2014年08月31日

第1043夜:大地を喰らう【戸畑(北九州)】

 『天地を喰らう』。巨匠・本宮ひ●志先生による三国志伝奇である。私がガキの頃にジャンプで連載されていたが、少年誌とは思えぬほど描写は苛烈かつ妖艶。最近の少年誌事情は分からぬが、今でもエログロシーン満載なのだろうか。いまだに印象が残っている作品である。

 初めて触れた三国志モノがこの作品だったので、オトナになって北方版『三国志(全13巻)』(北方謙三 ハルキ文庫)を読了するまで、三国志は本宮版がベースと思い込んでいた。

 梅雨が明けた凄まじい酷暑が制圧している北九州の午前11時。一日一麺同盟U野閣下と北九州麺ドライブに。私は前日に濃厚豚骨を熊啜していたので、あっさりを欲していた。関西では見かけないごぼう天うどんにすっかり虜になっている私は、うどん系を希望。閣下が車を滑らせたのが、戸畑地区のイチゲン辿り着き不可能な<米>さんへ。ごぼう天が名物らしい。

 11時半ごろに飛び込んだのだが、すでに8割埋まっている。タイミングよく席を確保できたが、あっという間に満席に。クールビズサラリーマンか作業着姿かパンチパーマ(U野閣下)のオトコ率100%。地元の作業着姿が愛する店に外れなし。期待に胸が高まる。

 初めて飛び込む地元の人気店では独特のルールや量で戸惑うことがある。豊富なトッピングメニューに目移りしていると、閣下は肉ごぼう天うどんを指名。普通とミニがある。あれ、大盛はないのか。いつも大盛系の閣下は普通を選択。私も追従したが、ご飯モノの追加を問うた。閣下は少し目を剥き「ブツを見てから、食べ始めてから再検討すべし」と私に助言。

 程なくして、ブツが降臨。…。圧倒的な肉の山である。ごぼう天が見えぬほど。唐辛子をたっぷりぶっかけ、まずは出汁を一啜り。……。肉の甘みと天ぷらの衣のコクが溶け込み、上品と野生が同居した絶品が口の中で泳ぐ。うどんも剛と柔が同居した官能の歯ざわりだ。

 甘辛く煮付けられた肉の野生に体内血中が沸騰する。肉の山を崩していくと、ごぼう天が見えてきた。齧りつこうと箸でつまんだ瞬間、その重さに沈みそうになる。極太である。天ぷらにありがちな十二単衣ではなく、みっちり詰まったボディに薄襦袢を1枚纏っている風情だ。

 齧りつく。……。私は、大地をかみしめた。太目のごぼうを縦割せず、そのままぶつ切りにしたようなタフさ。土の滋養が口に広がる。歯ごたえも抜群だが柔らかさもある。丁寧な下ごしらえが忍ばれる。オトコなら誰もが憧れる極太が1本ではなく、何本もあるのだ。

 肉、うどん、ごぼう天、出汁……。永遠に溺れていたいカルマの輪廻に陶酔する。秩序と混沌、自由と束縛、豪胆にして野生。一杯の丼に、大地と太陽が詰まっている。

 無我夢中で熊啜した。今回は肉ごぼう天うどんだが、ごぼう天一発勝負なら大地の量がさらに増えるという。帰りの車窓で、60万ボルトスタンガン販売店の看板を眺めながら、次回はごぼう天一発勝負を心に誓う。大地に生まれ、大地を喰らい、大地に還る。生物の宿命である。

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肉の下にはごぼう天がタップシ。
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2014年08月30日

第1042夜:ハイボールは濃い目で【折尾(北九州)】

 ハイボール。ウィスキーを炭酸で割った、私が生まれる前からその存在は知れ渡っていたが、この10年ほどで凄まじい勢いで再ブレイクしたカクテル(らしい)である。

 日本のウィスキー業界を牛耳るアノ会社のCMに私も含めた日本中のサラリーマンは悩殺KO。いまやハイボールを置いていない店を探す方が困難になった。

 私は酒を呑み始めて30年弱。25年前から自宅でウィスキーの炭酸水割(いわゆるハイボール)を嗜んでいた。社会に出てからはバーで注文することはあっても、居酒屋でハイボールをあまり見かけず、生ビールの後はレモンチューハイを鯨飲していた。

