。ホームも茹だるような凄まじい猛暑である。余談だが、布施駅の構造のややこしさもJR九州・折尾駅には遥かに及ばない。

 布施は私にとって通過駅だった。準急列車で八尾まで一駅。毎週のように八尾に通っている私にとって布施はなじみの駅だが、用事がないので降りることはめったにない。

 2012年から2年間、近鉄瓢箪山に月1回通っていた。その折も布施は通過駅。これまで布施で降りた回数は2回。1回目は瓢箪山からの帰り路、どこかで一人酒をやっていこうと放浪の末にイチゲン飛びこんだ天ぷら屋<万両>さん。

 2回目は八尾へ向かう途中、布施で乗り換る機会があった。せっかくなのでラーメンを啜るべく、真っ先に視界に飛び込んできた<二両半>さんへ。このバカ文章を書くまで全く気付かないし意識することもなかったが、どちらも「両」が付いている。

 時刻は13時半。バタバタで朝から何も腹に入れていない。このラーメン店も旨かった記憶があるものの、せっかくなので他の店に突撃したい。高架下沿いを西へ。汗だくで歩く。私は真夏でも基本的に熱い麺を啜る。喫茶店に行っても真夏でもホットである。

 布施近辺、というより東大阪は中小企業の工場が多く、労働者のためのラーメンと言われる「高井田系」があるという。高井田は地名らしいが、どこが高井田か分からない。

 3分ほど歩き空腹を極めた頃、<天下一品>を発見。こってり味が頭をよぎる。何も布施まで来て啜らずともよいが、早くどこかに飛び込んで涼みたい。妥協しかけた瞬間、たまたま定休日だった。麺の神は私の日和見をあざ笑うかのように修業を強いる。巡礼の旅は甘くない。

 さらに2分ほど歩くと<細見商店>というラーメン店らしくない屋号だが思いっきりノボリと看板でラーメンを主張している店を発見。吸い寄せられるようにフラフラと飛び込んだ。

 カウンターに座る。目の前に貼りだされたメニューを見る。中華、ブラック、鶏白湯、つけ麺、和風とバリエーションに富んでいる。一瞬、店選びをしくじったかと後悔した。

 様々な味を用意しているラーメン店はハズレも多い。ハズレというより、特徴が薄い。ゆえに中毒性も低い。醤油なら醤油、豚骨なら豚骨。店側の自信あふれる一択勝負に対峙することに悦びを感じている。正々堂々真っ向勝負が信念。これだけメニューがあると迷ってしまう。

 こういう時は左上、もしくは店のオススメ。「金の麦味噌」である。これだけ強調の仕方が異なる。味噌ラーメン押しとは関西では珍しい。〔次夜中編〕

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<二両半>さんの「チャーシューメン定食(大)」。

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居酒屋のごとき店構えの<細見商店>さん。
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2015年09月26日

第1299夜:天ぷら入り肉吸【東大阪(大阪)】

 <万両>(たしかこのような屋号)。イッパイやろうと東大阪・近鉄布施駅前の呑み屋ゾーンをフラフラしている際にふらりイチゲン予備知識ゼロで飛び込んだ路地の天ぷら屋さんである。一般の天ぷら屋は敷居高いが、看板に記された`大衆天ぷら´という嬉しきキャッチフレーズが心理的ハードルを下げてくれる。

 ドアを開ける。店内は活気にあふれている。カウンターに腰掛け、サッポロ瓶ビールを注文。一人天ぷらには生ではなく瓶が相応しい。ホワイトボードに書かれた刺身やその日のオススメを眺めていると、ビールが運ばれてきた。……。思わず心の中でオウッとつぶやいた。黒ラベルではなく、ホワイトラガー(白ラベル)だ。一気にテンションが上がる。

 卓上にはカレー塩や岩塩、醤油やソースもある。ソースの常備に大衆的頼もしさが感じられる。揚げたて天ぷらはダシか塩だが、冷えた天ぷらにはソースが最高のパートナーとなる。

 天ぷらは1ヶ80円から300円程度。種類は極めて豊富で、天ぷらタネとして初めて目にするものもある。欲しいタネを欲しいだけ卓上の用紙に記入して手渡すスタイルだ。

 たっぷりの大根おろしと甘口辛口2種類のツユがポットに入って運ばれてきた。そして、「今日は混んでて揚げるのに時間がかかっているので、これ、サービスです」と運ばれてきた牛蒡チップス。嬉しい心配りである。ビールが一気に進み始める。

 揚げたてがドシドシ運ばれてきた。蓮根、牛蒡、茄子といった定番をカレー塩や岩塩、ダシと色々試しながら熱々を頬張る。思わず目を細める。油っぽくなった口の中を白ラベルが洗い流していく。大蒜も珍しいが、ホルモンであるアカセンの天ぷらは極めて稀。コクと脂のデュエットが口の中で奏でられる。

 大葉の天ぷらをパリパリしつつ、熱燗へ移行。天ぷらの大ネタである穴子はカレー塩が見事。帆立は殻つきのまま揚げられた迫力の一品。牡蠣は大ぶりが3ヶ。海鮮系のネタが売り切れて品薄なので、多めにサービスして下さった。本当にありがたく気持ちよい接客である。

 他にも変わりダネを攻めたいが、腹も張ってきた。シメは汁ものが啜りたいが、麺抜きが好ましい。天つゆを啜ろうとする暴挙を選びそうになったが、「肉天吸い」を発見した。

 「肉吸」といえば関西難波が誇る<千とせ>の大名物で、いわゆる肉うどんのうどん抜き。私も大好物で、肉吸とビールの組合せは悶絶もの。汁で酒を呑むことを私は長年愛している。それに天ぷら屋らしく「天」が付いている。「わかってらっしゃる!」と叫びそうになる。

 ブツが運ばれてきた。……。目を剥いた。大きな揚げたて海老天が2匹も浮かんでいる。天かすと思い込んでいただけに喜び100倍。肉も甘めの汁にたっぷりで、すき焼のごとく野菜も豊富。これを肴に熱燗が進む。シメのはずが、思わず熱燗を追加してしまった。

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サッポロラガーでスタート。

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続いて熱燗へ。

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ハイボールで気分転換。

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シメは汁モノで。
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2015年09月25日

第1298夜:延命山を知っていますか?【東近江(滋賀)】

 延命公園。近江鉄道八日市駅裏側(アピアを含めた繁華街と逆側)に近接する公園である。八日市の霊峰・延命山に整備され、ソメイヨシノが1000本も植えられているという。

 2015年6月下旬、東近江市の中心市街地活性化を担う八日市商店会連盟様と東近江アーバンデザインセンター準備会様が連携し、商店街(来店)アンケート調査を実施。八日市駅前近代化(協)、本町商店街(振)、八日市大通り商店街(振)加盟店舗の来店者が主な対象である。

 普段の来街交通手段、商店街に訪れる機会が多い買物時間帯や曜日および来街頻度、最寄品(食料品など)や買回品(服飾雑貨など)の購買場所……。母数はともかく、数値から様々な事象を読み取ることができる。

 このテのアンケートで、私自身あまり意味のない虚しさを感じる設問がある。「どのようなお店が欲しいですか」「どのような施設が欲しいですか」というヤツである。それらお伺いしたところで、実現する可能性は限りなくゼロに近い。実際、そのニーズを満たすことができても、積極的に利用されるかは分からない。自主的に改善、実現可能な質問に絞るべきである。

 一方、ぜひ聞いてみたい設問がある。「知名度」である。これまでに取り組んできたイベントや催事を知っているかどうか、そして、そもそも商店街の正式名称を知っているかである。

 一般的に中心市街地とされるエリアは、日本全国問わず複数の商店街が網の目のごとく張り巡らされている。それぞれに名称がある。平均して6組合程度だろうか。

 商店主(特に役員)の方々はこれらの違いに敏感だが、普段から頻繁に中心市街地 の商店街を利用する地域住民ですら商店街名を意識していないことが大半である。販促やイベントチラシを製作する際、よく商店街名だけを大きく表記して地図を乗せていない成果物を目にすることがある。目を通した地域住民は「どこや?」と戸惑っている実情がある。

 今回の八日市アンケート。麺をこよなく愛する私にとって自由意見で「うどん」というキーワードが頻出していたことに驚愕。八日市を歩いても、うどんの街という雰囲気は皆無だからだ。八日市最大の知名度を誇るイベントが「二五八祭」。以下、「ジャズフェスティバル」「聖徳まつり」「本町パサージュ」「本町土曜夜市」と続く。私はどのイベントも未見なのが残念だ。

 霊峰・延命山にある「延命公園を知っていますか」という設問もあった。知っている89%、知らない11%。約10%も「知らない」ことに商店主にとって意外性があったようだ。

 延命公園の活用案もアンケートで問うた。百花繚乱の回答である。駅にほぼ直結と利便性も高い。しかし、桜の時期を除き地元民はほとんど足を運ばないそうだ。その理由をアンケート分析会に参加の商店主らに私はお聞きした。理由は明快。「誰も人がいないので、怖いから」。

 「延命」という有難い名称を戴いている、延命山の延命公園。スピリチュアルスポットとして世界遺産にいつか登録されることを期待してやまない。

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桜満開の延命公園(市HPより無断転載)
posted by machi at 08:07| Comment(0) | 滋賀県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする