初めて触れた三国志モノがこの作品だったので、オトナになって北方版『三国志(全13巻)』(北方謙三 ハルキ文庫)を読了するまで、三国志は本宮版がベースと思い込んでいた。
梅雨が明けた凄まじい酷暑が制圧している北九州の午前11時。一日一麺同盟U野閣下と北九州麺ドライブに。私は前日に濃厚豚骨を熊啜していたので、あっさりを欲していた。関西では見かけないごぼう天うどんにすっかり虜になっている私は、うどん系を希望。閣下が車を滑らせたのが、戸畑地区のイチゲン辿り着き不可能な<米>さんへ。ごぼう天が名物らしい。
11時半ごろに飛び込んだのだが、すでに8割埋まっている。タイミングよく席を確保できたが、あっという間に満席に。クールビズサラリーマンか作業着姿かパンチパーマ(U野閣下)のオトコ率100%。地元の作業着姿が愛する店に外れなし。期待に胸が高まる。
初めて飛び込む地元の人気店では独特のルールや量で戸惑うことがある。豊富なトッピングメニューに目移りしていると、閣下は肉ごぼう天うどんを指名。普通とミニがある。あれ、大盛はないのか。いつも大盛系の閣下は普通を選択。私も追従したが、ご飯モノの追加を問うた。閣下は少し目を剥き「ブツを見てから、食べ始めてから再検討すべし」と私に助言。
程なくして、ブツが降臨。…。圧倒的な肉の山である。ごぼう天が見えぬほど。唐辛子をたっぷりぶっかけ、まずは出汁を一啜り。……。肉の甘みと天ぷらの衣のコクが溶け込み、上品と野生が同居した絶品が口の中で泳ぐ。うどんも剛と柔が同居した官能の歯ざわりだ。
甘辛く煮付けられた肉の野生に体内血中が沸騰する。肉の山を崩していくと、ごぼう天が見えてきた。齧りつこうと箸でつまんだ瞬間、その重さに沈みそうになる。極太である。天ぷらにありがちな十二単衣ではなく、みっちり詰まったボディに薄襦袢を1枚纏っている風情だ。
齧りつく。……。私は、大地をかみしめた。太目のごぼうを縦割せず、そのままぶつ切りにしたようなタフさ。土の滋養が口に広がる。歯ごたえも抜群だが柔らかさもある。丁寧な下ごしらえが忍ばれる。オトコなら誰もが憧れる極太が1本ではなく、何本もあるのだ。
肉、うどん、ごぼう天、出汁……。永遠に溺れていたいカルマの輪廻に陶酔する。秩序と混沌、自由と束縛、豪胆にして野生。一杯の丼に、大地と太陽が詰まっている。
無我夢中で熊啜した。今回は肉ごぼう天うどんだが、ごぼう天一発勝負なら大地の量がさらに増えるという。帰りの車窓で、60万ボルトスタンガン販売店の看板を眺めながら、次回はごぼう天一発勝負を心に誓う。大地に生まれ、大地を喰らい、大地に還る。生物の宿命である。

肉の下にはごぼう天がタップシ。