2015年03月31日

第1183夜:もし健さんがゴルゴだったら【Cinema】

 『ゴルゴ13』。50年近くに渡り連載が続いている説明不要の不朽の名作劇画である。一時期アニメ版も放映されていたが、幻の実写版が存在する。それも主演は健さんである。そんな幻の作品が名画座<小倉昭和館>にて健さん追悼企画として限定一週間上映されていた。

 ある冬の昼下がり。北九州小倉到着したゴルゴマニアの私は、若松に向かう前にどうしてもこの映画を観たかった。内容など予備知識はゼロ。劇場は平日の昼間だが老老男女で超満員。さすがゴルゴ、お年寄りにもスゴイ人気だなと感慨深かったが、満員の理由はどうやらゴルゴそのものではないようだ。(ちなみに2本立て同時上映は『ブラックレイン』)。

 健さん主演の実写版『ゴルゴ13』。どう考えてもバカ映画かと思いきや、今では考えられぬオールイランロケ(1973年)を敢行した超大作。出演している日本人は健さんだけで、健さん以外すべて吹き替えというシュールすぎる編集だ。冒頭からクラクラする魅力が溢れている。

 ハードなタッチの冒頭シーンの後、ホテルで依頼人がゴルゴに接触し依頼する。握手拒否、背後に立つな、美女との情事、依頼人のクドクドした説明を黙らせるなどお約束シーン満載。詳細は割愛するが、運ばせた水の使い方は原作ファンの私ですら思いつかぬ見事な演出だ。

 標的とその影武者が多数混在しているシーン。ゴルゴは本物を見分ける際、あるものを狙撃してその反応をチェックする。そのシーンに初めてゴルゴの世界に接したと思しき会場の老老男女から驚嘆のどよめきが。しかし、これぐらいで驚いているようではまだまだである。無駄な殺しはしないところがゴルゴのヒロイズムでもある。

 ヒロイン役の女性諜報員はかなりお年を召した雰囲気だが、顔の造りからシワなどがそのままさいとう劇画から飛び出したよう。ゴルゴはヒロインが窮地に陥っても軽く無視。観客は引いているようだが、冷静さ冷徹さを見事に再現している。

 前半の情事シーンでヒロインの女性諜報員による思わせぶりな仕草があった。いかにもゴルゴを裏切りそうだったが、特に何もなし。椅子からずり落ちそうになった。

 ラスト。敵ボスを射殺した後、ある生物もついでに撃ち殺す。これはゴルゴの愛情と受け取るべきなのだが、これまた観客はドン引きのご様子だ。

 ツッコミどころ満載の珍作だが、拷問シーンはなかなかリアル。その窮地を脱する健さんのアクションの切れが良い。さいとう先生が脚本に加わっているため、驚くほどゴルゴの世界観を忠実に再現した大作に仕上がっている。しかし、健さんはゴルゴというより健さんそのまんま。組事務所への出入りにしか見えないところが健さんの魅力でもある。

 オールイランロケ。アケメネス朝ペルシャの古代都市ペルセポリスでのクライマックスは、思いっきり遺跡の中っぽいところで激しい銃撃戦。世界遺産登録前(登録は1979年)の撮影だから許されたのだろうか。まだ未観の方、DVD化されているか知らぬがぜひご覧あれ。

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実写版のゴルゴ(健さん)が大暴れ。
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2015年03月30日

第1182夜:キネマの都【小倉(北九州)】

 <小倉昭和館>。2本立1100円という日本屈指にステキな名画座である。北九州の台所・旦過市場に隣接。シネコン隆盛やメディアの多様化で名画座は絶滅寸前だが、名画座の灯りを消してはならぬ。私も暇を見つけては小倉だけでなく2本立て名画座に足しげく通っている。間違いなく言えることは、映画館のある街は文化度が高い。

 北九州に毎週通っている私は、小倉連泊や市内のホテルを転々と移動するか小倉に連泊する。ミッションはほぼ18時以降。急ぎ仕事の際はホテルカンヅメか喫茶店ハシゴでパソコン猿打しているが、ヒマな時は映画館へ。

 小倉にはシネコンがいくつかあるが、昭和館の魅力には叶わない。上映作品はいずれも名作揃いで2本鑑賞するとストレスも吹き飛ぶ。数か月前の小倉3連泊では、昭和館で4本も鑑賞してしまった。この映画館ではスタンプを5つ貯めると1回環賞無料。私は神戸市民なのだが何故か2回もカードが満点に。嬉しさと恥ずかしさが同居した複雑な気分になる。

 北九州は映画のロケ地としても日本最強である。北九州フィルムコミッション様のフットワークと力強さは他の追従を許さない(お会いした事ないですが)。ドラマ『MOZU』もすごかった。様々なプロジェクトが現在も水面上下で進行しているようだ。

 前職の神戸新長田時代。神戸フィルムコミッションに何人か知り合いがおり、新長田でのロケ撮影のお手伝い経験はあれど、制作側の映画関係者と直接お会いする機会は皆無だった。

 ある冬の夜。小倉黄金市場商店街近くの鉄板焼屋で商店街や会議所、市役所の皆さまと呑んだ後、商店街K松会長&S開氏と小倉駅近くのカラオケパブへ。かなり広くソファーもフカフカ。ちなみにママは現役の演歌歌手であるという。

 寛いでいると、K松会長の友人の映画プロデューサー氏が来店。いかにも業界人のごときオーラがにじみ出ている。その横には勝S太郎氏にしか見えぬ年配の迫力ある御仁。名刺交換すると東京のPTA関係者。何故か映画撮影にも深く関わっておられる。映画業界の底知れぬ深さを垣間見たきがする。映画(館)マニアの私も興奮気味に談笑に加わる。

 驚愕の情報がプロデューサー氏から発せられた。現在(2015年1月末)実現するかは不明だが超有名人気俳優&女優を起用したある映画プロジェクトが水面下で極秘進行中という。舞台は北九州小倉。とてもここでは明かせぬ、度胆を抜かれた。絶対に実現していただきたい。

 プロデューサー氏から業界の裏話を色々たっぷりと惜しげもなくお聞かせいただく。映画ファンにとっては極上の話ばかり。ついつい酒が進み過ぎ、気づけば夜中2時。

 北九州は映画の都である。小倉だけでなく若松はロケーションが最高だし、黒崎もディープ。門司港も健さん映画の舞台に。枝光の坂道も折尾の堀川沿いも風情満点である。

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傑作ドラマ『MOZU』ロケ地、爆破された小倉井筒屋前。
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2015年03月29日

第1181夜:ラーメンの作り方教えます【八幡(北九州)】

 <らーめん力(りき)>。北九州のラーメン好きなら知らぬもの無き名店である。私も活動している秘密麺結社「一日一麺同盟」(FB)でもかなりの頻度でアップされていた。酔っ払った時にフラリ足を向けてしまう小倉の<力(ちから)ラーメン>と混同してややこしいが。

 北九州では石田●龍グループや小倉●門グループなど、弟子への暖簾分スタイルが独特の派閥を構成しているとお聞きした。政治の派閥よりも遥かに平和で頼もしい。

 私の昼は普段から95%以上麺類である。毎月どころか毎週北九州に足を運んでいる私の選択は基本的に以下の3品。濃厚豚骨ラーメン(替玉)、肉ごぼう天うどん(大盛)、どきどきうどん(ほほ肉うどん・肉ダブル)の3品ローテーション。最近この不動の先発3本柱に食い込む勢いを魅せているのが、唐揚トッピング系ちゃんぽんである。

 北九州での移動手段は公共交通に限られているのだが、名店探訪には車が欠かせない。同麺軍のU野閣下やU島少尉らと誘い誘われつつ麺ドライブに出かけるのが一つの恒例に。

 小倉のホテルに引き籠ってPC猿打ちしていたある日の正午前。同麺軍U野閣下のお誘いで念願叶い北九州ラーメンの総本山かもしれぬ八幡地区の幹線沿いにある<らーめん力>へ。

 外観も旨さを保証するビジュアルである。ドアを開ける。店内も余分な何かはなく、ひたすら旨いラーメンを提供するためのシンプルでシブい雰囲気を溢れている。満席かと思いきや、カウンターが何とか2席空いていた。U野閣下は超常連らしく、忙しそうなマスターら談笑。

 店内の8割以上が注文していると思しき「チャーシューらーめん」を選択。程なく眼前に広がったビジュアルに圧倒される。チャーシューが凄まじい量。いくら食べても減らぬ感覚。うぉおと心で叫ぶつつ箸が止まらない。替玉と辛子高菜を間髪入れず追加。スパイスは胡椒よりもかなり辛めな一味唐辛子でないとこの濃厚パワーに対応できない。