 いつの間にか、すっかりハイボールがどの店も常備。糖類的な甘さがないのでどんな料理にも相性がよい。鉄板こなもん、焼肉、餃子、焼鳥、唐揚…。中でもビールに合う肴に実力を発揮する。コンビニでも缶ハイボールが定番常備され、濃い目の缶も売られている。

 梅雨が明けて蒸し暑い北九州折尾の夜。会合を終え、商店街の旦那衆と餃子が名物の居酒屋へ飛び込んだ。生ビールで乾杯。熱々餃子に生ビールは無敵である。数杯ノドに放り込んだ後、ハイボールに移行しようとした。

 私の前に座る商工会議所のM氏は一足早くハイボールを嗜んでいたが、どう見てもジョッキの中は水にしか見えない。氷が解けたにしても、ありえない透明度である。M氏曰く、思いっきり薄かったそうだ。

 私は注文係を担うM氏の部下(O中氏)に「濃い目で」と補足。厨房にも伝わったようで、しっかりと色のついたジョッキが運ばれてきた。口を付ける。……。これである。ウィスキーの豊潤な香りが鼻孔に飛び込みつつ、舌の上では炭酸がタップダンスを踊っている。

 料理を口に運ぶ。旨さが倍加する。ただし濃い目は度数も強いので、カパカパやりすぎると記憶がぶっ飛ぶので注意が必要だ。

 三陸宮古の私の定宿ホテルから徒歩30秒にある行きつけのスナックでは「アヅマハイボール」がある。氷をいれたグラスにウィスキー7、炭酸水3といった超濃い目スペシャル。いつも一軒目で痛飲した後にアヅマハイボールを鯨飲するので、記憶は毎回三陸沖の彼方へ。

 前職の神戸新長田時代。ハイボール再ブレイクを仕掛けたサン●リーさんは、様々なご当地グルメとハイボールのコラボを展開していた。新長田は鉄板こなもんの街として様々な事業を展開しており、サ●トリーさんも協力して下さることに。

 その一環の一つとして、「ハイボール おすすめですよ」という●雪氏ポスターのパロディを製作して下さった。モデルは新長田時代の盟友・冨士屋呉服店M井社長&近畿タコシーM崎社長、そして私。マヌケ極まりない3バカトリオのポスター、今でも新長田のどこかで張られているのだろうか。 

ハイボールポスター.jpg
今でもどこかで貼られていたら嬉し恥ずかしい、ある意味でレアなポスター。
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2014年08月29日

第1041夜:牧さんの魔法のうどん【久山(福岡)】

 魔法のうどん。福岡北部のうどんチェーン界を2分する、福岡佐賀エリアを統べる西の雄<牧のうどん>を湛える愛称である。なぜ、魔法なのか。いくら食べても減らないからといわれている。ちなみに東の雄は北九州エリアが居城の<資さん>とされている。最近、このうどん境界協定が崩れ、資さんが西へ勢力を拡大しつつあるという。

 私は小倉魚町の商店街で<資さん>の魅力にトップリと溺れているが、西軍<牧>は未啜。我が愛読コミック『めしばな刑事タチバナ』でもこの両雄が紹介されており、以前から牧さんの家の暖簾を潜りたい欲求を抑えられずにいた。

 前夜に夜中3時過ぎまで鯨飲し、毛細血管までアルコールが沈殿し末梢神経がいまだ目覚めぬ、梅雨が明けた酷暑の福岡県飯塚市の昼。二日酔いの日は濃厚ギトギト豚骨も荒治療として魅力的だが、うどんの汁に溺れたい午後もある。福岡県のうどんレベルは凄まじく、我が根城の関西ですら個店力はともかく全体合戦すれば敗走せざるおえないほどである。

 鰍ワちづくり飯塚・K保氏の運転で、最初は氏がオススメする飯塚郊外のうどん屋へ。思いっきり暖簾が出ているのに、なぜか定休日という洗礼。コンマ3秒で気を取り直し、前から挑みたかった魔法のうどんを確かめたく、K保氏に<牧のうどん>をリクエスト。飯塚から最も近いがそれでも30qは離れている久山店に飛び込んだ。

 広大な駐車場と海の家のごとき座敷が敷き詰められた店内。大人気である。座敷に着座すると間髪入れずオネエさんがオーダー伺い。初めての店でシステムが分からず、泡を食っている私の視界に飛び込んだメニューが「人気1 肉+ごぼう」。迷わずナンバーワンを指名した。

 すると今度は「ヤワめ?普通?硬め?」と問われた。意味が分からずコンマ2秒ほどフリーズした後、「ふつぅ…」と上ずった声が私の口から漏れた。注文が受け入れられたようで、私は心の底から安堵する。ようやく店内を見渡す余裕が生まれた。

 卓上にはネギが山盛り備え付けられている。ネギフェチの私にはそれだけで心躍る。メニューは豊富。思わず「かしわめし」を追加注文する。

 ブツが運ばれてきた。たっぷりの肉とごぼう天ぷら。そして、なぜかヤカンが置かれた。唐辛子をぶっかけ、啜る。……。私は目を見開き、驚きに声を漏らした。何という柔らかさだ。コシという概念は皆無で、フワフワ。歯など全くいらない。これで普通なのだから、「軟めん」ならいったいどのような歯ごたえ、というか歯茎ごたえになるのだろうか。

 出汁も絶品。ネギもたっぷり入れ放題。夢中で啜りながらK保氏と談笑。ふと丼に目をやると、うどんが増えているような錯覚に。これは、白昼夢か。そのかわり汁が無くなっている。ふわふわうどんが出汁を吸ってしまうのだろう。そのための出汁入りヤカンだったのだ。

 ヤカンがアラジンの魔法のランプに見えてきた。登仙にして天女。柔と軟。夢と幻。私は、牧さんの魔法にかけられたまま、一心不乱に熊啜した。

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魔法のうどん。ネギ入れ放題とヤカンに狂喜。
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2014年08月28日

第1040夜:商人のココロ【飯塚(福岡)】

 「いいまち商人塾」。福岡県飯塚市で全8回開講される商人塾である。M好塾頭、K保コーディネーターの奮闘で様々なカリキュラムが実現。熱心な商業者が多数入塾した。

 2014年7月22日。記念すべき第1回講座が開講。基調講演は日本中の商店街活性化を牽引・支援する全国商店街支援センター社長様。超ご多忙の最中、遠路飯塚商人のために駆け付けて下さった。1時間に及ぶ講義を私も拝聴する機会を賜った。

 目からウロコの活性化のヒント、意気込み、発想の転換……。私も会場も惹きつけられっぱなし。あっという間の1時間。質疑応答も活発で、懇親会も大盛り上がり。一部は夜中3時まで鯨飲しつづけた(私もですが)。

 その翌日。ひがしまち商店街に8月1日にオープンする<まちなかデイ(サービス・スペース) こころ>さんのケアマネージャー向け内覧会を見学させていただいた。

 飯塚では2012年度から商店街における創業・起業者育成事業が展開されている。厳しい昨今、廃業もあるが起業も相次いでおり成果がにじみ出ている。今回の<こころ>さんも代表のN尾女史が奮闘し、ついに独立店舗を構える運びとなった。

 私自身はデイサービスを含む介護福祉分野は全くの門外漢。他所との比較はとてもできないが、開放的で明るい室内とN尾女史をはじめとするスタッフさんの元気と笑顔に、その場に居るだけで元気と癒しがプレゼントされる。前夜3時まで鯨飲し汚れきった私のカラダとココロでさえ、浄化される気がする。

 パンフレットには4つのコンセプトがあった。「足湯」「アロマ」「ヨガ」「街中」である。

 室内中央にトレビの泉のごとく存在感を放つ足湯が魅力的である。二日酔いの解消法の一つに入浴が挙げられるが、足湯どころか全身浸かりたくなってしまう。私はヨガもアロマも未経験だが、自然治癒力を高めるだけでなく精神の安定や気持ちのゆとりと快活につながるという。日々不安定な精神状態の私には酒が薬だが、ヨガやアロマも試してみたいと痛感する。

 ヨゴレまちづくり屋の私にとって最も嬉しいコンセプトである『街中』。パンフレットに「街中である理由」が記載されている(以下抜粋)

●「特別なところへ出向いた」意識により、社会性と意欲の向上が期待できる

●店主とのやり取り、行事参加や自分自身で商品を選び、楽しみながら歩くことで生活動作、機能訓練、認知症予防、地域交流になる。アーケード内なので雨でも活動可能。

●高齢の方が数多く活躍されている(商店主のことかな?)街中の行事を目にすることで「いくつになってもできることがある」というチャレンジ精神を持つことが期待される。

 すでに実績のある経営者が対象でもある商人塾と、夢と希望に満ちた創業セミナー。創業ホヤホヤの商店主と地域商店街をつなぐのは「こころ」の豊かさである。

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元気と笑顔が商店街にやってきました。
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2014年08月26日

第1039夜:新神戸駅「港町神戸ミンチカツ弁当」「神戸ワインステーキ弁当」【Ekiben】

 「港町神戸ミンチカツ弁当」。2013年秋に新発売されたと思しき、新神戸駅で捕獲した淡路屋様が調整元の駅弁である。淡路屋様は豊富なラインナップ、続々と繰り出す新戦力を投入するので目が離せないが、特に最近、私的にはグレードも高く高打率をキープしているようだ。

 私は新大阪駅でもよく駅弁を捕獲する。大阪府内に著名な調整元がないためか、淡路屋様独占状態の気配が濃厚。京都駅でも淡路屋様の勢力が拡大しているように感じられる。

 秋。遅めの昼食にガツンと腹にたまる駅弁を入れたい私の眼に飛び込んできたのが、「ミンチカツ」という存在感抜群のカタカナ5文字。ミンチカツは下町の御馳走というイメージ強しだが、その名詞の前に「神戸」と付くだけでブランドイメージが向上。「港町」がさらなる追い打ちをかける。下町の御馳走が老舗の洋食店の雰囲気に。値段も10倍の雰囲気だ。

 パッケージが本当に洒落ている。エアメールのようで、そのまま絵ハガキに使えそうだ。封を解く。……。巨大な楕円形の茶褐色が圧倒的な迫力である。一般のとんかつソースではなく、ケチャップベースの深紅ソースな点も洋食風情が横溢する。錦糸卵がチラチラとセクシーだ。

 齧りつく。……。冷めてもしっかりと旨い駅弁ならではの真骨頂。ケチャップソースが嬉しく、じんわり控えめに旨いきのこピラフと渾然。オムライスを頬張っている気分に浸ることもできる。じゃがいも、インゲンも見事な脇役ぶりだ。

 以前、新大阪駅で「生姜焼き重とメンチカツ」を捕獲したことがある。メンチカツは小さく、タイトルロールの割には地味な引き立て役でしかなかったが、今回は堂々の主役。余談だが、「メンチカツ」と「ミンチカツ」の違いが分からない。メンチの方が下町風に感じられる気がしないでもないが、単なる方言なのだろうか。どちらも旨いことに変わりはないけれど。

 その3週間後。一気に冬の気配が到来した昼。同じく新神戸駅で捕獲した淡路屋様の新商品「神戸ワインステーキ弁当」。淡路屋様のステーキ弁当は定番も加熱式も両方実食済だが、今回はワインで仕込んでいる自慢の作品と推測される。さっそく捕獲し、新幹線に乗り込んだ。

 神戸ワインは、おそらくご当地ワインの中でもかなりのハシリ。市(の外郭)は神戸ワインの在庫を市民人口の2倍以上の本数を熟成させている(余らせている)というウワサだが、不良在庫にならぬことを一人の神戸市民として祈るばかり。せめて駅弁で調味料としても活躍の場を広げ、1本でも在庫削減に繋がれば市民としてこれほど嬉しきことはないかもしれぬ。

 早速肉に齧りついた。……。タフな歯ごたえである。ルイベかと思うほどの冷却ぶりだ。私は味音痴なので、全くワインの味を分からなかった。自分の舌の頼りなさに絶望する。

 きのこピラフもじゃがいもなどのサイドもキンキン冷え冷え。直前まで冷蔵保存され、ホームは冷蔵庫と変わらぬ気温。慌てて食べずに新幹線車内でしばらく寝かせ、車内の暖房でじっくりじんわりほぐすべきだった。肉系駅弁、冷めても旨いが、温めるとより旨いものである。

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ミンチカツ(左)とワインステーキ。
posted by machi at 07:20| Comment(0) | 駅弁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする