50年前に5市対等合併し北九州市として生まれ変わったが、結婚当初から反りが合わず幾度となく離婚話が頻出し、今に至っても熟年離婚の危機が絶えないという政令市。日本一危険な夜の街には、日本中から警察が応援警邏している。
喧嘩と何とかは江戸の華、というがパンチパーマや競輪発祥の地・北九州においても同様。魂荒ぶる男たちにとって、祭りは日常だけでなくDNAに深く刻まれている。当然のごとく各区(合併前の市?)ごとに激しい祭が繰り広げられている。そんな祭を一堂に会すという危険と無謀と融和が同居した催しが「わっしょい百万夏まつり」。それをモチーフにした駅弁だ。
なぜ百万かというと、百万石という意味ではなく100万人都市と推測されるが、人口100万人を切ったそうであるから、もしかしたら100万石なのかもしれない。パッケージにはメインキャラクターの少年「ちゃちゃ坊」を筆頭にたぬきの「たんたん」、若者「どこどん」、妖精「おどもん」が踊っている。この祭を構成する5つの祭の簡略が記されている。
「若松五平太ばやし」は五平太という肥前の役人が燃える石を発見し、以来石炭のことを「五平太」と呼んでいた。石炭を運ぶ小さな船「川ひらた」の船頭衆が仕事の合間に船べりを叩き囃子ながら民謡を口ずさんだのが始まりらしい。
「黒嵩祇園山笠」は喧嘩山笠と言われる県の無形民俗文化財。図書館に設置されている立派さ。車輪を軸に引き回す華やかな人形飾山で、祭礼の幕開け行事のお汐井とりは笹山笠がでるらしい(さっぱり分からぬ)。
駅弁ブログなので他の3つは省略させていただくが、「大里照山笠」、「戸畑祇園大山笠」「小倉祇園太鼓」がある。個人的には「折尾神楽」も入れて頂きたい。
前置きが思わず長くなった。頻繁に北九州入りしている私の血も荒ぶってきたのだろうか。新幹線に乗り込み、これらのウンチクをたっぷりじっくり読みこみながら缶ビールをカシュっと開ける。フタを外すと、色とりどりの酒のサカナ系おかずがびっしりだ。
4つのおにぎり(のり巻、明太子ふりかけ、のりたま、かしわめし)が迫力満点である。すき焼煮がボリュームたっぷり。唐揚げも渋い仕事をこなしている。筍入りコロッケ、コーン、玉子焼、鰯のぬか炊き、しば漬、たたきごぼう、寒天、蒲鉾という北九州の名産らしきおかずが酒のピッチを進ませる。
私は5つの祭すべて観たこともないが、頭の中がわっしょいわっしょいと祭り太鼓が鳴り響き始めた。溜まったポイントで乗車した新幹線グリーン車は、私の一番山車である。