 最後はかなり手強かったが、3日すぎると気もそぞろ。完食直後、次回は普通にしようと誓っても、おそらくコスパ抜群のチャーシュー麺を選択するだろう。

 至福の食べ疲れに浸りつつ店内を見渡す。スペシャルラーメン【麺2玉】も魅力的だが、麺が伸びるかもしれぬので替玉が正解だろう。そんな中、究極のメニューが貼りだされていた。

「らーめん店を開業されたい方 らーめん作り教えます」。

 U野閣下の話では、この店で修業した麵士たちはFCでも暖簾分けでもなく、純粋にその伝統を受け継いで開業する。若松<エルボー>や黒崎<しぶき>といった有名店がそれにあたるらしい。私は<エルボー>は実食済。確かに似ている味やボリュームだった。それにしても気前よく暖簾分けしているが、大丈夫なのだろうか。

 濃厚豚骨ラーメン店を開業されたい方、いますぐ<らーめん力>の門をノックすべし。修業を重ね、神戸(三宮以西)で力の血を受け継いだ店を開業して頂きたい。または田辺か八尾で。

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鉢一面をさらに凌駕するチャーシューメン。濃厚の極。

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ぜひ、教えてくださいませ。
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2015年03月25日

第1180夜:西洋医学と東洋医学【黒崎(北九州)】

 「体調が悪ければ悪いほどうまい」。『アメト●―ク!』で放たれた博多H丸氏の名言中の名言である。激しく首肯した北九州市民も数多いと推測される。このなぞなぞの如き逸品は何か。小倉名物「どぎどぎうどん」(ほほ肉うどん)である。

 パンチU野氏に連れられ小倉南区の某店で初めて啜った際、衝撃が走った。限りなく黒に近い褐色の出汁に柔らかさと歯ごたえが同居した独特の風味を放つ牛のほほ肉と刻みネギがたっぷり。その上に、卓上に置かれたすりおろし土生姜と粗挽唐辛子を好きなだけトッピング。

 入れるほど味に辛みと刺激が増し、汗が頭皮から噴き出る。これを啜れば医者いらず。二日酔いどころか軽い風邪なら吹き飛ばしてしまう。生姜の薬効成分は広く知られている。風邪気味の時は首にネギを巻くと昔から言われてきた(そんなヤツ見たことありませんが)し、唐辛子の発汗効果は言わずもがな。まさに東洋医学の粋を結集したうどんと言える。

 インフルエンザが日本中を席巻しているある冬の遅い午後。小倉駅でU野氏と合流し、枝光地区の<かず>へ。「肉肉うどん」(どぎどぎうどん)にすりおろし土生姜と粗挽唐辛子たっぷりぶち込み、汗を滴らせつつ噎せつつも、一気呵成の熊啜。風邪の気配も邪気も吹き飛ばす。

 オトコ芸者として飛び回わる私は風邪、それもインフルエンザに罹患すると大迷惑を多方面にかけてしまう。飛行機や新幹線の密室でたまにマスクもせず咳き込んでいる御仁は最悪だ。

 予防が肝心だが、蔓延時期はこの数年出張続き。特に平日はほぼ不在。予防接種を受けるタイミングが合わない。一方、出張中の夜は超多忙だが日中は超弩級にヒマな時がある(多い)。

 どぎどぎうどんを啜った後、フロントに美女(しかも大勢)しかいない黒崎の定宿にチェックイン。夜のミッションまで2時間の余裕が生まれた。荷を解いてフロントに出向き、美女に最寄りの内科を訪ねる。歩いて3分もかからない医院を紹介して下さった。診療時間ギリギリという17時頃、ドアを開ける。客(患者)は誰も居ない。

 受付で名乗るや否や間髪入れず体温測定、問診シート記入、先生の診察、予防接種、会計まで5分弱。缶詰もびっくりのベルトコンベアである。

 予防接種という西洋医学前の体温測定で少し驚いた。36度5分もあった。普段は35度5分程度なので、1度も高い。明らかに唐辛子&生姜というどぎどぎうどんがもたらした東洋医学的効用。予防接種という西洋医学とのコラボは効き目が倍加しそうだ。

 これで予防は万全。安堵の薄笑いを浮かべていると、先生と看護師さん両方から「抗体ができるまで2週間かかるから、それまで気をつけるように」と注意される。全然知らなかった。しかも八王子のK田氏曰く、接種しても罹るヤツは罹るらしい。アフターケアが欠かせない。

 夜の商店街会合を終えて酒宴へ。「酒は百薬の長」。懸命の体内アルコール消毒でウィルスを滅失させる。これで万全である。

 2年前の三陸宮古でも今回北九州黒崎でも同様だったが、町医者に出向いて予防接種をする際、先生から必ず聞かれる。「なんで神戸の人がウチに来るの?なんで?」。……。さあ、なんででしょうかね。

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北九州枝光<かず>さんのどぎどぎうどん。すりおろし土生姜が東洋医学的効能ありそう。

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北九州黒崎駅前のお医者さんでインフルエンザ予防接種。西洋医学的効能がありそうだが、こんなに高いとは。
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2015年03月24日

第1179夜:魅惑のコラボ【若松 (北九州)】

 「若松商店街は、岩手県宮古市を引き続き応援します」。北九州・若松商店街連合会にて2014年12月中下旬に開催された歳末謝恩セールのチラシのキャッチコピーである。

 若松商店街の若大将・八百金ウシジマくんが研修で大津波の年に宮古に訪れて以来、様々な交流が図られてきた。北九州市とすれば製鉄所つながりで釜石市を支援しているが、商店街ベースでは宮古とのつながりがどっぷりと深い。

 歳末謝恩セールでは、一等賞が宮古産荒巻鮭、二等賞が宮古海の幸詰合せ。これらを宮古の商店街から仕入れて下さっている。定期的に若松商業高校と宮古商業高校の交流コラボも開催されており、商店街の枠を超えた広がりを魅せている。

 歳末セールの売出しチラシをこのバカブログのために改めてじっくり読み込む。北九州屈指の大型店・サン●ブ商品券を三等賞に据えるあたりは禁断のコラボといえないこともない。

 期間中、一日限定で「高校生販売甲子園」も開催。市内の高校が開発したPB商品を商店街で販売している。販売甲子園出場校は若松商業高校「河童弁当」「河童せんべい」、折尾愛真高校「おりをろまん」、折尾高校「おりこうカレー」。私はこの甲子園に足を運んだことはないが、上記4品すべて試食済。高校生と侮れぬ高品質と工夫が随所に凝らされている。

 普段なら見逃すところだが、チラシの一番下の帯に「渡るとき 助けてあげよう お年寄り」「無理しない 用心深さも 年の功」。警察関係とのコラボ(お付きあい)で盛り込んだと推測されるが、数ある標語の中から上記の3つを選択するあたり、客層の高齢化が読み取れて思わず苦笑してしまう。

 毎月どころか毎週のように北九州に通うようになり、若松の魅力は産官学問わずどんなジャンルでも見事なコラボを展開する懐の広さと深さにあるのではなかろうか。

 ある冬の夜。会合終わりの懇親会で、八百金が我が故郷・神戸新長田の地ソース「ばらソース」を店に持ち込んだ。私はお好み焼やそば焼も大好物だが、ばらソース以外は食べた気がしない。物心ついた時からこの味に慣れ親しんでいる。ゆえに、新長田以外でソースを使った`こなモン´を口にする機会はめったにない。ばらソースを持ち歩くのはヤリすぎだろう。

 まずはカツに垂らして口に運ぶ。私にとっては定番の味覚だが、若松人たちには新鮮な感覚のようである。カツもウマいが、やはりこなモンとの相性には敵わない。焼そば(長田では`そば焼´)を作ってもらい、ばらを垂らす。……。旨さが確変する。新長田の味を北九州若松で楽しむ摩訶不思議。これも禁断のコラボといえる。

 余談だが、我が家は5種類のソースをストックしている。ばら4本(お好み焼用辛口・定番の甘口・中濃・ウスター)、ブラザー1本(どろから)。この5本を駆使すれば、プロの味になる。ぜひお試しあれ。新長田の六間道商店街2丁目までお越しあれ。

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宮古とのコラボ。

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神戸新長田の地ソース「ばらソース」との邂逅。
posted by machi at 07:26| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする