ある冬の昼下がり。北九州小倉到着したゴルゴマニアの私は、若松に向かう前にどうしてもこの映画を観たかった。内容など予備知識はゼロ。劇場は平日の昼間だが老老男女で超満員。さすがゴルゴ、お年寄りにもスゴイ人気だなと感慨深かったが、満員の理由はどうやらゴルゴそのものではないようだ。(ちなみに2本立て同時上映は『ブラックレイン』)。
健さん主演の実写版『ゴルゴ13』。どう考えてもバカ映画かと思いきや、今では考えられぬオールイランロケ(1973年)を敢行した超大作。出演している日本人は健さんだけで、健さん以外すべて吹き替えというシュールすぎる編集だ。冒頭からクラクラする魅力が溢れている。
ハードなタッチの冒頭シーンの後、ホテルで依頼人がゴルゴに接触し依頼する。握手拒否、背後に立つな、美女との情事、依頼人のクドクドした説明を黙らせるなどお約束シーン満載。詳細は割愛するが、運ばせた水の使い方は原作ファンの私ですら思いつかぬ見事な演出だ。
標的とその影武者が多数混在しているシーン。ゴルゴは本物を見分ける際、あるものを狙撃してその反応をチェックする。そのシーンに初めてゴルゴの世界に接したと思しき会場の老老男女から驚嘆のどよめきが。しかし、これぐらいで驚いているようではまだまだである。無駄な殺しはしないところがゴルゴのヒロイズムでもある。
ヒロイン役の女性諜報員はかなりお年を召した雰囲気だが、顔の造りからシワなどがそのままさいとう劇画から飛び出したよう。ゴルゴはヒロインが窮地に陥っても軽く無視。観客は引いているようだが、冷静さ冷徹さを見事に再現している。
前半の情事シーンでヒロインの女性諜報員による思わせぶりな仕草があった。いかにもゴルゴを裏切りそうだったが、特に何もなし。椅子からずり落ちそうになった。
ラスト。敵ボスを射殺した後、ある生物もついでに撃ち殺す。これはゴルゴの愛情と受け取るべきなのだが、これまた観客はドン引きのご様子だ。
ツッコミどころ満載の珍作だが、拷問シーンはなかなかリアル。その窮地を脱する健さんのアクションの切れが良い。さいとう先生が脚本に加わっているため、驚くほどゴルゴの世界観を忠実に再現した大作に仕上がっている。しかし、健さんはゴルゴというより健さんそのまんま。組事務所への出入りにしか見えないところが健さんの魅力でもある。
オールイランロケ。アケメネス朝ペルシャの古代都市ペルセポリスでのクライマックスは、思いっきり遺跡の中っぽいところで激しい銃撃戦。世界遺産登録前(登録は1979年)の撮影だから許されたのだろうか。まだ未観の方、DVD化されているか知らぬがぜひご覧あれ。

実写版のゴルゴ(健さん)が大暴れ。